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第一章 4、須藤先生は、たまに良いことを言う

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 今日も、簡単な掃除と洗濯、夕食づくりをすませる。最近は手際もよくなってきて、いかに快適に、尚且つわかりやすい生活を営めるかを考えながら、あちこちに手をつけていた。この家具は邪魔だからずらす、とか、ゴミ箱が目立たない場所にあるからゴミをその辺に捨てているのだ、とか、利便性を強く押し出す計画を思いつきで実行中だった。
「おーい、暇になったか?」
 先生が作業場から顔をのぞかせた。
 私は、余った時間で持ち込んだ茶菓子を食べようと湯を沸かしていた。
「何かやることがありますか?」
「手伝ってほしい作業がある」
 作業。
 それは、アクセサリー作りなどに関わることだろうか。
「わかりました」
 先生について作業場へ足を踏み入れた。休憩室と作業場はひと続きの部屋なので、壁がない。けれど、私と先生の間には見えない壁があって、バイト中に関わることはほどんとない。こうして先生が私を作業場に招くことは、かなり珍しかった。
「これだ。研磨を知っているか」
「磨くことですか」
「そうだ。レジンの研磨を覚えてほしい。かなり根気のいる作業だから、手伝ってもらえると助かる」
 目の前には、数種類のサンドペーパーと研磨専用のスポンジ、水の張った桶、金具のやすり、そして軍手があった。
 先生は、くすんだビー玉がごろごろと入った箱(何かの菓子箱の蓋だろうか)を、私の前に置いた。促されるまま座ると、隣に腰を下ろした先生が、ビー玉を一つ手に取る。
「ここにあるのは、作りたての球体だ。レジンで出来ている」
「曇ってますね」
「ああ。鏡面仕上げではないんだ。あえてそうしてるんだが、先に研磨について説明しておく。荒いサンドペーパーで削り、滑らかになってきたら次に荒いペーパーで削る。その繰り返しだ。耐水ペーパーだから、水のなかでやってもらっても構わない。最終的に、こんな風になるはずだ」
 ことん、とポケットから「最終的」だというビー玉が現れた。その表面は滑らかでつるつるとしており、きれいな球体になっている。
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