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第四章 秘密の部屋
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ゲオルグが新婚のために取ってくれた休暇も終え、夫が仕事へ行くようになると、メリアは屋敷の仕事を本格的に覚え始めた。
まずは使用人たちの名前と顔、役割を覚えるところからだが、人数が少ないこともあり、これはすんなりと覚えることが出来た。
やはりメリアがもっとも難しいのは、女主人としての振る舞いだろう。
宮廷使用人として後輩や部下を持つことはあったけれど、あくまで貴族らに尽くす使用人としてのやり方しか知らない。屋敷の使用人たちは朗らかで、メリアが女主人らしくなくても気にしないだろう。
だが、客人をもてなす際に、相応しい振る舞いが出来ないようでは、ゲオルグの名に泥を塗ってしまうことになる。
「どうなさいました? 怖い顔をなさっておいでで」
ひょっこり、と身を屈めて覗き込んできた男に、メリアは驚いて飛び退いた。
そこにいたのは、古参の使用人の一人だというハマルという男だ。メリアは今日、改めてハマルの案内で屋敷を見て回っていた。
「し、失礼いたしました」
「奥様」
咄嗟の謝罪を、ゆったりとした口調で窘められる。
メリアはすぐに、口を開いて――閉じて、少し考えてから。
「ごめんなさい?」
「ふふ、奥様は謙虚なかたですね」
ハマルはそう言って、からからと笑った。
女主人として、簡単に謝罪をするものではないだろうが、自分の不義理を認めないのは、傲慢というものだ。
そう考えての返事だったけれど、不正解だったらしい。
「よいのですよ、奥様はそのままで」
ハマルは笑いをかみ殺しながら、まるで、メリアの心を読んだかのように言う。
「昨日一昨日、他の使用人が屋敷の案内役を務めたそうですが、それぞれ、奥様をとても素敵な方だと褒めていました」
「ロージンとモリエスね! とても丁寧に案内してくださったの」
ゲオルグが仕事に行くようになってから、エドワードのすすめで、毎日違う使用人に屋敷を案内してもらうことになった。
この屋敷の使用人は少数精鋭であり、担当分野が異なる。
エドワード一人が屋敷の細部を説明するよりも、各使用人に案内させたほうが、分かりやすいうえに覚えやすいだろうと考えてのことだ。
ロージンは庭師なので、庭を中心に。
モリエスは厨房担当なので、厨房は勿論、食材を搬入する手順や場所まで教えてくれた。
ハマルは朗らかに笑って頷くと、気取った仕草でそっとメリアの手を取った。
「奥様、本日は何をご所望でしょう? 俺がどこでも案内いたしますよ」
「ハマルは、確か従者長だったわね」
この屋敷には、従者の下につく下級使用人――いわゆる従僕――がいない。ゆえに、従者がもっとも地位の低い使用人となる。
だが、屋敷で暮らす主がゲオルグ一人であったこともあり、従者の雇用人数が最も多く、彼らをまとめるハマルは、かなり重宝されているという話だ。
(従者長なら、なんでも知ってそうだし。全体的に教えて、っていうのも、丸投げしてる気がする)
どうしようかな、と考えていると、ハマルがにんまりと笑った。
「では、旦那様の話でもいかがです?」
「……え?」
「じつは俺、旦那様と同郷なんですよ。ちょっと、旦那様の身内方に恩がありまして、こうしてよい職を斡旋してくださったんです。まぁ、コネというやつですね」
「それなら、旦那様はとてもよい方を紹介して頂いたのね。ハマルが優秀なのは、ひと目でわかることだもの」
ハマルの言動は気楽の一言につきる軽いものだが、彼が微笑むときや、手をあげるとき、大袈裟に肩を竦めてみせる仕草など、一つ一つが計算されていることがわかる。
相手が望む態度を求められる使用人として、かなり質が高い人材といえるだろう。
ハマルは、軽く目を見張ったあと、苦笑をこぼした。
「奥様は、元宮廷使用人でしたね。では尚更、屋敷に関しては左程お話することはありません。ここは一つ、親睦を深めるためにも、ゆったりとティータイムでもいかがです?」
ハマルの瞳に、気遣いの色が見える。
