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第42話 ギルドのお仕事
しおりを挟む「所でアイルから聞いたが、おまえ達3人でパーティを組むんだって?」
「はい。」
「そうかぁ。アイルとソフィ、パンツ兄ちゃん、ウチで働いて貰えないかと思ってだんだけどなぁ。」
「……?ウチで働くって、ギルド職員としてって事ですか?」
「そうそう。ウチも中々人手が足りなくてな。有望な若手冒険者が来たら勧誘してるんだ。」
「だ、駄目よ!!パンツは私とパーティ組むって決めてるんですから!!」
アイルは椅子から立ち上がり抗議の声を上げる。
「分かってるよ。だからお前たち3人、取りあえず臨時職員として働いてみないか?勿論、給金も出すぞ?」
「私達も?」
ギルマスの突然の提案にアイルとソフィちゃんはお互いに目を併せて目をぱちくりしている。
「前々から思ってはいたんだが、アイルは依頼達成日をいっつも過ぎるだろ?」
「う……ぐぬぬ。」
アイルは悔しそうに拳を握る。
『ぐぬぬ』て、ほんとに発する人、初めて見たぞ。
しかしギルマスのその指摘に反論できないのかアイルは口を噤んでしまう。
「アイルは腕『は』経つからギルドの調査隊とか向いてると思うんだよな。」
「ギルドの調査隊って何ですか?」
何だ?ギルドの調査隊って。昔やってた『水○スペシャル!川○探検隊!!』みたいな奴か?
「パンツ兄ちゃんは知らないか。『ギルド』は依頼者からの依頼を受けて冒険者に依頼を出す所謂仲介業だ。
調査隊は特に魔獣の討伐依頼が出された場合に、実際にその現場へ赴き、本当にモンスターが存在するかの確認と、討伐ランクの判定、討伐報酬の交渉をしたりする役割もあるんだ。
適当に魔獣のランクを判定をしてしまうと冒険者の命に関わるし、その街のギルドの信用にも関わってくるからな。」
成る程。事前に現地へ赴き依頼内容の精査をするって事か。
「何でそれがアイルが調査隊に合うと思ったんですか?」
「……兄ちゃんも気付いてるだろ?」
………はい。薄々は……と言うか確信めいたモノを感じてはいます。
アイルが冒険者として致命的な所………それは方向音痴。
そう思っているとギルマスのレトが話を続ける。
「まぁ、そのアイルとソフィは依頼達成期日を守れないから今ままでランクアップ出来なかったんだ。
だがギルド調査隊なら案内役の斥候職もパーティとして付いて来るし迷う心配もない。
それにこっちの都合だが先日、調査隊に欠員が出てしまってな。
それの補充もしなきゃならん。
安定した給金だって入って来るしでお互いにいい関係になると思うんだがな。
どうだ?ソフィはまだ成人してないから正式には雇えないが、ギルドからの依頼で同行するって事でいいだろ。それに調査隊だって毎日調査に出ている訳じゃないしな。」
「え?そうなんですか?」
「ああ。さっきも言ったが、調査隊の任務は基本的にモンスター有無の調査と依頼者と討伐報酬の交渉が任務だが、依頼がない時は受付したりモンスターの解体したり書類整理したり普通のギルド職員と同じ仕事だな。」
アイルは突然のギルマスからの提案に困惑気味にソフィちゃんと俺を交互にキョロキョロと見やる。
しかしギルド職員として働いてみるのも面白そうだな。
いきなり冒険者からギルド職員に転職しちゃうか?
