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第十三話 ソードの想い
しおりを挟むコトン、とテオスバードが紅茶のカップを置いた。
「いい加減に話してくれないと、時間なくなっちゃうんだけどなぁ」
独り言のように呟かれた言葉に、向かい側のソファに腰を下ろしていたソードは、視線を床に落とした。
見慣れた青い絨毯の敷かれた床は、ここが近衛騎士の休憩室であることを示している。
「……笑わないか」
「あのねぇ、私をなんだと思ってるんだ。お前は私の大切な部下で友人でしょ。そんな暗い顔でいられたら、気になって仕方がない」
テオスバードは、そう告げて苦笑した。
ソードは静かに息を吐き出し、決意を固める。
つい先ほど午前中の近衛兵の訓練を終え、テオスバードたちの警護部隊と合流したところだ。
第一王子つきの近衛隊は、二つに分けられる。
近衛隊隊長のテオスバードが率いる第一部隊と、副隊長であるソードが率いる第二部隊だ。
それぞれ、午前と午後に訓練を行い、その都度交代で王子の警護につく。
基本的に二十四時間、信頼の置ける近衛兵を一人は王子の傍に置いておきたいので、夜勤や早出、遅出もあり、テオスバード、ソード、そしてそれぞれの副官の四人のうち誰かが、常に王子の傍で待機していた。
今現在、王子の傍で待機しているのはテオスバードの副官で、昼間の警護指揮はその副官が担当することが多い。
よって、テオスバードとソードがこうして二人、くだらない話をしたり王都の酒場へ出かけたりできるというわけだ。
そしてたった今、憂鬱な顔をしていたソードに対して、テオスバードは問うてきた。
何があった、と。
珍しく真剣な表情だったので、よほどソードの表情が曇っていたのだろう。
ソードは静かに息を吐き出して、昨夜からずっと頭のなかを占めている悩みを、彼に相談することにした。
幸い、現在この休憩室に、ほかに近衛騎士はいない。
ソードは繰り返し深呼吸をした。
このまま抱え込んでいても仕方がない。それに、こんなことを相談できるのはテオスバードくらいだ。
「……実は」
「実は?」
「…………………失敗した」
「何を?」
首をひねって問われ、ぐ、と口ごもる。
自分の口から言うのは恥ずかしくて、がしがしと首の後ろを掻きながら、視線を反らしたまま早口で言った。
「情事、だ」
「……え、エッチ失敗したの? 昨日の昼? ぜんっぜん、勃ってたじゃん」
「勃つとか勃たないとか、ではなくて。……その」
「わかりやすく言ってよ、焦らしてるの?」
テオスバードに睨まれて、深くため息をついた。
「だから。……興奮しすぎて、先に」
「ああ、出ちゃった?」
テオスバードはあっさりと言うと軽く笑い、小皿に乗った菓子に手を伸ばした。
それを口にはみ、無駄に色気たっぷりに舌で撫でまわしながら食べ始める。
「いいんじゃないの、初めてでしょ。ミルちゃん、引いてた?」
「引いてないっ、む、むしろ……や、優しく、してくれた」
「顔真っ赤だよ、何思い出してんのさ。えっちー」
「うるさいっ」
テオスバードは二つ目の菓子に手を伸ばし、それを口の中に入れると、紅茶を口に含む。
彼曰く、口の中でじんわり溶けてくる菓子の感触が心地よいらしい。
時間をかけて嚥下したテオスバードは、ソファに凭れて長い脚を組んだ。
「じゃあ、何が問題なの?」
「……昨夜、またミルを抱こうとした。いや、最初は昼間のことを謝るつもりだったんだが……我慢、できなくなって」
「びっくりするほど絶倫だね。これまで耐えてた分が一気にきたのかな」
「茶化すな、俺は真剣なんだ」
「……私も真剣なんだけどね。それで、それがナニ? 拒絶されたの?」
「ち、違う。…………そのときも」
「ん?」
「………………………………失敗した」
長い沈黙の末に呟いた。
その瞬間、テオスバードが口元を抑えて横を向く。
こんな話はさすがのテオスバードでも引くか、と不安になって視線を向ければ、彼は肩を震わせて懸命に笑いを堪えていた。