そして、メリアがそのことに気づいたことに、ハマルも気づいたようだ。ハマルは肩をすくめて、「ややぼうっとしておられるようなので、休憩も必要かと」と付け足した。
メリアは、ありがとうと頷いた。
庭に机と椅子、パラソルが手際よく用意されていく様を眺めていると、使用人たちが心無しが嬉しそうにみえた。紅茶を用意するモナに至っては、満面の笑みだ。
「一応ね、必要だから一式は揃えてあるんですよ。ですが旦那様はあのような方なので、庭でティータイムなどしたことがないんです。彼ら、用意するのが嬉しいのでしょう」
「働き者なのね」
これまでやっていなかった仕事を求めたのに、使用人たちが生き生きと働いてくれるなど、普通ならばありえない。
粛々と準備されたティータイムに、メリアは用意してくれた皆にお礼を言って、椅子についた。
紅茶の香りを堪能して、ジャムを入れてスプーンで混ぜてから、一口飲む。
「美味しい!」
「それは何より」
ハマルは、メリアの斜め前に立っている。
彼の前にも、申し訳程度に紅茶が置いてあるが、ジャムやスプーンはなかった。ついでに椅子もない。
「……ハマルも座らないの?」
「俺は、使用人ですから」
メリアは頷く。彼の立場もわかるからだ。
そのあとは、何気ない話をした。ハマルは自分が初めて王都へ来て驚いたことなどを、面白おかしく話してくれて、メリアも自然と笑みがこぼれた。
話が、王都でゲオルグと再会した内容になったとき、メリアは無意識に視線をそらしてしまう。笑みも若干、強張っただろう。
「奥様、何か失礼なことでも申し上げましたか」
「えっ、いえ……なんでもないの」
「さようでございますか。……何か不安がございましたら、いつでも話してくださいね。旦那様は、女心の分からぬ方ですので」
ハマルの言葉に、頬を緩めた。
ゲオルグの女嫌いが、実家の女所帯から来ていると知り、その頃のゲオルグをハマルが知っていると思うと、なんだかおかしくなったのだ。
メリアは、雰囲気に流されたといえる。
何より、相談相手もおらず、一人で抱え込んできたことで精神的にも疲弊していたのだ。だから、つい、抱えていた悩みが口を出てしまった。
「私、閣下に愛していると言われて、有頂天になっていたんです」
ゲオルグを、旦那様ではなく閣下と呼んだことに気づいたハマルは、片眉をあげた。
「それは……よろしいのでは?」
「でも、閣下が本当に愛している方が、別にいるんだと知ってしまって」
「へ?」
「馬鹿です、私。凄く悲しくて辛くて泣いてしまったんですよ。元々、閣下と釣り合うはずのない私を妻にしてくださったことに、感謝しなくちゃいけないのに」
バルバロッサが来たあの日、悲しくて泣いて、ゲオルグに気を遣わせてしまった。
その夜、身体が強張って夫婦の営みを行えず、妻としての役割そのものを担えなかったのだ。
あれから、ゲオルグはメリアに触れてこない。いや、触れるだけの口づけはくれるし、軽く抱きしめてもくれる。
けれど、男女の睦事と呼べるものはなくなってしまった。
このまま、ゲオルグの傍にさえ居られなくなるのは辛い。
妻として――女主人として、そしてゲオルグの世継ぎを産むという大役をこなすためにも――もっと、頑張らなくては。
「私、閣下の奥方として恥じないよう、精一杯努めてまいりますね」
ハマルは、何とも言えない奇妙な顔をしていた。
元々、三枚目な顔立ちではあるが、メリアを笑わそうとしているかのように、眉に力をこめて顔を顰めている。
「……ハマル?」
「ええっと。旦那様が、そうおっしゃったんですか? その、他に好きな方がいると」
メリアは、目を瞬いた。
本人からは聞いていない。けれど、バルバロッサに問われたときに応えなかったことこそ、ゲオルグが他に愛している人のいる証拠ではないのか。
「正直なところ、奥様が旦那様を金づるだとお考えになるのなら、納得できますが」
「えっ、まっ」
「ええ、奥様がそのような方でないのは承知しております。まぁ、つまり、それだけ奥様が魅力的であり、旦那様が男としてポンコツだということです」
メリアは返事に窮した。
