とある伯爵令嬢と執事の恋物語。

如月あこ

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⑥情事◇後編

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 刺激が心地よい。
 エマはとろとろに愛液を溢れさせて、それをハインリヒがじゅるりと音をたててすすっていく。

 彼は、普段の紳士な姿が嘘のように、夢中でエマの秘所にむしゃぶりついている。
 ハインリヒはすっかり硬く膨らんだ淫芽をこりこりと指で弄りながら、エマの狭い隘路に舌を差し込んだ。

「ひぃっ!」

 本能が恐怖を覚えて、腰を引いてしまう。
 しかし、ハインリヒがガッシリと太ももを固定しており、エマは逃げようにも動くことが叶わなかった。

 エマはベッドに押しつけられたまま、股間に顔を埋めてくるハインリヒを見下ろす。
 彼は口淫をしながら花芽をこりこりと弄り続けていた。

「まっ、待って、変になっちゃう……っ!」
「ここ、ですか?」

 だから止めて、という意味で言ったのに、ハインリヒはより強く激しく、けれども優しく、陰核と蜜窟を責め立てた。

「ひっ、あっ、あぁ……っ!」

 ぶわっ、と熱が内側からエマの全身を包み込んだ。
 つま先がピンと伸びて、掴んでいたシーツをたまらずに引き寄せる。

「ん、んんっ」
「……すごい、こんなに溢れて……」

 ハインリヒの驚いた声に、熱に浮かされるようにぼうっとしていたエマは我に返った。
 全身が熱くなったと思ったあと、びくびく体が震え、そのときに秘部から沢山の蜜を溢れさせてしまったのである。

「お願い、見ないで」
「ではこちらで、さらにほぐしていきますね」

 言うなりハインリヒが蜜を指に絡めて、秘裂に指を沈めた。

「あ……っ」

 舌とは違う、硬く長いそれにエマは恐怖から体を強ばらせる。
 しかしそれも一瞬のことで、ハインリヒの指はエマが痛みを感じないように、浅い部分の蜜壁を擦っていく。

(ハインリヒが、私に痛いことするはずないのに)

 ハインリヒに対する全幅の信頼が、エマの体を弛緩させた。
 その瞬間、指はもっと深い部分に侵入し、エマは驚きで息を詰める。

「痛みますか?」
「い、いいえ、驚いただけよ」

 ハインリヒがほっとしたように口元を緩めた。
 わかっていたことなのに、今頃になって、エマはハインリヒがとても気遣ってくれているのだと実感する。

 彼はいつだって、エマのことを考えてくれているのだ。
 今も膨らんだ欲望を放ちたくてたまらないだろうに、エマが痛くないようにじっくりとほぐしてくれているのだから。

 そう思うと、下腹部の奧がきゅんと疼いた。
 無表情で、不器用で、誤解されやすいハインリヒ。

 添い遂げることなど到底不可能だと思っていた愛しい男性と、今、誰に咎められることなくともにベッドにいるのだ。

「お嬢様は、すべてがお美しいですね」

 うっとりと呟いたハインリヒが、花芽を舌先でつついた。
 蜜窟で蠢く指はそのままに、彼は真っ赤に膨らんだ淫芽をぐりぐりと弄ってくる。エマは愉悦におののいて、首を横に振った。

「だめっ、同時にするなんて……そこ、触っちゃ、おかしく」
「可愛いです、お嬢様」

 ハインリヒは蜜窟に差し込んだ指を器用に動かして、エマの感じる場所を重点的に擦りあげた。同時に淫芽を強く吸われて、エマは大きく体を震わせる。

「ひぃ――っ、あぁ……っ」

 全身が硬直して、びくんと体が震えた。
 ぷしゅ、と秘所から勢いよく溢れた愛液がハインリヒの手を濡らし、彼が嬉しそうに蜜をなめ回す姿を、エマはただぼうっと見つめる。

 全身が熱くて、与えられる刺激が心地よい。
 恥ずかしいけれど、ハインリヒにならすべて見て貰いたいし、彼にも気持ちよくなって貰いたかった。

「ハインリヒ、あなたも……気持ちよく、なって?」

 ハインリヒが弾かれたように顔をあげる。
 彼はぬちゅりと指を引き抜くと、エマを真っ直ぐに見つめながら口をひらいた。

「お嬢様、そろそろ……挿入れてもよろしいでしょうか」

 拒絶などするはずがない。
 エマのほうこそ、ずっとこの瞬間を望んでいたのだから。

 それなのに、秘所に剛直が押し当てられた瞬間、その質量に恐怖がせり上がってくる。
 初めては痛いという情報がエマの体を強ばらせた。
 すっかり秘所は蕩けていて、いつでも愛しい人を受け入れる準備ができているはずなのに。
 ハインリヒはそんなエマに気づいたようで、熱杭の先端で秘裂をくちくちと撫でた。姿勢を変えて、今度は熱杭の幹で秘所全体を愛撫し始める。遠慮がちにエマの表情を見ながら、ゆっくりと。

