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第三章
二十一、
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とっさに半身を起こすが、新居崎のほうは、ベッドに戻った。麻野を避けるように、背中を向けて寝ころぶ。
「ごめんなさい」
背中に向かって、謝った。
新居崎の返事はない。
それはそうだ、麻野は新居崎にこれ以上ないほど迷惑をかけたのだ。この三日間、ずっと。特に今日はひどい。新居崎が車をレンタルしてまで連れてきてくれた大江山でいきなり姿を消して、新居崎に探させた。
何より、新幹線の時間に間に合わず、予定外にもう一泊することになってしまった。彼の心身に大きな負担をかけたのだ。
「……ごめんなさい、先生」
もう一度呟いてから、もぞもぞと布団に潜り込んだ。
酷く疲れているのに、眠って忘れたいのに、眠れそうにない。こんなふうに心が痛くなるのは、久しぶりだった。いつだって、前向きに生きて行こうと思ってきたし、嫌なことがあっても考え方を変えれば、別の視点から見ることができた。
失敗しても、今後どうすればいいのかと考えることで、前を向けた。
なのに。今は、ただ、自分が嫌だった。
「あ――――っ、もういい!」
びくっ、と麻野は新居崎を振り返った。
ベッドから半身を起こした新居崎が、眉間に深い皴を寄せた状態で座っていた。さっきまで寝ていたと思ったのに、叫びながら体を起こすなんて、余程疲れているに違いない。
「うだうだ考えるのは、面倒くさい。麻野、起きているか。いや、寝てても起きろ」
「お、起きてますよ!」
「なんとかしろ、眠れない」
「な、なんとかって。あ、お水持ってきます!」
ベッドから起き上がって、サービスでついている水のペットボトルを冷蔵庫から取り出す。それを手渡すと、新居崎は麻野を振り返りもせずに受け取り、一口飲んだ。
「お茶を入れましょうか? あいにく、ほうじ茶しかないんですが。外に自販機があったかも。見てきます」
「そこまでしなくてもいい」
新居崎は、眉間の皴を揉みながら俯くと、深くため息をつく。
「頭のなかが、おかしいんだ。ぐるぐると同じことばかり考えて、言い訳をして、愚痴を言って、きみのせいにして、だがやはりきみは悪くないという結論に至り、また、言い訳をする。わかっているのに、それでは解決しないと。ずっと、私のなかが、もやもやしている」
「……もやもや?」
「そうだ。もやもやだ。なんだこの不愉快な気分は」
「それは、私が先生にご迷惑をおかけしたからですよ!」
「違う、そうじゃない。そこじゃない」
「ごめんなさい」
背中に向かって、謝った。
新居崎の返事はない。
それはそうだ、麻野は新居崎にこれ以上ないほど迷惑をかけたのだ。この三日間、ずっと。特に今日はひどい。新居崎が車をレンタルしてまで連れてきてくれた大江山でいきなり姿を消して、新居崎に探させた。
何より、新幹線の時間に間に合わず、予定外にもう一泊することになってしまった。彼の心身に大きな負担をかけたのだ。
「……ごめんなさい、先生」
もう一度呟いてから、もぞもぞと布団に潜り込んだ。
酷く疲れているのに、眠って忘れたいのに、眠れそうにない。こんなふうに心が痛くなるのは、久しぶりだった。いつだって、前向きに生きて行こうと思ってきたし、嫌なことがあっても考え方を変えれば、別の視点から見ることができた。
失敗しても、今後どうすればいいのかと考えることで、前を向けた。
なのに。今は、ただ、自分が嫌だった。
「あ――――っ、もういい!」
びくっ、と麻野は新居崎を振り返った。
ベッドから半身を起こした新居崎が、眉間に深い皴を寄せた状態で座っていた。さっきまで寝ていたと思ったのに、叫びながら体を起こすなんて、余程疲れているに違いない。
「うだうだ考えるのは、面倒くさい。麻野、起きているか。いや、寝てても起きろ」
「お、起きてますよ!」
「なんとかしろ、眠れない」
「な、なんとかって。あ、お水持ってきます!」
ベッドから起き上がって、サービスでついている水のペットボトルを冷蔵庫から取り出す。それを手渡すと、新居崎は麻野を振り返りもせずに受け取り、一口飲んだ。
「お茶を入れましょうか? あいにく、ほうじ茶しかないんですが。外に自販機があったかも。見てきます」
「そこまでしなくてもいい」
新居崎は、眉間の皴を揉みながら俯くと、深くため息をつく。
「頭のなかが、おかしいんだ。ぐるぐると同じことばかり考えて、言い訳をして、愚痴を言って、きみのせいにして、だがやはりきみは悪くないという結論に至り、また、言い訳をする。わかっているのに、それでは解決しないと。ずっと、私のなかが、もやもやしている」
「……もやもや?」
「そうだ。もやもやだ。なんだこの不愉快な気分は」
「それは、私が先生にご迷惑をおかけしたからですよ!」
「違う、そうじゃない。そこじゃない」
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