魅力的という部分を否定するべきか、それとも先に、ゲオルグがポンコツではないと言うべきか。
悩んでいるうちに、ハマルは続けた。
「ポンコツゆえに誤解されやすい方ですが、こと色恋においては特にポンコツさが発揮されます。軍師とか鼻で笑ってしまうくらいの酷さです」
「ハ、ハマル?」
「ですので、他の方を愛しながら奥様を妻にするなんて器用な真似、出来るとは思えないんですよね」
はっ、とメリアは顔をあげる。
「奥様、旦那様自身がおっしゃったのは、奥様を愛していることのみですね」
「……ええ」
「でしたら、旦那様に直接尋ねてみてはいかがでしょう?」
「それは」
ハマルは、ふと笑みを浮かべた。
「奥様は、本当に旦那様を愛しておられるんですね。今後どのようになさるか決めるのは奥様自身です。……旦那様は決して、奥様を苦しめる真似はされますまい」
メリアは、苦笑した。
ハマルの言うことは正しい。ゲオルグの本命がミーティアだとしても、彼が優しいことやメリアが妻であることは変わらないのだ。
挙式前、愛していると言って下さったとき、メリアは彼の本心だと確信したはずだった。
(本人に確かめてみよう)
一人で考えてばかりいるから、よくない方向へ考えが向かってしまうのだ。
メリアは、大切なものがこぼれてしまう瞬間を二度と味わいたくない。両親がこの世を去ってしまったときのように。
ゲオルグのことも、最初から両想いではなかったと思えば傷つかなくてすむという自己防衛本能に流されて、ゲオルグを信じることを放棄してしまった。
その事実こそ、妻として夫を信じ切れていない証拠ではないか。
メリアは、ハマルにお礼を言って、早速今夜に聞いてみようと決めた。
けれどその日、ゲオルグは仕事が忙しく、帰宅することはなかった。
翌々日には帰宅したが、メリアが眠ったあと帰宅し、起きる前に仕事へ行ったという。
こうして顔を合わせることがないまま、数日が過ぎた。
メリアが起きているうちにゲオルグが帰宅したのは、さらに三日が過ぎたころだった。
夕食や就寝前の準備を終えて、いざベッドへもぐりこんだときに、帰宅したのだ。
慌てて出迎えに向かったメリアは、顔色の悪いゲオルグを見て悲鳴をあげそうになった。
かなり仕事が忙しいのだろうか。
「お、おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
ゲオルグは頬を緩めると、メリアの頭をぽんと撫でて自室へ向かった。
メリアが先に寝室のベッドで待っていると、着替えを済ませてゲオルグに抱きしめられる。
「なかなか、時間が取れずにすまないな。辛い思いをしていないか?」
「皆よくしてくれます。お忙しいようなので、旦那様のお身体が心配です」
「心配、か。……結婚というのも、よいものだな」
ゲオルグに抱きしめられたままベッドに横になり、布団をかぶる。
メリアは、次こそ訪ねようと思っていたミーティアの件を聞くのを諦めた。今日でなくてもいいだろう。ゲオルグが疲労困憊のときに、彼を煩わせる必要はない。
(もう少し、余裕が出来た時に……聞こう)
暫く会話も出来ていなかったゲオルグが、傍に居て抱きしめてくれている。
それだけでメリアは、涙が溢れそうになるほどに幸せだった。
メリアが目を覚ましたのは、物音でだったのか、ぬくもりが去ったからなのか、たまたまなのか、わからない。
ふっと目を覚ましたメリアは、ほぼ同時にパタンとドアが閉まる音を聞いた。
「旦那、様?」
隣にいたはずのゲオルグがいない。
メリアが身体を起こすと、書斎から物音がした。引き出しを開く音だ。衣装棚ではない、もっと小さな――おそらく、机の引き出しだろう。
規則正しいゲオルグの足音が、書斎側のドアの向こうに消えたのを知り、メリアはとっさにベッドから抜け出した。
きっとすぐに仕事に向かわれるのだろう、せめて、一言だけでも挨拶をしたい。
昨夜、ゲオルグは「結婚もいいものだ」と言ってくれた。屋敷で帰りを待っていると、そう伝えたかった。
けれど。
廊下に出たメリアが見たのは、三階の階段を昇っていくゲオルグの後姿だった。
すぐに見えなくなったが、あれは仕事着姿のゲオルグに間違いない。
(でも、どうして三階へ?)
