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第二十話 入籍、そして初夜へ――。【前編】※

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 婚約してから、ひと月が経った今日。
 ソードとフィリアは正式に入籍した。

 貴族の結婚は手続きが多く、離婚と再婚に時間がかかったが、やっとのこと夫婦となったのだ。

 ソードは、改めて結婚式を大々的に開くと言ったけれど、フィリアはそれを断った。
 フィリアとしては、お披露目されると好機の目で見られるし、リーゼロッテに対して招待客がどのような目を向けるかわからないことが、不安だった。

 フィリアは、リーゼロッテにこそ祝って貰いたいのだ。
 だから結婚式は、身内だけで小さく行うことを提案した。

 ソードは渋ったが、「結婚式の費用を、いつか生まれてくる子どものために宛がいたい」と言うと、快諾してくれた。

 本日は入籍祝いとして、ファルマール伯爵夫妻とリーゼロッテ、フィリア、そしてソードで外食をしてきた。
 始終穏やかな食事会が進み、何事もなく一日が終える。

 外食後、馬車を使って屋敷に戻ってきた皆は、それぞれ部屋に戻っていく。
 だからフィリアも、自室に向かって歩き出していた。

 それを、驚いた顔のソードが、腕を引いて引き止める。
 フィリアが勢いよく振り向いた反動で、慣れない貴族令嬢のドレスとヒールのついた靴に振り回されたフィリアは、体勢を崩してよろけてしまう。
 そんなフィリアを力強い腕で抱きしめて支え、ソードは「大丈夫か」と声をかけた。

「ありがとうございます。えへへ、なんだか、結婚したって実感します。こんなに綺麗なドレスが着れるなんて」
「お前が望むなら、いくらでも買ってやる」

 ソードとフィリアの結婚許可が下りるまでのひと月、フィリアが「ソードの妻」になる準備は着々と進んでいた。
 新たな使用人を雇うことも決まり、引継ぎさえ終えたら、ナルは貴族令嬢としての振る舞いを求められるようになる。
 少し寂しい部分もあったが、どんな理由であれ、伯爵夫妻やリーゼロッテに家族だと認めて貰えることは嬉しかった。

「ところで、どこへ行く?」
「自室へ戻ります。今日は夕食の片づけもないですし」
「お前が寝泊まりするのは、もうあの使用人部屋じゃない」
「……はい? でも、伯爵――お父様が、夫婦の寝室を作るとおっしゃったとき、ソード様が断っておられましたよね」
「ああ、必要ないからな。お前はこれから俺の部屋を使え」

 え、とフィリアは目を見張る。

 夫婦とはいえ、個別に自室を持つのは当然のことだ。
 貴族の間では、寝室だけ共通というのが常識である。お互い知られたくないこともあるだろうし、常に一緒だと息がつまるという理由からだ。

「……俺は元々貴族ではないし、そういった縛りに重要性を感じない。それよりも、今後、ずっとお前と一緒にいたい」

 驚いたフィリアに、そう説明してくれたソードの頬がそこはかとなく赤い。
 胸がぎゅうとなるような切なさに、喜びに覚えた。

「……私もです」
「そうか」

 ふ、と笑ったソードは、フィリアを抱きしめた。
 フィリアは真っ赤になって慌てて周りを見渡すが、家族はすでに自室へ戻っていて、誰もいなかった。

「部屋を共有するからと、気を張ることはないぞ。俺は、昼間は仕事で不在だし、一日中一緒というわけではない」

 固まったフィリアをどうとったのかソードはそう言うと、頬を朱色に染めながら戸惑いがちに話し始める。

「だが、俺は屋敷に居る間はフィリアといたい。夜眠るとき以外も……駄目か?」

 強気な口調で宣言しながらも、最後には不安げに問うてくる姿が無性に愛しい。
 フィリアは笑み崩れて、そっと、ソードを抱きしめた。

「駄目じゃないです。というか、むしろ一日中一緒にいたいです。でもお仕事にはついていけないので、屋敷でソード様のことを想ってますね」

 わかりやすく、言葉にして気持ちを表してくれるソードに感謝する。

 そっと腕から解放されると、ソードに手を引かれて歩き出す。
 向かう先は、ソードの自室だ。

「……次の使用人のためにも、あの部屋は空けてやれ」

 新しい使用人として、男女それぞれ一人ずつ雇うことが決定している。
 一人は通いだが、もう一人は住み込みを予定しているのだ
 そうなれば、フィリアが使っていたあの部屋を譲ることになるだろう。

(ソード様の言う通り、あの部屋から早く出て、清めておかないと)

 そんな話をしているうちに、ソードの自室についた。
 フィリアごと部屋に入ったソードは、部屋の内鍵を閉めると、フィリアを抱き上げた。

「えっ、あのっ」

 驚くフィリアを優しい手つきで、ベッドに横たえる。
 ベッドに寝かされたことで期待と緊張が高まり、フィリアは慌ててソードを見つめた。

 このひと月、ソードとの触れ合いは口づけ一つなかった。
 それが寂しかったのだが、入籍した今夜ならば、また以前のように触れてくれるかもしれない。

 ソードは、ベッドのわきにある椅子に座り、絨毯を睨みつけていた。

「……ソード様?」
「今、余裕を蓄えている」
「はい?」
「大丈夫だ、大丈夫。……余裕を持て、余裕を」

 何かぶつぶつ呟いているけれど、もしかして疲れたのだろうか。

(……夫婦になったんだし、今から夫婦の営みをするのよね)

 フィリアはこのあとを考えて、ごくりと生唾を飲む。
 ついに、愛する人と、結ばれるのだ。

 そう思うと、無性に嬉しくなってしまって、顔がにやけてしまう。
 ファルマール伯爵家の次女として扱われるようになったので、清楚な令嬢を装いたいのに、持ち前の性分と使用人生活で培われた下世話でがさつな平民根性は、なかなか消えてくれない。

 頑張ろう、とこっそり拳を握り締めて、気合を入れた。

「あの、湯あみの準備をしてきます。今日はお疲れでしょうし、ゆっくりと温まってください」

 しん、と沈黙が降りる。

(あれ、聞こえなかったのかな)

 ソードを覗き込むと、床を睨んでいた目が、なぜか今は閉じている。
 まるで瞑想しているようだ。

「ソード様?」
「……よし」

 ソードが顔をあげた。
 ほっとしたのもつかの間、ソードはフィリアへ顔を近づけてくる。
 突然のことに硬直するフィリアの頭を手で押さえ、唇を奪う。

 暖かく柔らかい唇が、啄むようにフィリアの唇に吸いつく。
 ちゅ、ちゅ、と音をたてながら吸われ、息をするために口を開いた瞬間、口内に舌が侵入してきた。
 歯列を撫でられ、舌を絡ませて――と、ソードの舌に口内を犯される快感に、眩暈を覚える。

(嬉しいっ、けど。……湯あみ、したい)

 今日は入籍の件があったから、手続きが手筈通り行われているか確認するために、動き回った。
 入籍確認後は、報告をしに、ソードと二人、リマやテオスバードに会いに行ったりもした。
 最近寒さが増してきたため、外出するときは外套を羽織るようになり、身体は蒸れてしまい、汗もかきやすくなっている。

「あ、あの。湯あみ、したい、んですが」
「ああ、あとで一緒にしよう」
「一緒に!?」

 それはかなり恥ずかしいのではないか、と思いながらも、あとでという部分に異論を唱えたかった。
 あとでは遅い。
 ただでさえリーゼロッテのような美しい肌ではないのだから、可能な限り綺麗にした姿を見てほしいのだ。
 初夜に備えて密かに購入した、純白のネグリジェにも着替えていないし。

 ソードの唇が、首筋を這う。
 熱い吐息と彼のぬるぬるとした舌と唾液に、びくりと身体を揺らした。
 ただ首筋を舐められただけなのに、下腹部がきゅんとなるのは、喜びからだ。

 ソードの男らしい硬い手が、フィリアの胸に触れる。
 外食に着て行った質のよいドレス生地は柔らかく、肌触りがいい。首筋から鎖骨にかけて吸われながら胸を揉まれ、ソードの手と擦れる生地のせいで、すぐに突起が主張してしまった。

