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それから。

同棲はじまるよ【2】

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 冷蔵庫及び、台所の棚にはない。
 風呂場やトイレにもない。食材をこんなところへ置くとは思えないけれど、一応確認しておく。
 消去法でいくと。
 残りの部屋は、新居崎の執務室か寝室ということになる。
 一度入ったことのある執務室から入るが、願いはかなわず、食材はないようだ。スーパーの袋にどさっと入っているはずなので、こんなに片付いた部屋にあれば、すぐわかるだろう。
 むむ、と麻野は唸る。
 ひとさまの寝室に、無断で入るのは気が引ける。新居崎はモラルを重んじるタイプだ。
 悩んだ末に、本人に聞けばいいじゃん、という結論に達して。
 麻野は、新居崎へメール連絡を入れた。
 すぐに既読がついて、返事がくる。
――『すまない。食材は、私の寝室に置いてある。取ってきてくれ』
 あっさりすぎるほど、入室の許可がおりた。
 そしてやはり、寝室にあるという。
 確かに冷蔵が必要なものは買っていないが、なぜに寝室に置くんだ――という疑問は、新居崎の寝室へ入って理解した。
「さむっ!」
 部屋中、冷房が効いているため、暑さは感じない。そんな麻野が、寒いと感じるほど、寝室の温度は低かった。
 なぜだ、と疑問に思いつつ寝室に入る。
 そこは、執務室にある書物とはまた違った本で、埋め尽くされていた。基本的に小説ばかりで、純文学から娯楽小説、エッセイまで幅広い。
 そういえば、音読が趣味とか言ってたっけ、と本棚へさっと視線をやったとき、スーパーの袋を見つけた。
 無事に食材が手元に戻ってきて、ほっとする。
「さて、と。夕食を……あり?」
 本棚の上部分。一列の追加本棚が設置されており、それを覆う形で土台が設えてある。
 飾り棚として使っているらしく、汚いゴミ……ではなく、おそらく新居崎にとっては価値のあるだろうゴミ、というか、まぎれもないゴミ、が、列をなして置いてあった。お菓子の包み紙であったり、雑誌の付録を破った紙だったり、コンビニでつけてくれるスプーンだったり。
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