メリアは、そろりと三階へ向かった。
三階は倉庫になっている部屋が多く、生活に必要なのは二階までだと説明を受けた。使用人たちに屋敷を案内してもらうときも、屋敷の二階までと、庭園と、使用人専用の住居の庭が範囲であって、屋敷の三階へは誰も行かなかったのだ。
メリアは妙な胸騒ぎを覚えて、急いで追いかけた。
突き当りの部屋のドアが微かに空いており、重い蝶番が開いている。
ゲオルグが、入ってはいけないといった部屋だ。
あのときは、危険な物や情報漏洩を防ぐためかと思ったが、よく考えなくても、自らの屋敷にそのようなものを置くはずがない。
つまり、ゲオルグ個人の何かがあの部屋にあるのだ。
夜着の裾を握り締めて、唇を噛む。
部屋のなかが気にならないわけではない。けれど、ゲオルグに入るなと言われたのだから、入ってはいけない。
(でも、部屋の外から呼びかけるくらいなら)
おはようございます、と、それだけ言えばいい。
メリアはそっと突き当りの部屋の前に立つ。
強く裾を握り込んで、口を開いた――その瞬間。
バサバサッ、と床に紙の束のようなものが散らばる音がして、メリアはきっかけを逃してしまう。今度こそ、ともう一度ドアに近づいた。
「……え?」
ドアの隙間から、あるはずのないものが見えた気がした。
ほとんど咄嗟に目を凝らす。
(どうして、あれがここに?)
樫の木で作られた立派な机の上に、蓮の花を模った金色のブローチがある。
立体感のある花は、金粉を張った薄い鉄を組み合わせて作られたもので、名のある職人が手造りしたものだと聞いていた。
メリアの記憶が、束の間、過去へ戻る。
ミーティアが、ちょっとしたおめかしをするときにつけていた、金色の蓮のブローチを、メリアはとても気に入っていた。見かけるたびに褒めたものだから、メリアが欲しがっているとすぐにバレてしまい、ミーティアに言われたのだ。
『このブローチはあげることができないんだよ。とても大切な方に頂いたもので、この世に一つしかないんだ。メリア、ごめんね』
特注品だというそのブローチは、ミーティアが持っていた物以外には存在しないはず。
なのになぜ、それがここにあるのか。
(母さんが大切にしてたブローチ、そういえば、どこに行ったんだっけ)
事故のあとは慌ただしくて、ミーティアが時折つけていたブローチの存在など、今の今まで忘れていた。
ある予感が過った。
もしかしてこれは、ミーティアの遺品なのではないか。
部屋に鍵をかけてまで保管するほどに、大切にしているなんて――。
そのあとは、どうやって寝室へ戻ったのかわからない。ベッドにもぐりこんで、声を押し殺して泣いた。
信じようと思った。
けれど、ゲオルグがミーティアを想っていると示している状況をこれだけ見てしまえば、信じ続けるには無理がある。
ふと、書斎で物音がして、ややのち、ゆっくりと寝室のドアが開いた。
ゲオルグは足音を立てないようにメリアに近づくと、優しい手つきでメリアの頭を撫で、髪をひと房取った。感覚で、口づけを受けているのがわかる。
ゲオルグはすぐに、去って行った。
(私の髪に、よく触れてくださる……頭を、撫でてくださる)
ずっと、それが嬉しかった。
けれどメリアの髪は、ミーティアと同じ色。
父親似のメリアが、唯一、ミーティアから引き継いだものだった。
まずは使用人たちの名前と顔、役割を覚えるところからだが、人数が少ないこともあり、これはすんなりと覚えることが出来た。
やはりメリアがもっとも難しいのは、女主人としての振る舞いだろう。
宮廷使用人として後輩や部下を持つことはあったけれど、あくまで貴族らに尽くす使用人としてのやり方しか知らない。屋敷の使用人たちは朗らかで、メリアが女主人らしくなくても気にしないだろう。
だが、客人をもてなす際に、相応しい振る舞いが出来ないようでは、ゲオルグの名に泥を塗ってしまうことになる。