「ひゃっ、あっ、まって」
「待てない」
「湯あみを、先にっ」
「……やけにこだわるな」
「だ、だって、身体を清めたいです。汗をかきましたし」

 ソードがフィリアの首筋の後頭部に近いところに顔を埋め、匂いを嗅ぎ始めた。
 ぎょっとしてソードの身体を押すけれど、鍛えられた逞しい身体はびくとも動かない。

「いい匂いしかしない。これは、フィリア自身の匂いか。汗の匂いも、甘い匂いも、何もかも興奮する」
「あ、甘い匂い? ……あ、あの、本当に、恥ずかしいので、湯あみをさせてください」

 ソードが、唐突に身体を離した。
 ああやっぱり汗臭かったのか、と泣きそうになりながらも、だったら尚更清めてこないとと考えるフィリアに、ソードは悲しく眉を下げた表情を向けた。

「……もしかして、私が匂うのか」
「はい?」

 ソードは、くんくんと自身の腕やら脇やらの匂いを嗅ぐ。

「自分ではあまりわからないが、臭かったか」
「えっ、そんなことないです! ソード様の匂いは男らしくて、すごく好きです」

 ソードは嬉しそうに微笑むと、フィリアの頬に軽い口づけをした。

「なら、問題ないだろう。あとでいい」
「……でも、恥ずかしいです」
「恥ずかしさなど忘れさせてやる」

 再び覆いかぶさろうとしたソードは、ふと、再び身体を離した。
 そしておもむろに衣類を脱ぎ始める。
 ソードの鍛えられた雄々しい身体を直接見てしまったフィリアは、頬を朱色に染めた。

 こうして、じっくりとソードの肌を見るのは初めてで、自分とは造りの異なった裸体に興奮してしまう。
 引き締まった肉体からは、色気が垂れ流されている気がする。

(格好いい……ソード様)

「すまないが、フィリアも脱いでくれないか。ドレスの脱がし方がわかないし、そのままして汚したり皺になっても困るだろう」

 見惚れていたフィリアは、ソードの言葉に我に返り、慌てて後ろを向いてドレスを脱ぎ始める。腰ひもを緩めながら、今の呆けた顔を見られていないかと恥ずかしくなった。

(どうしよう、すごく恰好いい)

 ソードが男前で、身体つきもいいことは知っていたけれど、まさかここまで鍛え抜かれていたなんて。
 父であるファルマール伯爵も腹が出ているし、近所の主婦たちの旦那も大概だらしない身体をしているという。
 その「だらしない身体」が具体的にどういう意味なのかはわからないが、ソードにはそれが当てはまらないのは確かだ。

 ドレスを脱いで、皺にならないように床に置く。
 胸に巻いていた布を解こうとして、自分の乳首が勃っていることを思い出して、羞恥で頬を染める。

 こんなに露骨にカタチがわかってしまう布は、駄目だ。
 今度から胸を覆う布だけは、もっといいものを使おうと決めて、思い切って布も取り払った。

 あとは下半身を覆っている下着だけ、という頃になり、いきなり後ろからだ抱きしめられる。

「あっ」
「脱いでいる姿も眺めていたいが、触れたくてたまらない」

 ソードは大きな手でフィリアの両の乳房を揉みながら、首の後ろや背中に口づけをする。
 首の後ろを強く吸われて、甘噛みされたとき、その刺激にびくんと身体が震えた。
 まるでそれが合図のように、両の胸を揉んでいた手の動きが激しくなり、優しいけれど力強い指が、胸の突起をこねた。

「ひっ、それ、駄目っ」
「何が駄目なんだ」
「手、が――」
「手? これか?」

 ソードの固い指が、色づいた突起を強く押しつぶした。
 突然襲ってきた快感に身体が大きく跳ねる。
 ソードは、フィリアが逃れようと身体を捩っていることを知りながらも、指の力を緩めず、それどころか堪能するように、くりくりと指の腹で押しつぶした。

「あっ、ふあっ、ひゃ……はぁっ、駄目えっ」
「何が駄目なのか、はっきり言ってもらわないとわからない」
「指、がっ、触れるのが」
「誰の指が、何を?」
「そ、ソード様の指が、私の……乳首をっ、こりこりってっ、駄目ですっ。そんなにされたらっ……取れちゃうっ、ひゃあっ」

 正直に言ったのに、ソードは乳首をいじるのを止めてくれない。
 それどころか後ろから首筋に強く吸いつかれ、さらに甘い刺激をもたらす。
 ずっと欲しかった甘い疼痛に、じわりと秘部が濡れているのがわかる。

