新人種の娘

如月あこ

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第一章 新たな世界へ

5、

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 にこやかな東堂の口から発せられた質問に、小毬は戸惑いながら俯いた。
 趣味の話などどうでもいい。もっと新人種について聞かせてほしい。教えてくれないのなら、今すぐ帰宅してこの本を読みたい。
 そんな小毬の心の叫びは相手には通じず、黙り込んだ小毬を見る東堂の目が、次第に吊り上っていくのに気づいた。
 また、相手を不愉快にさせてしまう。
(なにか、気の利いたこと言わなきゃ)
 そうは思っても、なかなか言葉が出てこない。趣味を正直に答えればよいのだろうが、あいにく小毬には趣味と呼べる娯楽がない。あえていうなら読書だが、つい先ほど本を読んでいて怒られたばかりだ。
「霧島、お前は」
「あ、あの」
 顔をあげて、じっと東堂の目を見返した。
「先生の趣味はなんですか?」
「俺?」
 東堂は軽く目を見張り、考えるように腕を組んだ。
「前に授業でもちらっと話したが、狩りが趣味かな」
「狩り? 猟師さんなんですか」
「ああ、資格も持ってるぞ」
 まさか、あの青年を撃ったのは東堂じゃないか、と思ったが「ここ半年ほどは狩りに出てないがな」という言葉を聞き、ほっと息をつく。
「でも、銃の手入れは欠かさないんだ。この近辺は田舎だし、猟師も多いだろう? 霧島の住んでる辺りは、もっと猟が盛んなんじゃないか」
「はい。猪の皮とか、庭で干してる家も多いです」
「だろうな。ああ、久しぶりに狩りがしたくなってきた」
 機嫌が戻ったらしい東堂の姿に、ほっと安堵の息をつく。
 話がまたもとに戻る前に、小毬は鞄を小脇に抱えて頭を下げた。
「そろそろ帰ります。失礼します」
「あ、おい。話はまだ終わってないぞ」
「施設で手伝いをする用事があるので」
 早口にそう告げ、小毬は不自然ではないよう心掛けながらも早足で図書室を出た。
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