「どうなさいました? 怖い顔をなさっておいでで」
ひょっこり、と身を屈めて覗き込んできた男に、メリアは驚いて飛び退いた。
そこにいたのは、古参の使用人の一人だというハマルという男だ。メリアは今日、改めてハマルの案内で屋敷を見て回っていた。
「し、失礼いたしました」
「奥様」
咄嗟の謝罪を、ゆったりとした口調で窘められる。
メリアはすぐに、口を開いて――閉じて、少し考えてから。
「ごめんなさい?」
「ふふ、奥様は謙虚なかたですね」
ハマルはそう言って、からからと笑った。
女主人として、簡単に謝罪をするものではないだろうが、自分の不義理を認めないのは、傲慢というものだ。
そう考えての返事だったけれど、不正解だったらしい。
「よいのですよ、奥様はそのままで」
ハマルは笑いをかみ殺しながら、まるで、メリアの心を読んだかのように言う。
「昨日一昨日、他の使用人が屋敷の案内役を務めたそうですが、それぞれ、奥様をとても素敵な方だと褒めていました」
「ロージンとモリエスね! とても丁寧に案内してくださったの」
ゲオルグが仕事に行くようになってから、エドワードのすすめで、毎日違う使用人に屋敷を案内してもらうことになった。
この屋敷の使用人は少数精鋭であり、担当分野が異なる。
エドワード一人が屋敷の細部を説明するよりも、各使用人に案内させたほうが、分かりやすいうえに覚えやすいだろうと考えてのことだ。
ロージンは庭師なので、庭を中心に。
モリエスは厨房担当なので、厨房は勿論、食材を搬入する手順や場所まで教えてくれた。
ハマルは朗らかに笑って頷くと、気取った仕草でそっとメリアの手を取った。
「奥様、本日は何をご所望でしょう? 俺がどこでも案内いたしますよ」
「ハマルは、確か従者長だったわね」
この屋敷には、従者の下につく下級使用人――いわゆる従僕――がいない。ゆえに、従者がもっとも地位の低い使用人となる。
だが、屋敷で暮らす主がゲオルグ一人であったこともあり、従者の雇用人数が最も多く、彼らをまとめるハマルは、かなり重宝されているという話だ。
(従者長なら、なんでも知ってそうだし。全体的に教えて、っていうのも、丸投げしてる気がする)
どうしようかな、と考えていると、ハマルがにんまりと笑った。
「では、旦那様の話でもいかがです?」
「……え?」
「じつは俺、旦那様と同郷なんですよ。ちょっと、旦那様の身内方に恩がありまして、こうしてよい職を斡旋してくださったんです。まぁ、コネというやつですね」
「それなら、旦那様はとてもよい方を紹介して頂いたのね。ハマルが優秀なのは、ひと目でわかることだもの」
ハマルの言動は気楽の一言につきる軽いものだが、彼が微笑むときや、手をあげるとき、大袈裟に肩を竦めてみせる仕草など、一つ一つが計算されていることがわかる。
相手が望む態度を求められる使用人として、かなり質が高い人材といえるだろう。
ハマルは、軽く目を見張ったあと、苦笑をこぼした。
「奥様は、元宮廷使用人でしたね。では尚更、屋敷に関しては左程お話することはありません。ここは一つ、親睦を深めるためにも、ゆったりとティータイムでもいかがです?」
ハマルの瞳に、気遣いの色が見える。
そして、メリアがそのことに気づいたことに、ハマルも気づいたようだ。ハマルは肩をすくめて、「ややぼうっとしておられるようなので、休憩も必要かと」と付け足した。
メリアは、ありがとうと頷いた。
庭に机と椅子、パラソルが手際よく用意されていく様を眺めていると、使用人たちが心無しが嬉しそうにみえた。紅茶を用意するモナに至っては、満面の笑みだ。
「一応ね、必要だから一式は揃えてあるんですよ。ですが旦那様はあのような方なので、庭でティータイムなどしたことがないんです。彼ら、用意するのが嬉しいのでしょう」