「すごく感じてくれてるんだな、嬉しい。俺はちゃんとできてるか?」
「わ、わかんない、です。でも、今日のソード様、いじわるですっ」

 後ろでソードの笑う声がした。
 真剣に訴えているのに、何がおかしいのだろう。
 それに、いい加減、突起をいじるのを止めて貰わないと、突起の感覚がおかしくなってしまう。
 ソードが扱いたりこねたり引っ張ったりするものだから、フィリア自身が驚くほどに、胸の先端は硬く勃起し、赤く色づいている。

「すまない。フィリアが可愛いから、いじめたくなるんだ。俺ばかり楽しんでしまっていた、謝罪する……これからは、優しくする」

 そう言うなり、ソードはフィリアの身体を軽々と抱きかかえ、自分のほうへと向けた。
 ソードの右足太もものうえに跨る姿勢になるが、この姿勢だと足を開いて跨がなければならないので、フィリアの秘部が下着越しとはいえ、ソードの足に押し付けられる格好になってしまう。

 フィリアの秘部のすぐ近くに、すでに大きくそそり立ったソードの硬い昂りを見てしまった。
 咄嗟に視線を逸らしたが顔が真っ赤なのは、すぐにバレてしまうだろう。

「何を照れてるんだ。前は、あんなに俺をいじめたくせに」
「い、いじめたわけじゃ」
「ああ。気持ちよくしてくれようとしたんだろう? フィリアは俺のここも……愛してくれているからな」

 そう言って、ソードは自らの昂りを軽く扱いた。
 けれどその手をすぐに放し、フィリアの身体を支えると、腰から臀部にかけてをゆるゆると撫でた。

「今日は俺が、フィリアを気持ちよくしよう」
「ソ、ソード、様も」
「ああ、一緒に気持ちよくなりたい」

 ねっとりとした口づけを交わし、ソードの唇が胸に降りてくる。
 これ以上ないほどに主張していた胸の突起に吸いつかれ、電流が走ったような刺激に大きく身体を震わせて、身体をそらした。
 じわ、と下着が濡れるのがわかる。

 いやいやというように身体をくねらせるけれど、ソードはフィリアの胸の突起から、口を離さない。
 甘噛みと強い吸いつきを繰り返されて、両膝を摺り寄せようとしたけれど、ソードの膝に跨っているのでそれも叶わなかった。

 ふ、とソードが笑う。

「凄いな、フィリアのここは。こんなに勃つものなのか、色も赤くて美しいぞ」
「い、言わないで、くださいっ」
「本当に可愛いな、フィリアは。……こんなにして、いやらしい」

 自分がいやらしいことは自覚していた。
 ソードにも、とっくに知られているだろう。
 なのに、改めて言葉にされると恥ずかしくて、フィリアは反射的に首を横にふる。

「ち、ちがっ、そんなことっ」
「俺だって感じてるんだ。フィリアも感じてくれなければ、不公平だろう?」

 そう言うなり、色づいた突起を強く吸われて、言葉さえ出ずに、ただ息をつめた。
 びくびくと身体が震えて、身体の奥が切なく収縮し、多くの蜜が溢れてくるのを感じる。

 ソードは愛撫を変わらず続けているが、自分の身体に気づいたフィリアは真っ赤になる。

(もしかして私、胸を吸われただけで、イッちゃうところだった……?)

 羞恥を隠してソードを見るが、彼は胸にしゃぶりつくのに夢中になっているようで、フィリアが感じすぎていることに気づいていないようだ。
 ほっと胸を撫でおろし、はしたない自分を責めた。
 好きな人に触れられる――しかも、ずっと今日という日を待っていたせいか、やたらと自分が破廉恥になっている気がする。

 ぴた、とソードの動きが止まった。

(こ、今度は、何?)