ソードの視線が、つと冷たくなる。
「貴様」
「げ、限界っ、あははははははははっ」
「笑うなと言っただろうがっ」
「だって、きみがそんなことで悩んでるなんて、遅い青春だなって思ってさ。少し前のソードは、貴婦人方が近づくだけで廊下の端に避けてたじゃないか」
「仕方がないだろう。女はそもそも、見た目は勿論だが、匂いが気持ち悪い」
「えー、女の子はいい匂いがするんだけどなぁ。でも、きみが、ふふっ、そう。あのソードが、そんな悩みをっ、ふ、ふふふっ、くくくっ」
テオスバードは尚も笑い、ややのち、なんとか自分で笑いを収めた。
ふっ、とたまに思い出したように噴き出すのが、腹立たしい。
それでも相談できるのはテオスバードしかいないので、ソードは額に血管が浮き出るほど怒りを押し殺しながらも、彼が落ち着くのを待った。
「……よし、もう大丈夫。詳しく話を聞くよ、私で相談に乗れるなら全力でアドバイスさせて。ソードが男としてダッサくても、私は引いたりしないから。ちょっと笑うかもしれないけど」
後半の言葉が引っかかったが、こうして休憩する時間も限られているため、ソードはとっとと本題に入った。
「俺は、どうすればいい?」
「うーん、事細かに教えてくれない? 何がどうして、失敗したの? 慣らして挿入れるだけだよ」
「……我慢ができなかった。早く入りたくて、でもうまく入らなくて、堪えきれずに射精してた」
昨日のことを思い出しながら、事実だけを告げる。
失態を話すのはやはり恥ずかしかったが、次こそちゃんとした情事を行いたいので、ここは羞恥心を堪えてテオスバードの意見を仰ぎたい。
テオスバードは紅茶カップに手をかけ、こくりと優雅な動作で一口紅茶を飲むと、やはり優雅な手つきでカップを受け皿に置いた。
「あれだね、童貞とか、本命相手によくあるやつだねぇ。身体と感情が、逸り過ぎなんだよ」
「……どういうことだ」
「そのまんま。ソードの場合は両方だろうけど、たぶん後者のほうが強いんだろうね。その子が好きすぎるあまり興奮しすぎて、欲望が全面に出すぎてるんだよ。もう少し余裕をもてばいいんじゃないかな」
ソードは、身体を強張らせた。
というか、思考が停止した。
テオスバードの言葉が理解できない。
いや、意味は理解できる。
けれど、その意味と自分自身がうまく合致しないのだ。
「どうしたの、固まって」
テオスバードが、首を傾げた。
「ちょっと、大丈夫?」
「……好き」
「え?」
「俺が……ミルを、好き」
「あれ、まさか無自覚だったの? まぁ、二十八年間も初恋さえなければ、何が恋なのかも気づかないよねぇ。遅いなぁ」
あはは、と笑うテオスバードの笑い声も、聞こえているのにすっと頭のなかを通り過ぎていく。
これまで、女を愛したことがなかった。
男色家を公言しているけれど、男に欲情したことなんて勿論ない。
そもそも、溜まってくると勃起はするが、女が理由で欲情することなんてなかった。
女は気持ちが悪い。
貴婦人たちは隙あらば取り入ろうとしてくるし、平民だったころも、ソードの外見や身体つきを見て、やたら色目を使ってくる女が多かった。
ソードの家庭は、母子家庭だった。
けれど、お世辞にもよい母とは言い難く、毎夜男を連れ込んではカネを得て、それを使って自らを着飾ることにだけ夢中だった。
ソードの女嫌いの根源は、実母にある。
ソードはその頃からすでに感情のない子どもと言われていた。
体格に恵まれていたこともあり、偶然の出会いが重なって武術や剣を学び――傭兵や護衛の仕事をこなしているうちに、ひょんなことから知り合った第一王子に「近衛隊に入らないか」と声をかけられた。
誰かに恋をする余裕などなかったし、関心さえ寄せたことがなかった。
リーゼロッテとの結婚も、自分を拾ってくれた王子の傍にいるために、身分が必要だったからだ。
リーゼロッテもその他大勢の女同様に、気持ちが悪い生き物だった。