「働き者なのね」
これまでやっていなかった仕事を求めたのに、使用人たちが生き生きと働いてくれるなど、普通ならばありえない。
粛々と準備されたティータイムに、メリアは用意してくれた皆にお礼を言って、椅子についた。
紅茶の香りを堪能して、ジャムを入れてスプーンで混ぜてから、一口飲む。
「美味しい!」
「それは何より」
ハマルは、メリアの斜め前に立っている。
彼の前にも、申し訳程度に紅茶が置いてあるが、ジャムやスプーンはなかった。ついでに椅子もない。
「……ハマルも座らないの?」
「俺は、使用人ですから」
メリアは頷く。彼の立場もわかるからだ。
そのあとは、何気ない話をした。ハマルは自分が初めて王都へ来て驚いたことなどを、面白おかしく話してくれて、メリアも自然と笑みがこぼれた。
話が、王都でゲオルグと再会した内容になったとき、メリアは無意識に視線をそらしてしまう。笑みも若干、強張っただろう。
「奥様、何か失礼なことでも申し上げましたか」
「えっ、いえ……なんでもないの」
「さようでございますか。……何か不安がございましたら、いつでも話してくださいね。旦那様は、女心の分からぬ方ですので」
ハマルの言葉に、頬を緩めた。
ゲオルグの女嫌いが、実家の女所帯から来ていると知り、その頃のゲオルグをハマルが知っていると思うと、なんだかおかしくなったのだ。
メリアは、雰囲気に流されたといえる。
何より、相談相手もおらず、一人で抱え込んできたことで精神的にも疲弊していたのだ。だから、つい、抱えていた悩みが口を出てしまった。
「私、閣下に愛していると言われて、有頂天になっていたんです」
ゲオルグを、旦那様ではなく閣下と呼んだことに気づいたハマルは、片眉をあげた。
「それは……よろしいのでは?」
「でも、閣下が本当に愛している方が、別にいるんだと知ってしまって」
「へ?」
「馬鹿です、私。凄く悲しくて辛くて泣いてしまったんですよ。元々、閣下と釣り合うはずのない私を妻にしてくださったことに、感謝しなくちゃいけないのに」
バルバロッサが来たあの日、悲しくて泣いて、ゲオルグに気を遣わせてしまった。
その夜、身体が強張って夫婦の営みを行えず、妻としての役割そのものを担えなかったのだ。
あれから、ゲオルグはメリアに触れてこない。いや、触れるだけの口づけはくれるし、軽く抱きしめてもくれる。
けれど、男女の睦事と呼べるものはなくなってしまった。
このまま、ゲオルグの傍にさえ居られなくなるのは辛い。
妻として――女主人として、そしてゲオルグの世継ぎを産むという大役をこなすためにも――もっと、頑張らなくては。
「私、閣下の奥方として恥じないよう、精一杯努めてまいりますね」
ハマルは、何とも言えない奇妙な顔をしていた。
元々、三枚目な顔立ちではあるが、メリアを笑わそうとしているかのように、眉に力をこめて顔を顰めている。
「……ハマル?」
「ええっと。旦那様が、そうおっしゃったんですか? その、他に好きな方がいると」
メリアは、目を瞬いた。
本人からは聞いていない。けれど、バルバロッサに問われたときに応えなかったことこそ、ゲオルグが他に愛している人のいる証拠ではないのか。
「正直なところ、奥様が旦那様を金づるだとお考えになるのなら、納得できますが」
「えっ、まっ」
「ええ、奥様がそのような方でないのは承知しております。まぁ、つまり、それだけ奥様が魅力的であり、旦那様が男としてポンコツだということです」
メリアは返事に窮した。
魅力的という部分を否定するべきか、それとも先に、ゲオルグがポンコツではないと言うべきか。
悩んでいるうちに、ハマルは続けた。
「ポンコツゆえに誤解されやすい方ですが、こと色恋においては特にポンコツさが発揮されます。軍師とか鼻で笑ってしまうくらいの酷さです」
「ハ、ハマル?」