 彼は驚いた顔で、フィリアの下腹部を見る――その瞬間、フィリアは小さく悲鳴をあげた。

「や、やだっ、見ないでっ」

 溢れた蜜が下着をぐしょぐしょに濡らしてこぼれ、ソードの足を伝ってシーツにこぼれていた。

(おかしいっ、おかしいっ)

 こんなに感じるなんて。
 こんなに気持ちよくなってしまうなんて。
 もし秘部に直接触れられでもしたら、フィリアはどうなってしまうだろう。

「こんなに滴らせて、漏らしたのか?」
「ち、違いますっ」
「なら、この暖かい、ぬるっとした液体はなんだ」

 ソードがこぼれた愛液を指先でぬぐい、ぬちゃぬちゃと親指との間で糸を引いてみせる。
 なんてことをするのだろう。
 フィリアは、恥ずかしさで真っ赤になった顔を両手で隠した。

「や、いじわるしないでっ」
「……わかった、言わなくていい。俺が自分で確かめる」

 そう言うソードの声音は楽しそうだった。
 羞恥でおかしくなりそうだったが、ソードが喜んでいる姿も見たくて、そっと顔を隠していた手を下す。

 ソードは瞳に熱をたぎらせ、視線だけでフィリアを犯しそうなほど欲情している。
 だが、今日の彼はこれまでと違って余裕があるようだ。

(私ばっかり感じて、恥ずかしい。ソード様にも気持ちよくなって頂きたいのに)

 感じてくれているのだろうか、と視線をソードの昂りに向ける。

 先ほどより遥かに膨張してそそり立ったソードの肉棒が見えた。
 感じてくれているのだ。まだ昂りに触れてさえいないのに、透明な液体をだらだらと流し、今にも白濁を弾けさせそうなくらいビクビクと動いている。
 フィリアの痴態を見て、ソードも悦んでくれていると知り、どうしようもなく興奮して、フィリアはまた愛液をあふれさせた。

「またこぼれたぞ。……ここから溢れているようだが」

 ソードの指がフィリアの秘部を、濡れて使い物にならなくなった下着の上から撫でた。
 ぐじゅ、と水音がした。
 じんじん甘く痺れていたそこを、つつ、と指の腹で撫でられて、もっと触れてほしいなどという、はしたない欲望が湧き上がってくる。

 さらに滴ってくる蜜を、ソードは指で拭いながらも、一番触れてほしい場所には触れてくれない。
 ただ下着のうえから、指の腹で優しく襞をゆるゆると撫で続けている。

(そこじゃ、ないっ、のにっ……もっとっ)

 ふと、ソードが指を退けた。

(……なに?)

 ソードは蜜でべとべとになった自分の手のひらを見て――ふいに、ぺろりと舐めた。
 舐め残しがないように、指の間や手のひらまでをも丹念に舐めたあと、再びフィリアの下着を撫でて指に愛液を擦り付けると、またそれを自らの口元へもっていき、れろっと舐める。

 慌てて、フィリアは彼の手を抑えた。

「……や、やめてくださいっ、そんな」
「美味い、フィリアの」

 ソードはにやりと笑い、フィリアに唇を合わせる。
 これまでソードと繰り返し行ってきた口づけは、身体が覚えていた。

 ソードの舌を受け入れて、お互いに唾液を飲み合い、フィリア自身も激しく舌を絡ませ合う。
 静かな部屋に荒い呼吸と、くちゅくちゅという激しい口づけの音が響き、羞恥心までもが麻痺していく。

 もっとほしい。

 口づけをしていると頭がぼうっとしてきて、身体が蕩けていく。
 快感に身体が反応しても、溶けた思考では更なる快感を求めてしまう。

 フィリアは口づけに夢中で、ソードが驚いた顔をしているのに気づかない。
 ソードも口づけを止めなかったし、それどころかさらに激しく口内を犯してくるため、フィリアの意識も身体も、とろとろになってしまう。

 お互いに荒い呼吸をしながら顔を離し、すぐ近くで熱に浮かされた瞳を見つめ合った。

「いやらしいな、フィリアは。我慢できないか? 今日まで随分と待たせたからな」

 ソードがまた視線を落とす。
 嫌な予感がした。

 つられるように視線を向けた先で、先ほどとは比べものにならないくらいソードの足が濡れているのを見てしまう。フィリアの秘部から溢れた蜜は、彼の足どころか股間のほうにも伝い、男の昂りの下に見える袋の部分も濡らしていた。
 羞恥で真っ赤になりながら、フィリアは落ち着くように自分に言い聞かせる。