 ハインリヒの表情は苦しそうだ。
 呼吸は荒く、額から頬にかけて汗を流している。

 ハインリヒは、どこまでもエマのことを大切にしてくれる――。改めて彼を愛しいと思う気持ちが込み上げてきて、涙がこぼれそうになるのをこらえた。

「もう、きて……?」

 ハインリヒは瞳に欲望をありありと浮かべると、喉をごくりと鳴らし、静かに息を吐き出す。
 小さく「お嬢様」と呟くと、ずぶりと腰を沈めた。

「はぁぅ……!」

 狭い蜜窟を怒張が押し広げ、少しずつ奥に入ってくる。
 とろとろにほぐされていたはずなのに、すぐに屹立したものでいっぱいになって、ハインリヒは動きを止める。

「やっ、つ、続け、て……っ」
「お嬢様……愛しい、お嬢様、ゆっくり、します、ので」

 ずっ、ずっ、と屹立した雄が押し込まれ、その苦痛にエマはただただ耐えた。しかし、無垢な蜜窟で受け止め切るには限界があり、これ以上どうにもできなくなってしまう。

 エマは痛みと悔しさと悲しさで、ついにぽろぽろと涙を流した。

「お嬢様」
「ハインリヒ、ど、どうすれば……あっ!」

 くに、と乳房の先端を両方同時に摘まれて、エマは上半身をびくんと震わせた。

「だ、だめっ、ハインリヒっ」

 そこを触られるとエマが気持ちよくなってしまう。今は、ハインリヒに気持ちよくなってもらいたいのに。

「お嬢様」

 興奮に彩られた艶やかな声音で呼ばれる。
 受け入れられずにいるのに、まだエマを求めてくれるのだと思うと嬉しくてたまらない。

 ハインリヒの顔が近づいてきて、エマの唇を塞いだ。
 肉厚な舌が口内のあらゆる部分を撫で回し始める。

 頭の中心が痺れて、擦り付けられる舌の気持ちよさに恍惚としたとき、脈打ちながら制止していた熱い怒張が一気に奥に押し込まれた。

「ぁ……っ」

 蜜窟のなかを、脈打つ肉棒が出入りするのをまざまざと感じた。膣が限界まで広げられた違和感と異物感はあったが、痛みは先ほどよりも収まっている。
 蕩けるようなキスを受け続けるたびに、秘部から愛液が溢れて、潤滑油のように怒張の滑りをよくしているようだった。

「あぁ、気持ちいいです、お嬢様」
「ほ、本当に?」
「はい。……あと少しで、すべて入ります」

 時間をかけてようやく、あれほどギチギチだった蜜窟にハインリヒのものをすべて受け止めることができた。
 嬉しくて甘えるように手を伸ばすと、ハインリヒが微笑んで抱きしめてくれる。

「ゆっくり動きますから」
「ん、もっと、気持ちよくなって」

 ハインリヒが感極まったように、「あぁ、お嬢様」と呟いた次の瞬間。
 彼はエマの腰を抱えると、楔を少しだけ引き抜いてずぶんと深くまで沈めた。

「――っ」

 衝撃に耐えているうちに、すぐにまた引き抜き、奧を貫かれる。
 エマはハインリヒの首筋にしがみついて、彼の欲望を滲ませた吐息を浴びながら、昂りを深い部分で受け止めた。

 抽挿は早くなり、激しい律動に身を委ねる。
 結合部分がぐちゃぐちゃと水音を鳴らすころ、痛みは痺れに変わり、熱杭の出っ張りで擦られる部分に奇妙な感覚を覚えた。
 それが何かわからないまま、ぞくぞくと体を震わせてしまう。

「こちら、ですか?」

 耳元で囁かれたハインリヒの言葉の意味が、わからない。
 何が、と聞く前に、奇妙な感覚を齎す場所を重点的に擦られて、エマは嬌声をあげて背中を仰け反らせた。

 ぞくぞくぞくぞく。

 呼吸さえできなくなるほどの強烈な愉悦が、エマを襲った。
 抗うことなどできず、抗う意志もない。
 エマはただハインリヒにしがみつく。

「あ……っ、あっ、ああっ!」

 敏感になった全身に熱が溢れたと思った瞬間、ふわっと空中に浮かんだかのように全身が軽くなる。
 エマは知らずのうちに蜜窟をきゅうと締め付けながら、達していた。
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