「ですので、他の方を愛しながら奥様を妻にするなんて器用な真似、出来るとは思えないんですよね」
はっ、とメリアは顔をあげる。
「奥様、旦那様自身がおっしゃったのは、奥様を愛していることのみですね」
「……ええ」
「でしたら、旦那様に直接尋ねてみてはいかがでしょう?」
「それは」
ハマルは、ふと笑みを浮かべた。
「奥様は、本当に旦那様を愛しておられるんですね。今後どのようになさるか決めるのは奥様自身です。……旦那様は決して、奥様を苦しめる真似はされますまい」
メリアは、苦笑した。
ハマルの言うことは正しい。ゲオルグの本命がミーティアだとしても、彼が優しいことやメリアが妻であることは変わらないのだ。
挙式前、愛していると言って下さったとき、メリアは彼の本心だと確信したはずだった。
(本人に確かめてみよう)
一人で考えてばかりいるから、よくない方向へ考えが向かってしまうのだ。
メリアは、大切なものがこぼれてしまう瞬間を二度と味わいたくない。両親がこの世を去ってしまったときのように。
ゲオルグのことも、最初から両想いではなかったと思えば傷つかなくてすむという自己防衛本能に流されて、ゲオルグを信じることを放棄してしまった。
その事実こそ、妻として夫を信じ切れていない証拠ではないか。
メリアは、ハマルにお礼を言って、早速今夜に聞いてみようと決めた。
けれどその日、ゲオルグは仕事が忙しく、帰宅することはなかった。
翌々日には帰宅したが、メリアが眠ったあと帰宅し、起きる前に仕事へ行ったという。
こうして顔を合わせることがないまま、数日が過ぎた。
メリアが起きているうちにゲオルグが帰宅したのは、さらに三日が過ぎたころだった。
夕食や就寝前の準備を終えて、いざベッドへもぐりこんだときに、帰宅したのだ。
慌てて出迎えに向かったメリアは、顔色の悪いゲオルグを見て悲鳴をあげそうになった。
かなり仕事が忙しいのだろうか。
「お、おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
ゲオルグは頬を緩めると、メリアの頭をぽんと撫でて自室へ向かった。
メリアが先に寝室のベッドで待っていると、着替えを済ませてゲオルグに抱きしめられる。
「なかなか、時間が取れずにすまないな。辛い思いをしていないか?」
「皆よくしてくれます。お忙しいようなので、旦那様のお身体が心配です」
「心配、か。……結婚というのも、よいものだな」
ゲオルグに抱きしめられたままベッドに横になり、布団をかぶる。
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(もう少し、余裕が出来た時に……聞こう)
暫く会話も出来ていなかったゲオルグが、傍に居て抱きしめてくれている。
それだけでメリアは、涙が溢れそうになるほどに幸せだった。
メリアが目を覚ましたのは、物音でだったのか、ぬくもりが去ったからなのか、たまたまなのか、わからない。
ふっと目を覚ましたメリアは、ほぼ同時にパタンとドアが閉まる音を聞いた。
「旦那、様?」
隣にいたはずのゲオルグがいない。
メリアが身体を起こすと、書斎から物音がした。引き出しを開く音だ。衣装棚ではない、もっと小さな――おそらく、机の引き出しだろう。
規則正しいゲオルグの足音が、書斎側のドアの向こうに消えたのを知り、メリアはとっさにベッドから抜け出した。
きっとすぐに仕事に向かわれるのだろう、せめて、一言だけでも挨拶をしたい。
昨夜、ゲオルグは「結婚もいいものだ」と言ってくれた。屋敷で帰りを待っていると、そう伝えたかった。
けれど。
廊下に出たメリアが見たのは、三階の階段を昇っていくゲオルグの後姿だった。
すぐに見えなくなったが、あれは仕事着姿のゲオルグに間違いない。
(でも、どうして三階へ?)
メリアは、そろりと三階へ向かった。
三階は倉庫になっている部屋が多く、生活に必要なのは二階までだと説明を受けた。使用人たちに屋敷を案内してもらうときも、屋敷の二階までと、庭園と、使用人専用の住居の庭が範囲であって、屋敷の三階へは誰も行かなかったのだ。
メリアは妙な胸騒ぎを覚えて、急いで追いかけた。
突き当りの部屋のドアが微かに空いており、重い蝶番が開いている。
ゲオルグが、入ってはいけないといった部屋だ。
あのときは、危険な物や情報漏洩を防ぐためかと思ったが、よく考えなくても、自らの屋敷にそのようなものを置くはずがない。
つまり、ゲオルグ個人の何かがあの部屋にあるのだ。
夜着の裾を握り締めて、唇を噛む。
部屋のなかが気にならないわけではない。けれど、ゲオルグに入るなと言われたのだから、入ってはいけない。
(でも、部屋の外から呼びかけるくらいなら)
おはようございます、と、それだけ言えばいい。
メリアはそっと突き当りの部屋の前に立つ。
強く裾を握り込んで、口を開いた――その瞬間。
バサバサッ、と床に紙の束のようなものが散らばる音がして、メリアはきっかけを逃してしまう。今度こそ、ともう一度ドアに近づいた。
「……え?」
ドアの隙間から、あるはずのないものが見えた気がした。
ほとんど咄嗟に目を凝らす。
(どうして、あれがここに?)
樫の木で作られた立派な机の上に、蓮の花を模った金色のブローチがある。
立体感のある花は、金粉を張った薄い鉄を組み合わせて作られたもので、名のある職人が手造りしたものだと聞いていた。
メリアの記憶が、束の間、過去へ戻る。
ミーティアが、ちょっとしたおめかしをするときにつけていた、金色の蓮のブローチを、メリアはとても気に入っていた。見かけるたびに褒めたものだから、メリアが欲しがっているとすぐにバレてしまい、ミーティアに言われたのだ。
『このブローチはあげることができないんだよ。とても大切な方に頂いたもので、この世に一つしかないんだ。メリア、ごめんね』
特注品だというそのブローチは、ミーティアが持っていた物以外には存在しないはず。
なのになぜ、それがここにあるのか。
(母さんが大切にしてたブローチ、そういえば、どこに行ったんだっけ)
事故のあとは慌ただしくて、ミーティアが時折つけていたブローチの存在など、今の今まで忘れていた。
ある予感が過った。
もしかしてこれは、ミーティアの遺品なのではないか。
部屋に鍵をかけてまで保管するほどに、大切にしているなんて――。
そのあとは、どうやって寝室へ戻ったのかわからない。ベッドにもぐりこんで、声を押し殺して泣いた。
信じようと思った。
けれど、ゲオルグがミーティアを想っていると示している状況をこれだけ見てしまえば、信じ続けるには無理がある。
ふと、書斎で物音がして、ややのち、ゆっくりと寝室のドアが開いた。
ゲオルグは足音を立てないようにメリアに近づくと、優しい手つきでメリアの頭を撫で、髪をひと房取った。感覚で、口づけを受けているのがわかる。
ゲオルグはすぐに、去って行った。
(私の髪に、よく触れてくださる……頭を、撫でてくださる)
ずっと、それが嬉しかった。
けれどメリアの髪は、ミーティアと同じ色。
父親似のメリアが、唯一、ミーティアから引き継いだものだった。
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ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
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