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第106話 モノホンの方1

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「お兄ちゃんは私を攫う予定なんだからダメ―!!」
「「「「 !? 」」」」


立ち上がったソフィちゃんは俺の腰に抱き着きとんでもない事を口走る。


「パンツゥ!!ソフィを攫う予定ってどーゆー事よ!!」
「パンツ君?どーゆー事かな?」
「おい!パンツ兄ちゃん!!どーゆー事だぁ!!返答次第では……命貰うぜぇ!!」


コフィさんとステフおっさんのこめかみに怒りマークが浮き出ている。
誤解だ!!全くの誤解なんだ!!
これ以上、話をややこしくしないでくれ!
……それに攫う予定?って何だ?

………。
………………。
あーあれか。
ソフィちゃんがパンツ(見せパン)見せた時に注意した際に言った事を真に受けてるのか?


俺の腰に抱き着き涙目のソフィちゃん。
俺の胸ぐらを掴み左右からガクガクと揺さぶるアイルとステフおっさんの逞しい腕。両サイドからめっちゃ首絞めらて……。
死なない筈なのに死にそうなんですが……ぐ、ぐるじいぃ……。

その後ろでにこやかに笑っているコフィさん。
しかしその眼は笑っておらず静かな殺気が溢れ出している。
そしてこんな事になったそもそもの原因を作った紫髪のお姉さんは……
我、関せずと角兎ホーンラビットのシチューを食べ続けている。

おい!!


「ちょちょちょーっと!皆!落ち着いて!一旦俺から離れてー!!」


俺に取り付いている者どもを剥ぎ取り、この混乱を生み出した張本人に歩み寄る。


「ちょっと!あなた誰なんですか!?いきなり俺と結婚しようなんて!俺を知ってるんですか!?」

…………。
…………………。

「………?は?何を言ってるんだい?あんた?」
「え?何を言ってって………今、ついさっき俺に……おれ……ぼ、ぼくに、ぷぷろ、プロポーズを……したじゃな、ないですかぁ……。」
「何、モジモジしてんの?パンツ。」


綺麗なお姉さんからいきなりプロポーズなんて……思いだしたら恥ずかしくなって来た。
アイルの冷たい視線が痛い。


「あたし、あんたにプロポーズした訳じゃないよ?」
「「え?」」


その言葉に俺とアイルは声を上げる。


「私は、こっちの可愛らしいお嬢ちゃんと結婚させてくれって言ったんだよ?」
「「え?」」

…………。
…………………。
ふーん。
…………えーっと
……………この人……………モノホンの変態さんの方だわ。


その言葉に俺とアイルは声を上げる。
女性同士ならまだギリ分からなくもないが、幼女のソフィちゃんに結婚を申し込むとか、男女関係なくOUTですね。
うん。アウチです。


「あんたと隣りの亜人さんが夫婦でこの子はあんた達の子供じゃないのか?」
「な!?何を……ぱ、パンツと……ふ……夫婦て……そんな事……まだ……早い……それに……子供だなんて……。」
「何モジモジしてんだ?アイル。」


勘違いにも程がある。
俺とアイルが夫婦で、ソフィちゃんが俺達の子供だと思ったらしい。
アイルは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
いやいや、その前にソフィちゃんと結婚なんてさせるかい!!
まだ俺の野望(ソフィちゃん魔法少女化計画)も始まってもいないのに!!
と言うか……この世界でも、その……女の子同士での、その、あの……ありなんですか!?


「駄目に決まってんでしょ!!」


わっ!びっくりした。アイルが叫ぶ。
え?やっぱり女の子同士じゃダメだよね?って俺の心の声聞いてた?


「この子(ソフィ)は私の妹よ!!それにソフィはまだ子供!!駄目に決まってるじゃない!!」


俺の心の声に答えた訳じゃなかったのね。


「え?夫婦じゃないの?あんた達二人の子供じゃないんだ。なーんだ。じゃあ私が攫って行こうかな?こーんなカワイイ子、ほーら高い高―い!!」
「わわわわっわわわぁー!!!」


紫髪のお姉さんはソフィちゃんを抱えて天井スレスレに着く勢いで高い高いされソフィちゃんは叫び声を上げている。
すると数回高い高いされた所で、アイルが飛び出す。


「わわわわわー!!!あっ!」


ガシッ!

「大丈夫?ソフィ?」
「……ありがとう!お姉ちゃん!!」



空中に放り投げられた所を、アイルが軽やかにジャンプしてソフィちゃんをがっちりキャッチして救出した。
なんてイケメンなんだ。アイル様。
そしてアイルが紫髪のお姉さんを睨み付ける。


「あんた……いい加減にしないと……怒るわよ!!」


アイルさん。既にキレてます。
アイルと紫髪お姉さんが顔を突き合わせて火花が散っている。
今にも取っ組み合いのキャットファイトが始まりそうな雰囲気だ……。
……それはそれで見て見たい気もするけども。
ポロリもあるよ的な。
俺がそんな不埒な妄想事を考えていると1人の男の声が辺りに響く。


「はいはい。もうーやめだやめだ。二人とも離れろ。」


そこへこの宿屋の主、ステフさんが二人の間に入り引き離す。


「おめーら、俺の宿で好き放題すんじゃねーよ。特にねーちゃん、こいつら(アイル達)は俺の知り合いでな。こいつらに非がないのは明らかだ。これ以上、事を構える心算つもりなら宿から出て行って貰うぜ。」


ステフおっさんは、低く落ち着いた口調でそう話すが、有無を言わさない程の迫力を感じる。
やっぱこええ。ステフおっさん。


「む……すまなかった。店主。別に事を荒立てようとした訳ではないのだ。許して欲しい。」


あっさり謝罪する紫髪お姉さん。
変態さんかと思ったら、意外と常識人?


「その、何だ……。カワイイ子供を見ると、つい我を忘れて無意識に愛でたくなってしまってな……。すまなかった。お嬢ちゃん。」


紫髪のお姉さんはソフィちゃんにも頭を下げる。
しかしソフィちゃんはまだ膨れっ面だ。


「ムムー。ソフィは子供じゃなーい!!!」


ソフィちゃんは両手を上げてぷんすかと抗議の声を上げる。
どうやら子供扱いされている事に御立腹の様子。
カワイイ。


「ふくれっつらのぷりぷり怒っている顔もきゃっわいいー!!タマラン!!!そーれ!高いたかーい!!」
「わぁ!わわわわわわぁあー!!!」
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