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第三章 歩く死体

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 しばらくして空閑くんが連れてきたのは、激しく見覚えのある美少女だった。
 名前は田中真理亜。
 ミコ先生が副担任を、南野先生が担任を務める二年二組の学級委員長だ。
 たまに、集めたプリントなどを職員室へ持ってくる、儚いイメーイの美少女……だったんだけど。
 連れてこられた田中真理亜の目はつりあがり、空閑くんを睨んでいた。
「お兄ちゃん、また先生に迷惑かけてるのね⁉」
 そして、印象とはほど遠い、きつめの口調で空閑くんをなじる。なじられた空閑くんは、真理亜ちゃんの声など聞こえていないかのように、満面の笑みで私に言った。
「妹の、真理亜でござる」
「妹、さん? 同じ学年だったんだ」
 妹というから、てっきり一年かと思っていた。いやそれよりも、まったく似ていないし、名前も……ん? 待って、空閑くんの「空閑」って確か、下の名前だったよね。
 私は、あっ、と声をあげた。
「空閑くん……田中空閑、くん!」
「まごうことなき、双子でござるよ。そっくりでござろう?」
 まったく似てません。
 さすがにそうは言えず、そもそも二人が双子であったことを知らなかったことにも驚いて、黙り込む。
 言葉がでない私と姫島屋先生をみた真理亜ちゃんは、がっと空閑くんの向こうづねを蹴った。
「痛っ、痛いではござらんか!」
「学校では兄弟だってこと言わないでって言ったのに。ほら、先生たちも、呆然よ。っていうかもう、ほんと、神崎先生にこれ以上迷惑かけないで」
「かけてないでござ……痛っ!」
 飛び上がって脛を抑える空閑くんに、美少女は不敵に微笑んだ。
 そしてくるりと、私のほうを向く。
「お兄ちゃんが、いつもご迷惑をおかけしています」
「い、いえ、そんな」
「話は聞きました。私も、兄の見張り役としてついて行きますから安心してください」
 一体、何をどういうふうに真理亜ちゃんに話したのかわからないけれど。
 放課後、四人で沈め池へ行くことは、決定らしい。


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