(ま、待って。おかしいって、私、こんな……口づけをしたから? 気持ちよかったけど、こんなになるなんて。でも本当に気持ちよくて、もっと欲しくて――)

 はっ、とそれに気づいたとき、フィリアは血の気がひく思いだった。

 口づけに夢中で、頭のなかが蕩けそうで、気持ちよくて、蜜壺の奥がしびれて――でもソードは触れてくれなくて。フィリアは無意識に、自分で腰を揺らして、己の気持ちがいいところを彼の足に擦りつけていたのだ。

「ご、ごめんなさいっ、私っ、私っ」

 自分の痴態を知ったフィリアは、羞恥から混乱して、首を振る。

「落ち着け」
「私、はしたいないことをっ」
「俺は、フィリアが自分でいじることが好きなことも知っている」

 ちゅ、と手のひら越しに頬に口づけをされて、フィリアは固まった。

(今、なんて)

「以前、リーゼロッテが構ってくれない寂しさを、肉欲で埋めようと、夜中に自慰行為をしていただろう? ドアの外で聞いたことがある」
「な、な、なん、で」

 はしたない行動を知られてしまっていた。

(恥ずかしい。色々と恥ずかしい……か、隠れたい)

「可愛い声だった。ドアの外でお前の喘ぎ声を聞きながら、俺もここを扱いていた」

 ソードは、こんないやらしいフィリアに、興奮してくれていたのか。
 嬉しいけれど、羞恥心が勝って、逃げようと腰を浮かせる。
 ソードがフィリアの腰に手を置いて強引に元の場所に座らせたため、彼の足が下着越しに秘部をこすり、引っ張られた下着の生地が肉芽を僅かに刺激した。

「ひゃん!」

 慌ててソードの肩に両手を添えると、ソードと視線が合った。
 熱い瞳が、笑みを描いている。

「あくまで、以前は、だがな。……先週も、夜中にフィリアの部屋から声がした。俺の名前を呼んでくれていたな」

 さっ、とフィリアの顔から血の気が引いた。
 寂しくて我慢できなかった日だ。

(恥ずかしい……もう、無理ぃ)

 フィリアは、唇を噛んで身体を振るわせた。

「……ご、ごめんなさい。ごめんなさいっ」
「あのまま部屋に押し入りたかったが、我慢した。我ながら、よく理性がもったと思う」
「はしたなくて、ごめんなさいっ。嫌いに……ならないで……」
「嫌いになるわけがない。フィリアを無理やり襲うよな真似はせずに済んだが、俺もフィリアの部屋の前で沢山射精したんだ……部屋に戻ってからも、自慰行為をした。いやらしいフィリアを想いながら」

 ちゅ、ちゅ、とフィリアの頬に口づけをするソードは、心から愛おしそうにフィリアを抱きしめる。

「下着、脱いでくれるか?」

 耳元でささやかれた言葉に、びくりと身体が震える。

「全部脱いで、裸になってくれ。早く、我慢できなくなる前に」

 促されて、フィリアは恐る恐る自分の下着に手をかける。
 ソードがじっと見つめる前で下着をゆっくりとおろせば、つつ、と糸をひき、下着がぬちゃぬちゃに濡れていることがひと目でわかった。

 けれど、ソードはこれを望んでくれている。
 はしたないフィリアも受け入れて、裸を見たいと言ってくれているのだから、彼を悦ばせてあげたい。
 すべての衣類を脱いだフィリアを、ソードは再び自分の右足の太もも部分に座らせた。

「ひゃあっ!」

 直接秘部が触れて、目の前がチカチカするような快感が身体を走る。

「好きなだけ擦りすけていいぞ」
「やっ、で、できませんっ」
「さっきはしてただろう?」
「ご、ごめんなさい……」

 本当に、今日のソードは意地悪ばかり言う。
 悦ばせてあげたいのに、同時に、嫌われてしまうんじゃないかと不安になってしまう。
 羞恥で涙ぐむフィリアを見て、ソードはやや慌てたようにそわそわし始めた。

「わ、悪い。調子に乗りすぎた」

 こほん、と彼は露骨な咳ばらいをすると、また、優しい口づけをくれる。

「俺が触れよう。どこに触れてほしい?」
「……え」
「教えてくれ。フィリアの気持ちいいところを。そこに触れたい」

 
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