103 / 106
それから。
同棲はじまるよ【2】
しおりを挟む
冷蔵庫及び、台所の棚にはない。
風呂場やトイレにもない。食材をこんなところへ置くとは思えないけれど、一応確認しておく。
消去法でいくと。
残りの部屋は、新居崎の執務室か寝室ということになる。
一度入ったことのある執務室から入るが、願いはかなわず、食材はないようだ。スーパーの袋にどさっと入っているはずなので、こんなに片付いた部屋にあれば、すぐわかるだろう。
むむ、と麻野は唸る。
ひとさまの寝室に、無断で入るのは気が引ける。新居崎はモラルを重んじるタイプだ。
悩んだ末に、本人に聞けばいいじゃん、という結論に達して。
麻野は、新居崎へメール連絡を入れた。
すぐに既読がついて、返事がくる。
――『すまない。食材は、私の寝室に置いてある。取ってきてくれ』
あっさりすぎるほど、入室の許可がおりた。
そしてやはり、寝室にあるという。
確かに冷蔵が必要なものは買っていないが、なぜに寝室に置くんだ――という疑問は、新居崎の寝室へ入って理解した。
「さむっ!」
部屋中、冷房が効いているため、暑さは感じない。そんな麻野が、寒いと感じるほど、寝室の温度は低かった。
なぜだ、と疑問に思いつつ寝室に入る。
そこは、執務室にある書物とはまた違った本で、埋め尽くされていた。基本的に小説ばかりで、純文学から娯楽小説、エッセイまで幅広い。
そういえば、音読が趣味とか言ってたっけ、と本棚へさっと視線をやったとき、スーパーの袋を見つけた。
無事に食材が手元に戻ってきて、ほっとする。
「さて、と。夕食を……あり?」
本棚の上部分。一列の追加本棚が設置されており、それを覆う形で土台が設えてある。
飾り棚として使っているらしく、汚いゴミ……ではなく、おそらく新居崎にとっては価値のあるだろうゴミ、というか、まぎれもないゴミ、が、列をなして置いてあった。お菓子の包み紙であったり、雑誌の付録を破った紙だったり、コンビニでつけてくれるスプーンだったり。
風呂場やトイレにもない。食材をこんなところへ置くとは思えないけれど、一応確認しておく。
消去法でいくと。
残りの部屋は、新居崎の執務室か寝室ということになる。
一度入ったことのある執務室から入るが、願いはかなわず、食材はないようだ。スーパーの袋にどさっと入っているはずなので、こんなに片付いた部屋にあれば、すぐわかるだろう。
むむ、と麻野は唸る。
ひとさまの寝室に、無断で入るのは気が引ける。新居崎はモラルを重んじるタイプだ。
悩んだ末に、本人に聞けばいいじゃん、という結論に達して。
麻野は、新居崎へメール連絡を入れた。
すぐに既読がついて、返事がくる。
――『すまない。食材は、私の寝室に置いてある。取ってきてくれ』
あっさりすぎるほど、入室の許可がおりた。
そしてやはり、寝室にあるという。
確かに冷蔵が必要なものは買っていないが、なぜに寝室に置くんだ――という疑問は、新居崎の寝室へ入って理解した。
「さむっ!」
部屋中、冷房が効いているため、暑さは感じない。そんな麻野が、寒いと感じるほど、寝室の温度は低かった。
なぜだ、と疑問に思いつつ寝室に入る。
そこは、執務室にある書物とはまた違った本で、埋め尽くされていた。基本的に小説ばかりで、純文学から娯楽小説、エッセイまで幅広い。
そういえば、音読が趣味とか言ってたっけ、と本棚へさっと視線をやったとき、スーパーの袋を見つけた。
無事に食材が手元に戻ってきて、ほっとする。
「さて、と。夕食を……あり?」
本棚の上部分。一列の追加本棚が設置されており、それを覆う形で土台が設えてある。
飾り棚として使っているらしく、汚いゴミ……ではなく、おそらく新居崎にとっては価値のあるだろうゴミ、というか、まぎれもないゴミ、が、列をなして置いてあった。お菓子の包み紙であったり、雑誌の付録を破った紙だったり、コンビニでつけてくれるスプーンだったり。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
【完結済】病弱な姉に婚約者を寝取られたので、我慢するのをやめる事にしました。
夜乃トバリ
恋愛
シシュリカ・レーンには姉がいる。儚げで美しい姉――病弱で、家族に愛される姉、使用人に慕われる聖女のような姉がいる――。
優しい優しいエウリカは、私が家族に可愛がられそうになるとすぐに体調を崩す。
今までは、気のせいだと思っていた。あんな場面を見るまでは……。
※他の作品と書き方が違います※
『メリヌの結末』と言う、おまけの話(補足)を追加しました。この後、当日中に『レウリオ』を投稿予定です。一時的に完結から外れますが、本日中に完結設定に戻します。
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
【完結】待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる