上 下
95 / 128
第三章 2、須藤先生は、我儘だ 

6、

しおりを挟む
「なんだ、メールを送っていたのか」
「……はい」
「ならば、そう言え。てっきり、ナンパされてついて行ったのかと思っただろう」
「私をナンパする人なんていませんよ」
「世の中には、きみのようなゲテモノを好む者がいるかもしれない。変わり者には変わり者が寄ってくるからな、ほいほいついていくと攫われるぞ」
 それはどういう意味だ、と問いただしたいのを、ぐっとこらえた。
「……よく考えれば、きみには恋人がいるんだったな」
「へい?」
 緊張感からのギャップが原因だろう。予想外過ぎたせいで、出すつもりのなかった声音と言葉が飛び出た。
 とっさに先生を見ると、サンドイッチをもごもごと食べている。ゆっくりと嚥下して、お茶で流し込む姿を眺めた。
「私、恋人出来たんですか?」
「隠すな。昨日の友人からのプレゼント、あれを見て気づかないわけがない」
「あれ、って。ああ」
 ごそごそと財布を取り出して、みこちゃんがくれた避妊具を取り出した。
「これですね」
「いちいち見せなくていい」
「えへへ、みこちゃんから貰ったんですもん。嬉しくて、見せびらかしたいんです」
 先生は、ふと、困ったように笑った。
 そのまま黙り込んだので、軽く首をかしげる。
「あの、なんで私に恋人ができたって思うんですか?」
「きみの話から察するに、きみとみこちゃんとやらは仲がよさそうだ。鋭いきみがそれだけ言うのだから、よほど真っ当な子なのだろう。つまり、嫌がらせでコンドームをプレゼントした、という線は外れる」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

護国神社の隣にある本屋はあやかし書店

井藤 美樹
キャラ文芸
【第四回キャラ文芸大賞 激励賞頂きました。ありがとうございますm(_ _)m】  真っ白なお城の隣にある護国神社と、小さな商店街を繋ぐ裏道から少し外れた場所に、一軒の小さな本屋があった。  今時珍しい木造の建物で、古本屋をちょっと大きくしたような、こじんまりとした本屋だ。  売り上げよりも、趣味で開けているような、そんな感じの本屋。  本屋の名前は【神楽書店】  その本屋には、何故か昔から色んな種類の本が集まってくる。普通の小説から、曰く付きの本まで。色々だ。  さぁ、今日も一冊の本が持ち込まれた。  十九歳になったばかりの神谷裕樹が、見えない相棒と居候している付喪神と共に、本に秘められた様々な想いに触れながら成長し、悪戦苦闘しながらも、頑張って本屋を切り盛りしていく物語。

推理小説家の今日の献立

東 万里央(あずま まりお)
キャラ文芸
永夢(えむ 24)は子どもっぽいことがコンプレックスの、出版社青雲館の小説編集者二年目。ある日大学時代から三年付き合った恋人・悠人に自然消滅を狙った形で振られてしまう。 その後悠人に新たな恋人ができたと知り、傷付いてバーで慣れない酒を飲んでいたのだが、途中質の悪い男にナンパされ絡まれた。危ういところを助けてくれたのは、なんと偶然同じバーで飲んでいた、担当の小説家・湊(みなと 34)。湊は嘔吐し、足取りの覚束ない永夢を連れ帰り、世話してくれた上にベッドに寝かせてくれた。 翌朝、永夢はいい香りで目が覚める。昨夜のことを思い出し、とんでもないことをしたと青ざめるのだが、香りに誘われそろそろとキッチンに向かう。そこでは湊が手作りの豚汁を温め、炊きたてのご飯をよそっていて? 「ちょうどよかった。朝食です。一度誰かに味見してもらいたかったんです」 ある理由から「普通に美味しいご飯」を作って食べたいイケメン小説家と、私生活ポンコツ女性編集者のほのぼのおうちご飯日記&時々恋愛。 .。*゚+.*.。 献立表 ゚+..。*゚+ 第一話『豚汁』 第二話『小鮎の天ぷらと二種のかき揚げ』 第三話『みんな大好きなお弁当』 第四話『餡かけチャーハンと焼き餃子』 第五話『コンソメ仕立てのロールキャベツ』

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

女だけど生活のために男装して陰陽師してますー続・只今、陰陽師修行中!ー

イトカワジンカイ
ホラー
「妖の調伏には因果と真名が必要」 時は平安。 養父である叔父の家の跡取りとして養子となり男装をして暮らしていた少女―暁。 散財癖のある叔父の代わりに生活を支えるため、女であることを隠したまま陰陽師見習いとして陰陽寮で働くことになる。 働き始めてしばらくたったある日、暁にの元にある事件が舞い込む。 人体自然発火焼死事件― 発見されたのは身元不明の焼死体。不思議なことに体は身元が分からないほど黒く焼けているのに 着衣は全く燃えていないというものだった。 この事件を解決するよう命が下り事件解決のため動き出す暁。 この怪異は妖の仕業か…それとも人為的なものか… 妖が生まれる心の因果を暁の推理と陰陽師の力で紐解いていく。 ※「女だけど男装して陰陽師してます!―只今、陰陽師修行中‼―」 (https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/892377141) の第2弾となります。 ※単品でも楽しんでいただけますが、お時間と興味がありましたら第1作も読んでいただけると嬉しいです ※ノベルアップ+でも掲載しています ※表紙イラスト:雨神あきら様

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

女ハッカーのコードネームは @takashi

一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか? その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。 守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。

インキュバスさんの8畳ワンルーム甘やかしごはん

夕日(夕日凪)
キャラ文芸
嶺井琴子、二十四歳は小さな印刷会社に勤める会社員である。 仕事疲れの日々を送っていたある日、琴子の夢の中に女性の『精気』を食べて生きる悪魔、 『インキュバス』を名乗る絶世の美貌の青年が現れた。 彼が琴子を見て口にした言葉は…… 「うわ。この子、精気も体力も枯れっ枯れだ」 その日からインキュバスのエルゥは、琴子の八畳ワンルームを訪れるようになった。 ただ美味しいご飯で、彼女を甘やかすためだけに。 世話焼きインキュバスとお疲れ女子のほのぼのだったり、時々シリアスだったりのラブコメディ。 ストックが尽きるまで1日1~2話更新です。10万文字前後で完結予定。

処理中です...