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第46話 調査隊のお仕事?
しおりを挟む「なんだ!もう帰るのか!?」
「うん。ウェアウルフの討伐金を遺族のみんなに分配しないといけないから。」
「そうか……そうだったな。」
グリフォン便の事務所から宿へ帰ってきた俺達は丁度、受付にいたステフおっさんに明日帰る旨、アイルが伝えるとステフおっさんは寂しそうにする。
すると俺と目が合って思い出した様に話しかけてくる。
「おッ!そうだ!パンツ兄ちゃん!どうだ?考えてくれたかい?」
「……?パンツ、何の事?」
「………?」
そう言えば、ステフおっさんにこの宿屋に転職を進められた事をアイル達に話して無かったな。
アイルとソフィちゃんは首を傾けて俺とステフおっさんを交互に見る。
「え~と、ステフさんにここで働かないかと誘われたんだ。」
「……ええぇ!?ここって……『ゆっくりしていっ亭』で!?」
「そ、そう。」
「何でよ!!」
アイルは俺に詰め寄り詰問してくる。
今日こそイケるか?ん~……
メリッ!
俺の顔面にアイルのパンチがめり込む。
「私達とパーティ組むって約束したじゃない!!!」
「お兄ちゃん……おじさんと働くの?」
アイルは俺の襟首を掴みガクガク揺さぶり、ソフィちゃんは寂しそうに俺のズボンを握り見上げている。
「何だよ。先約がいたのか。パンツ兄ちゃん、それならそうと言ってくれよ。」
ステフおっさんは頭を掻きながら苦笑気味にそう話す。
「す、すみません。お伝えしようとは思っていたんですが、昨日、今日と色々と状況が目まぐるしく変わってしまって……。」
「いやいや、謝る事ぁねぇよ!パンツ兄ちゃんなら仕事任せられそうで俺が少しはサボれるかと思って誘っただけだからな!ガッハハハハハ!!」
ステフおっさん……逆に俺に気を使ってくれてるのが伝わって来て申し訳なくなるな。
「すみません。ステフさん。折角誘って頂いたのに……。またこちらに来た時にはお手伝いさせて頂きます。」
「あぁ!その時は宜しくな!で?状況が変わるって、何かあったのか?」
「アイル達とパーティを組む事は決めてたんですが、ギルマスに『調査隊』に入らないか?と勧誘されましてね‥…。」
「調査隊?ギルドのか?そうだったのか。この街じゃねぇが俺も昔やってたぞ!」
「え?おじさんも調査隊に所属してた事があるの!?」
「あぁ。若けぇ頃に1年ぐらいだったけどな。」
まさかのステフおっさん、調査隊経験者がこんな身近にいたとは。
アイルも知らなかったらしく驚いている。
「おじさん、調査隊ではどんな事してたの?」
「ん~、そうだなぁ。大昔の事だからうろ覚えだが、モンスターがいるかどうかの確認だけだな。残りの討伐金の交渉とかは他の奴に任せてたから良くしらん。」
ソフィちゃんも興味があるらしくステフおっさんの過去の調査隊時代の事を尋ねたのだが、余りのも簡潔過ぎて参考にならない……。
「それに調査隊以外の仕事がつまらなくてなぁ。」
「ステフさんもギルドの受付とかした事あるんですか?」
「おぉ、あるぜ。しかも面倒臭ぇんだよなあれ。一々あいつら(冒険者)に説明しなきゃならんし、手続きとか書類仕事も多いしな。それに俺が受付しても滅多に寄りついてこねぇしよ。」
俺はステフおっさんがギルドの制服を着て受付をする様を想像してニヤけてしまう。
しかし当時の冒険者達の心情も分かる気がする。
こんなゴリゴリの厳ついおっさんが受付にいたら近寄り難いのは明白だ。
初見であれば俺でも近づきたくない(笑)。
「それでその事務仕事が嫌で1年ぐらいで辞めちまったのさ。」
「へぇ~そうだったんだぁ。知らなかったぁ。仕事めんどくさいの?う~ん、どうしよう。」
………。
ステフおっさんからギルド調査隊のネガティブな情報しか出てこないのでアイルが困惑している。
でも受付仕事がステフおっさんには合わなかっただけでアイルやソフィちゃんが受付にいたら俺なら間違いなく一直線にそこに並ぶだろう。うん。絶対!
しかしポジティブな情報はないのか?
「ステフさん、調査隊の仕事をしていて良かった思い出とかないですか?」
「う~んそうだなぁ……あちこちタダで行けるから色んな街でその土地の美味いもんとか酒とか飲み食い出来たからそこは良かったな!!その伝手で今、食材を融通して貰ってる奴等もいるし、悪い事ばかりじゃねぇな!そう言えば!!ガハハハハ!!」
おぉ!この世界を知らない俺としては、タダで他の街に行けるのは魅力的だな。
しかも給金も出るなんてサイコ―じゃないか!
「へぇ~色んな場所いってみたぁ~い!!ね!お姉ちゃん!お兄ちゃ~ん!!」
旅する事を想像したのか、ソフィちゃんが喜色満面の笑顔で俺とアイルの手を取りながら間で飛び跳ねている。
無邪気でカワイイなぁ。
ステフおっさんと元おっさんの俺2人はそれを見てほっこりしている。
「ギルド調査隊の事は兎に角、村に帰ってお父さん達に相談してから決めよう?」
「うん。分かったぁ!」
そして俺達は各々の部屋に戻り明日出発する為の準備を整える。
そして夜も更け、晩御飯の時間になると俺達3人は1階に集まった。
今日の晩御飯は小麦パンとワイバーン肉のステーキ、豆と野菜たっぷりの煮込みスープだ。
「え?ワイバーン肉のステーキって高いんじゃないの!?」
席に着くなりアイルがステフおっさんにそう話しかける。
「おめぇ達は明日、村に帰るだろ?。道中長いんだ!しっかり食って精を付けないとな!」
「おじさん!有難う!!」
ステフおっさんが態々俺達の為に用意してくれたらしい。
見た目怖いけど、心は優しいな。見た目怖いけど。
「おぉおお!今夜はワイバーン肉かぁ!?」
「マジ!?」
いきなり声をかけて来たのは例の4人組のリーダー(仮)のシェールとジンの2人だ。
エチルさんとカバールさんはまだ部屋にいるのか姿は見えない。
「あぁん?おめぇ達はこっちだ。」
4人組用のテーブル上にはワイバーン肉ではなく、オーク肉のステーキが並べられていた。
「あれ!?何でメニューが違うんだよ!」
「アイル達は明日、村に帰る為に精を付けて貰わねぇといけねぇからな。な?ソフィ~?」
ステフはソフィの頭を優しく撫でながらそう話す。
「え?俺達も明日、旅立つ予定なんだけど?」
「おめぇ達はいっぱしの冒険者だろうが!それに今朝は俺に手間かけさせやがって。まだ礼の一つもされてねぇんだけどな?あぁ?」
「……あ、あ、け、今朝は誠に有難うご、御ぜぇめしたぁ……。」
シェール……怖いのか?噛んでるぞ。
今朝、『太陽の風』の4人は前日に酒を飲み過ぎてギルドの集合時間に遅刻してしまったのだ。
まるで蛇に睨まれたなんとやら状態だ。
シェールとジンは一瞬でシュンと縮こまりステフに礼を言う。
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