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第45話 グリフォン便3
しおりを挟む「それで、あんた達、当然ウチに用があって来たんでしょう?中に入って話しましょ?」
ライオン顔はそう言うと、事務所に入る様に促す。
未だにライオンが普通に喋る事に違和感を覚えながらも俺達は事務所の中へと入っていった。
グリフォン便の事務所は入って直ぐの所にカウンターがあり、その先には応対用と思われる応接セットが設置されていた。
俺達はその応接セットの長椅子に進められるままに座り対面にオカマライオンが座る。
座ると言っても猫が横になる様な感じだ。
「さぁて、私はこのグリフォン便ルク・スエル支所の所長の『プリンシパル・ダモン』と言う者よん。気軽に『プリンちゃん』って呼んでねぇ~ん。宜しくぅ。それで、今回はどちらに行きたいのかしらん?それともお荷物のお届け依頼かしらぁ?」
ライオン顔はねっとりとして口調で挨拶をすると器用にタバコに火を付けながら尋ねて来る。
しかし目の前のプリンちゃん、思っていたより小さいな。シェールに聞いていた話だと体長5m×体高3m程度、俺の記憶の世界では象ぐらいの大きさだと聞いていたのだが。
プリンちゃんは体長3m×体高2m程度でサイやカバぐらいの大きさだ。
勿論、普通の人間からしたら十分に大きいのだが。
「どうしたのぉん?お兄さん?じ~っと私を見つめちゃって。私に惚れちゃったぁ?」
んなわきゃ~ない。
とんでもない事言い出すなこのオカマライオン。略してカマオンめ。
「あ、すみません。グリフォンを始めて見たので見とれてしまいました。……御不快な思いをさせてしまってすみません。」
と言っても、翼の有無だけで見た目、普通のライオンだよ。
見た事あるよ。動物園で。
「あらぁ。私に見惚れるなんて、あなた……いい目を持っているわねぇ~ん。今度、お食事にでもいかなぁ~い?」
何言ってんだ?このカマオン。
と言うか、多分、性別オスだよね?鬣あるし、これでメスなら申し訳ないけども。
「しかし綺麗な翼ですね。」
するとライオン顔は顔を赤らめながらまんざらでもない口調で答える。
「まぁねぇ。この翼は私達グリフォンにとって全てと言っても過言じゃないからぁ、お手入れも十分にしているわよぉん。」
そう言うとカマオン……プリンちゃんは金色の翼をバサァと広げて前足で毛づくろいを始めた。
その前足の爪にもマニキュア?が施されている。
アイルよりも女子力高いな。このカマオン。
俺はチラと横目でアイルとソフィちゃんを見やると二人とも俺と同じくプリンちゃんに視線が釘付けだ。
「それで、要件はなにかしらぁん?」
「え~とですね、今後、利用させて頂く事もあるかもしれないので、料金とか発着先とか教えて頂こうかと思って来ました。」
「あら、そ~ぉ?是非使ってねぇ~ん。詳細はこれに書いているから持っていっていいわよぉん。」
プリンちゃんはごろりと体勢を後ろに向けるとそこから1枚の紙片を取り出し俺に渡してきた。
そこには料金表と発着先が記載されていた。
え~と……ルク・スエルからロマーデンまでは……金貨1枚/1名か。
俺の記憶の世界観で換算すると10万円/1名か。
シェールが言っていたがやっぱり高いな。
「その下にも書いてるけど、利用する日取りが1か月前に分かっていて利用するつもりなら早期割引もあるわよぉ~ん。」
俺は視線を下に移すと『早期予約割引で更にお得!!』とか太字で書いてる。
早期予約割引なら銀貨7枚/名(7万円/名)か。
記憶の中にある航空会社も同じ様な事をしていた様な気がする。早割とかやってたな。
「お兄さんが私とお食事に行ってくれるなら半額でもよくってよぉ~ん。」
プリンちゃんはそう言うと、俺に流し目を送ってくる。
俺はゾゾゾと寒気を感じてアイルに縋りつく。
「パンツ、食事、付き合ってあげれば?安くなるってさ。」
「いやいや、それは……流石に……。」
「だってオスでしょ?このグリフォン。」
「んまぁあ~!!失礼な小娘ね!!『オス』だなんて!!私はそこらの女に負けないぐらい心は『乙女』なのよ!!」
「いやでもオスじゃん。」
「違うわよぉ~!!あんたみたいなガサツな小娘と違って私の心はレディなのよぉん!!」
「でもオスじゃん。」
「ムキィィイイイィイィイ!!!」
オカマグリフォンが机をバンバン叩いて悔しがっている。
やっぱりオカマグリフォンだったんだ。
カマグリ?カマフォン?………………プリンちゃんでいいや。
プリンちゃんは翼をバッサバッサとはためかせてまだ悔しそうだ。
「所長……何やってんスカ?」
「ィィイイイ……あッ!『キュウちゃぁん!』お疲れ様ぁ!配達終わったのぉん?」
『キュウちゃぁん!』と呼ばれたグリフォン、今度こそイメージ通りのグリフォンの顔、鳥の顔が奥の大きな引き戸扉からこちらを覗き込み様子を伺っていた。
「キュウちゃぁぁあん!聞いてよぉおお!!この小娘が私の事を『オス』だとか言うのよぉお!!酷いと思わなぁああい?」
プリンちゃんはアイルを指して喚いている。
「いや所長、どこから見ても立派な『オス』じゃないスカ。」
「まぁ~!なぁ~に言ってんの!キュウちゃん!?私の心は『女』だっていつも言ってるでしょぉ~ん!!」
「でもオスじゃないスカ。それにその立派な鬣(笑)」
「んもぉぉおぉおぉお!!やっぱりこの鬣がいけないの?剃っちゃう?剃っちゃった方がいいわよね!?あなたもそう思うでしょぉん?」
プリンちゃんは俺を見ながら同意を求めてくる。
いや、俺に振られても……。
プリンちゃんは一回り大きい『キュウちゃん』と呼ばれるノーマルグリフォンの胸をバシバシ叩いている。
「そんな事より所長、五日前に王都に向かった『カン』の奴が帰って来ないッス。」
「え?『カンちゃん』が?帰って来るのはいつだったかしらぁん?」
「予定では昨日にはこっちに帰り着いてないとおかしいッス。あいつは『速急便』担当だったッスから、ここから王都まで四日もあれば往復できる筈ッス。」
『速急便』?俺は手元の料金表を見ると裏には荷物専用お届け便として『通常便』と『速急便』の料金表が記載されていた。
『速急便』はどうやら『通常便』より割高だが荷物を早く届けてくれるらしい。
その料金表にはディフォルメされた鳥グリフォンがウィンクして翼で親指を立てている。
「あいつが帰って来なくて荷物が期日通り届けられなくなってるッス。」
「あらぁ、それは困ったわねぇ……。『チョーちゃん』は?」
「『チョー』の奴は今、ロマーデンの通常便担当なんで今朝出発したばかりッス。」
「仕方ないわねぇ……お休み中で申し訳ないけど、『ブーサちゃん』に休出をお願いしないと行けないわねぇ……。」
「その方がいいと思うッス。俺は今から王都へ通常便配達に行って来るッスから、本部の連中に『カン』の奴の事を聞いてみるッス。」
「すまないわねぇん。宜しく頼むわぁん。気を付けてねぇん。」
2人?2匹?2頭?の話が終わると、プリンちゃんはこちらに向き直る。
「ごめんなさいね。ちょっと忙しくなりそうだからまた今度来て貰えるかしらぁん?そっちの小娘は来なくていいわよぉぉん!!」
俺達は料金表を片手に持ち、そそくさとその場を後にした。
アイルとプリンちゃんは帰り際までお互いに『ベー』と舌を出して挑発しあっていた。
俺達はそのまま宿へ戻ろうと道を歩いていると、上空にあのオカマライオンのプリンちゃんがバッサバッサと翼をはためかせ天を駆ける様に飛んで行くのが見えた。
飛べたんだ。あのライオン…………じゃなくてグリフォン。
『さて!『ブーサちゃん』に休出のお願いしに行かなきゃ!!』と帰り際に聞こえたからきっとそれだろう。
所長さんも大変だね。
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