俺は興味本位で聞いてみる。
「ギルマス、調査隊って今、何人いるんですか?」
「このギルドには基本3部隊の各隊4人パーティの計12名だな。今は2名の欠員がでちまって2部隊の運用になってるが。」
「欠員の理由を聞いても?」
「………調査中に行方不明になっちまったんだ。」
「………!?」
「ルク・スエルとロマーデンとの境界線辺りにモンスターが出没するって事で討伐依頼の調査に向かった先で……。」
ロマーデン?どっかで聞いたな。
………………。
なんだっけ?元おっさんだから物忘れが酷くてのぉ……。
身体はピチピチに若いけど。
「アイル。ロマーデンってどっかで聞いた事があるんだけど……どこだっけ?」
「この街、ルク・スエルから北にある街の事よ。エチルさんも教えてくれたでしょ?『水革袋』の製作者の冥魔法使いがいるかもって。」
あぁ!夜な夜な不死者を使って旅人や商人を襲っているかもしれないって話だったな……あれか。
「お前たちも噂は聞いてるみたいだな。その境界線にアンデッドが徘徊しているって事らしくてな。それの調査中に行方不明になってしまったんだ。恐らくそのアンデッドにやられたのかもしれん。」
「それはお気の毒に……。それで肝心のアンデッドは見つかったんですか?」
「いや、それが姿、形も確認出来なかったらしい。1週間も調査したってのに。」
「でも2名の職員の方がそのアンデッドに……。」
「そこはロマーデン側のギルドにも連絡して調査を継続して貰っている。この街から一番近い街とは言っても馬車で2~3週間かかる。それに境界線はロマーデンの方が近いからな。」
境界線はロマーデンの街の方が近いのか。
そう言えばグリフォン便、略して『グリ便』があるとかリーダー(仮)のシェールが言ってたな。それでロマーデンまで行けないかな?
そう思い返しているとギルマスが話を続ける。
「だからギルド調査隊と言っても安全な仕事じゃない。調査先でモンスターとばったり遭遇してしまいそのまま戦闘になったりする事もある。
それも考慮して調査隊には腕の立つ奴等を集めてるつもりだ。少なくとも白金級以上の実力と適正がある連中で構成されてるんだぜ。」
ギルマスはそう言うとニヤリと笑う。
白金級以上?
それって王国騎士団に所属する為の最低条件レベルだったよな?
「ま、ギルド職員になるって話は今直ぐに結論は出さなくてもいい。しかし他の冒険者にも声を掛けているから返事は早めに欲しいけどな。」
アイルは俯いて考え込んでいる様だ。
俺的にはギルド職員もやってみたい。取りあえずこの話は後でゆっくり話す事にして俺達はギルマスに挨拶を済ませると、1階に降りてギルドカードの更新とプレート交換、再発行手続きをしてギルドから出る事にした。
「う~んどうしよっかなぁ?」
宿へ帰る道すがらアイルは大きな胸に腕を押し付ける様に組み歩きながら顎に手をやりそう呟く。
先ほどギルマスから提案された『ギルド調査隊』への勧誘の件だろう。
「ねぇ、パンツはどうしたらいいと思う?」
「アイルはどうしたいんだ?」
「モンスター討伐とかお父さん達に憧れて冒険者になったからねぇ。」
「このまま冒険者を続けたいって事?」
「う~ん………ソフィはどう思う?」
「……私はどっちでもいいけど、調査隊なら森で迷わなくていいからそっちがいいかも!」
ソフィちゃん、お姉ちゃんが気にしている事をドストレートに投げ込んで来たな。
子供の残酷な所は正直すぎる所だよね。
「うう……ゴメン。ソフィ……頼りにならないお姉ちゃんで……。」
「!?そんな事ないよ!お姉ちゃんは頼りになるよぉ!!今までお姉ちゃんがいないと……魔法だって使えないし、いつもソフィを守ってくれてるじゃない!」
「ソフィ……。」
「お姉ちゃん……。」
俺の目の前で今、姉妹が抱き着き、姉妹愛の確認が行われている。
このまま、まさかの百合展開に発展するとか……それも見てみた……。
ボコッ!!
「また顔がニヤけてたわよ!パンツ!!」
……はい。すみません。
……………でも……やっぱり妄想しちゃうとニヤけちゃいますよね?ムフフ。
ボコッ!!
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