挙式の際は、仕方なく腕を組んだが、それさえも嫌悪した。
だからその日の夜、俺に触れるなと告げた。
(そうだ……俺の人生、女などいらなかった)
初めてミルと出会った日のことを思い出そうとして、記憶が曖昧なことに気づく。
ミルは、気づけば屋敷にいた。
使用人だと思っていたから特別注意も払わなかったし、ミルの存在を意識したのは、挙式の翌日から。
ソードを見るミルの視線に、引っかかりを覚えたのだ。
これまでソードがあらゆる女たちから受けてきた視線と違い、彼女のそれには、憎しみが込められていた。
そして、軽食を理由に呼び出し、なぜなのか問い詰めた。
(あのとき初めて、ミルがファルマール家の次女だと知ったんだったな)
正妻の子として貴族に生まれながらも使用人として生きてきたミルに、ただただ驚いた。
本人は趣味だと言ったが、ファルマール夫妻の対応も、リーゼロッテの接し方も、ミルを使用人として扱い、決して家族だとは認めていなかった。
最初は同情していた。
それだけだった。
けれど、リーゼロッテのネグリジェだろうものを抱きしめて、リーゼロッテの名前を呟いていたミルを見てしまったあの日。
ミルがリーゼロッテに想いを寄せていることを知り、同時にソードを憎んでいる理由を知った。
ミルは常に笑みを浮かべている。
謙虚を通り越して、卑屈な言動も多い。
彼女をそうさせたのは、紛れもないファルマール家の人間たちだ。
ミルはリーゼロッテのために、両親のために、ただ尽くしていた。
なのに、誰もミルを顧みない。
彼女の健気さを、愛そうとしない。
ミルは、ああやって密かにリーゼロッテの衣類を抱きしめて、寂しさを押し殺すことしかできないのだ。
気づけばミルのことを考えるようになっていた。
意識し始めたのは、この頃からだろうか。
視界にミルが入るとやたら緊張して、身体の奥がじくじくと痛んだ。
その痛みは決して不快なものではなく、むしろ快感に近い痛みだった。
それが何かわからなくて、ミルを見るのが怖くて、彼女を避けた。
遅出の際、真夜中に帰宅したソードは空腹を我慢しながら自室へ向かい、ドアの前に置いてあった食事に息を呑んだ。
触れるとまだ暖かく、ソードが帰る時間を見計らって作り、ここに置いてくれたのだと知ると、胸の奥を鷲掴みにされた奇妙な感覚を覚えた。
その夕食は美味しくて、食べてしまうのが勿体なかったから、自分でも驚くほどに噛みしめながらゆっくりと食べた。
そんなある日、頻繁に通っているミーツディ酒場でミルを見かけた。
避け続けているのは楽でもあったが、ミルと関われない日々は辛かった。
いい機会だと、ミルを引き留めて少し話をした。
話してみると、ミルはソードが思っているよりも、気丈な娘だった。
ソードに憎しみをぶつけたり、言わないでと悲壮感いっぱいに叫んだり、そういう態度を示すのはリーゼロッテに関係することだけらしい。
酒場での話のなかで、「異性や同性にも興味を持てない」ことについてミルに意見を聞いたのは気まぐれだったが、今思えば、ミルの思いや趣向を知りたかったのかもしれない。
女にも男にも反応しない自分を軽蔑対象だと思っていた。
そんな自分は男としておかしいのだと思っていた。
けれど、ミルは「楽ですね」と言って笑った。
決して楽なわけではないけれど、彼女の前向きな考え方は、ソード自身を認めてくれたような気がして、ただ嬉しかった。
そして――テオスバードがソードの秘密を暴露して、その場はなぁなぁに終わった。
口止めしなければ、とその日の夜に厨房へ向かい、ミルと二人で話をした。
そしてその後。
ミルを追って彼女の部屋の前まで行ったソードが聞いたのは、ミルの自慰行為の喘ぎ声だった。
酷く興奮して、夢中で昂った己をしごいた。
その後も興奮は収まらず、無理やり眠ったが、結局夢のなかでミルを犯してしまい、朝起きたときには下着を汚していた。
ミルは、自分がソードの夢で穢されたとは知らず、白濁のついた下着をその細い手で洗った。
戸惑うことなく白濁に触れて指で擦る姿に、ソードはまた興奮した。
その日の午前中は仕事中もずっと悶々としていて、気遣ってくれたテオスバードが、気晴らしにミーツディ酒場へ行こうと誘ってくれたのだ。
そこでミルに会い、昼間だというのにテオスバードの魂胆にはまって――結局は自分の理性が脆かったのだが――夢中でミルの身体を求めた。
気持ち悪いどころか気持ちよくて、甘くて、可愛くて、すべてを貪りたくて、たまらなかった。
欲望のまま精液を吐き出し、自分の白濁まみれになったミルにまた欲情し、ミルのナカへ入りたくてたまらなくなった。
失敗したけれど、優しく抱きしめられて、どうしようもなくミルのことが欲しくなった。
会いたくて、我慢ができなくて、夜にミルの部屋を訪れたのは、昨夜のことだ。
ミルに触れると可愛くてたまらず、また求めてしまった。
やはり失敗してしまったけれど、ミルはそんなソードに微笑んでくれた。
ナカには入れなかったけれど、それでも満たされた気持ちになった。
時間が経つにつれて失敗したことが悔やまれ、男として落ち込む要因となったのだけれど。
(……好きなんだ、俺は)
これまでの出会いを振り返り、その時々に覚えた感情を思い出す。
むしろなぜ今まで、ミルを愛していることに気づかなかったのか。
傍にいたい、触れたい、抱きしめてキスをして、それ以上のこともしたい。
愛していると囁き、彼女からも愛していると囁かれたい。
改めて欲望がもたげると、次から次にやりたいことが溢れてきた。
デートもしたいし、もっといやらしい姿を見たいし、それに――結婚もしたい。
夫婦になって子どもが欲しい。
ミルの、何もかもが欲しい。
欲望が膨れ上がり、ソードはそれらを強引に脳裏から消した。
そして自嘲的な笑みを浮かべ、絨毯を睨みつける。
軽食を持ってきてくれと部屋へ呼んだ日、ミルがソードを憎んでいることを知った。
ミルが愛しているのはソードではなく、リーゼロッテだ。
ミルがソードに身体を許したのは、決して愛しているからではなく、姉の夫に対して、使用人として刃向かうことが出来ないから、なのではないだろうか。
失敗したときに慰めてくれたのも、今後のリーゼロッテとの仲が良好になるように思ってのことかもしれない。
失敗がトラウマになって、情事が出来なくなると困るから。
以前に、朝方に強引に抱いてみてはどうかと言われたこともあるほどだし、ミルは常にリーゼロッテのことを気にかけている。
はは、と乾いた笑い声をあげる。
好きだと気づいた瞬間に、失恋した。
気づきたくなかった。
失恋など、くだらない些細なことだと思っていたけれど、無数の針で胸を貫かれたような痛みと苦しみがある。
うまく呼吸さえできない。
「あ、そうだ。いいものをあげるよ、ちょっと待ってて」
テオスバードはそう言うと、席を立った。
ややのち戻ってきた彼は、一冊の本を小脇に抱えている。
薄汚れた表紙には、卑猥な単語が書かれていた。
「まぁ、いわゆる指南書だよ。ソッチ系の。初心者向けだから、私はいらないんだ。あげるよ、ソードに」
そう言って、テオスバードはその本を強引にソードに押し付けると、「先に仕事に戻るね」と言って去って行った。
(こんなもの、もう役に立たない)
ただ純粋にミルを欲していた自分が、酷く愚かに思えた。
次は成功させるとか、次こそは気持ちよくしてやりたいとか、馬鹿みたいだ。
最初から、自分はミルに好かれてなんていなかったのに。
一人で舞い上がって、喜んで、嬉しくて。
それらの感情が嘘のように、今はただただ苦しい。
苦しいのに。
こんなときでも、会いたいと思うのはミルだった。
抱きしめたい。
愛されていないのに、愛したい……愛されたい。
(……会いたい)
ソードの手から、本が落ちてぱさりと床に転がった。
頭を抱えたソードは、一人苦しみに耐えながら、血が滲むほど唇を噛んだ。
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