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第28話 ドラゴン?
しおりを挟む「何やってんだ?」
『太陽の風』パーティリーダー(仮)のシェールが話しかけてきた。
「……え?あ、あのアイルを部屋に運ぼうかと思って…。」
「……おぶったまま何回、階段を昇り降りしてるんだよ。」
「……いつから見てたんですか?」
「ん?2往復目に入る所ぐらいか?宿に入って来たら兄ちゃんが嬢ちゃんをおぶって不自然に上下にゆさゆさしながら階段を往復してたから暫く様子を見てたんだが終わりそうにないから話しかけた。」
背中の『oopai』の感触に集中する余り、4人が宿に入って来た事に全く気付かなった。
「………アイルには黙ってて下さいね?」
「………楽しめたか?」
「……はい!」
「ならばヨシ!!」
俺とシェールはがっちりと握手する。
その光景をエチルさんが呆れ顔で眺めている。
「全く、バっカじゃないの。男ってほんとバカね。」
「フッ……『oppai』は男にない物だからな。あれはいいモノだ……。」
あれ?どこかで聞いたセリフ……ガン○ムのマ・○ベ大佐が言っていた様な……。
しかしアイルの『oppai』はいいモノです。当分、おかずに困らずにすみそうです……。
ガスッ!!
あれ?アイル寝てるよね?何で俺の後頭部に肘打ちが突き刺さったのだろう……。
まさか俺の邪な気配だけで反応したのか?
怖いので俺はそそくさとアイルを部屋に寝かすと階下で待っている4人の元へ降りて行く。
「しかし早かったですね。もう報告は終わったんですか?」
「報告と言っても『ギガントパイソン』と思われる黒焦げの死骸を見せて、『ギガントパイソン』を倒した正体が『ドラゴン』の仕業じゃないかって推測を話しただけだけだしな。詳細な報告はまた明日するんだろ?」
「あぁ……。昨夜、野営をした所までギルマス達を案内する予定だ。」
ジンとシェールがそう話す。
「筋肉バカダルマ……ギルマスはどんな見解なんですか?」
「ギルマスも俺達と同じ意見だったな。恐らく『ドラゴン』と『ギガントパイソン』が偶々、遭遇して戦いになったんだろって事だ。」
「でも、ルク・スエルの街付近で『ギガントパイソン』とか『ドラゴン』まで出没するとなると今後の交易が止まらないか心配ね。」
エチルさんがシェールにそう話す。
「心配したってしょーがねぇじゃねぇか。今の所、『ドラゴン』は発見されていないし、足跡すら見つかってない。当面の脅威の『ギガントパイソン』は『ドラゴン』が討伐してくれたんだからいいんじゃねぇか?
それに交易云々なんて街のお偉いさんがたとギルマス達の仕事だ。俺達は『ギガントパイソン』の鱗と肉で臨時収入も入る事だしうめぇ酒の飲めるぜ!」
ジンは椅子に座り頭の後ろに腕を組んで嬉しそうにそう話す。
「でももし今後もランクBの魔獣とか『ドラゴン』が徘徊し始めたらこの街で仕事どころか街自体を放棄しないといけないかもしれないんだよ?」
エチルさんはまだ不安そうだ。
「そうなったらそうなったでしゃーねぇよ。でも『ドラゴン』だって無敵って訳じゃねぇんだ。もし本当に『ドラゴン』なんて化け物が出てくる様ならギルマス達だって出張って来るだろ。それに本当に『ドランゴン』なんて化け物が確認されれば『幻のドラゴンスレイヤー』様にでも頼みに行くんじゃねぇの?」
幻のドラゴンスレイヤー様?何だそりゃ。
「ジンさん、その『幻のドラゴンスレイヤー様』って何なんですか?」
「お?兄ちゃんは知らないのかい?『幻のドラゴンスレイヤー』ってのはな、その名の通り『ドラゴン』のみを狩る冒険者さ。
『ドラゴン』が出没しないと出てこないありがたい冒険者様だよ。」
「『ドラゴン』だけを?そんな冒険者がいるんですか……。『ドラゴン』だけを討伐して冒険者として生活できるものですか?」
「それが出来るんだなぁ。『ドラゴン』なんて滅多に現れないが、もし街や国に害を及ぼす様な『ドラゴン』が出現したら街どころか国が滅亡しちまうからな。
そんなドラゴン様の討伐となりゃ報奨金をたんまり貰える訳さ。
国を救う程だからそりゃ凄い金額さ。
そして討伐した報酬を貰うとさっさと消えちまって普通のギルド依頼は受けないから『幻』って言われてるんだ。」
成る程、一回の報酬が莫大って事か。
いいなぁそれ。ドラゴン討伐してあとは悠々自適にのんびり生活とかまるで宝くじが当たったみたいな生活じゃないか。
勿論、『ドラゴン』を討伐出来ればっ……て前提だけど……。
「その『幻のドラゴンスレイヤー』さんてどこにいるんですか?」
「所在は一般には明かされていないんだ。ギルドの上層部とその国を統治する一部の人間しか知らない存在でな。」
「そうなんですか?なぜ一部の人間にしか知らされていないんです?」
「詳しい事は俺達もしらねぇ。そいつが人嫌いだとか目立ちたくないから山奥に住んでるんじゃないかとか噂は色々だ。
もしかしたら一般人としてそこら辺に住んでる可能性だってあるかもな。
知らない内に擦れ違ったり挨拶してるかもしれねぇぜ。(笑)」
所在不明のドラゴンスレイヤーさんか……ミステリアスで興味あるなぁ。
「ちなみにその『幻のドラゴンスレイヤー』さんのギルドランクは何ですか?」
「確か蒼玉級だったか?カバール?そうだったっけ?」
「ええ。合っていますよ。今現在、蒼玉級は確か4人しか在籍していません。
その中でも『幻のドラゴンスレイヤー』は蒼玉級第1位だった筈です。」
「……え?第1位?それぞれのギルドランク内にも順位があるんですか?」
「知らなかったのか?」
シェールが意外そうな顔でそう答えると続けて教えてくれた。
「白金級以上からランク内で順位が付けられるんだ。
ランク内の順位は単純にその冒険者の強さを表す指標になっているって話だが……ま、それも直接戦って決めてる訳じゃなくギルドが勝手にランクつけてるだけだから信憑性は……どうだかな。ギルドへの貢献度や依頼達成度が高い連中が上位に行ってる感じではあるな。」
そうなのか……。ギルドのお姉さん、教えてくれなかったなぁ。
確かに白金級以上しか知る必要ない情報ではあるけどさ。
「ま、『紅玉級』以上の順位なんてほぼ意味ねぇと思うけどな。
『紅玉級』以上の冒険者なんて一人で一国の軍隊にも匹敵する戦力だぜ。ま、人外の連中ばっかだな。あいつら人間じゃねーんじゃねーの?(笑)」
ジンがおちゃらけながらそう話す。
「シェールさんて白金級でしたよね?ランクは何位なんですか?」
「それ聞いちゃう?」
「この流れだからそりゃ聞きますよ。」
「………いだよ……。」
「え?」
「………かいだよ。」
「……え?」
「………最下位だよ!!笑いたきゃ笑えよぉ!!」
「「「アッハハハハハハ!!」」」
「おめぇ達が笑うんじゃねぇよ!!」
シェール以外の『太陽の風』の3人が爆笑した。
「まぁしょうがないじゃない。まだランクアップして1か月しか経ってないんだし。」
「そうですよ。一応、シェールは僕達パーティのリーダー(仮)何ですからしかりして下さいね。」
「そうだぜ。それに俺達3人も直ぐに白金級にランクアップするからおめぇの順位はずっと最下位のままかもしれねーけどな!アッハハハ!!」
エチルさん、カバールさん、そしてジンがトドメを食らわす。
「お前ら、うるせぇぇよ!!」
「ちなみに白金級って今、何人ぐらいいるんですか?」
「今は大体5千人前後ですね。」
「おめぇよく覚えてんな……。」
「ギルドに毎月、各地域や国のギルド登録者数を貼り出してますよ。見てないんですか?」
「う~ん見てねぇ。」
俺が質問するとカバールさんが即座に答えてくれた事に驚くジン。
約5千人が白金級か。多くね?
「そんなにいたっけ?」
ジンがそう答える。俺もそう思った。
「多い訳がないでしょう。冒険者の母数がどれだけいると思ってるんですか?私も正確な数字は把握していませんが、貝殻級も含めると軽く100万は超えているんですよ?それに毎日の様に冒険者が登録されているんです。それに加えて普段の生活をしながら冒険者をしている兼業の冒険者だっているんですからそれを含めたら更に多くなります。その上位たった僅か約0.5%が白金級なんですから。」
「そうだぜ?ジン。もっと俺を尊敬していいんだぜ?」
カバールさんがジンに教えていると、シェールが鼻高々で腕組みしてジンを見下ろしている。
「はっ!!直ぐにおめぇなんて追い越してやるから待ってろよ!!それとテメーの順位ぐらい覚えとけ!最下位の残念白金級が!!」
「んだと!!てめぇ!!」
「んだあ?やんのかぁごらぁ!!」
シェールとジンが揉めだした。
すると二人の首根っこを持ちあげる巨人が一人……。
ステフおっさん帰って来たんだね。
「おい……。俺の宿で騒ぐんじゃねぇよ。」
「「……はい。」」
二人は猫みたいにステフの左右それぞれの腕に持ち上げられながら力なくそう答えた。
ステフのおっさん……逞しい。
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