Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎

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第11話 都市ギルドマスター

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「まだ何もやってないよな?マイサン?」

俺は自分の下半身を見ながら独り言を呟く。



どれだけ待たされるのだろう…。

この状態で大凡10分程待たされているとそんな事を思ってしまう。



あの受付のおねーさんが一歩も動くな!なんて言っていたが、俺は尿意を催して来た。これ…玉から勝手に手を放すと爆発…なんてしないよな…?黙ってトイレに行ったりしたら怒られるのだろうか…。



この世界の常識や作法を知らない俺は、尿意を我慢してその指示に従い待つしかなかった。



そうぼんやりと思っていると扉の奥からドタドタと騒々しく人が走る音が近づいて来た。



バターン!!

ビクッ!!



この部屋の扉が勢いよく開いた先には、筋骨隆々の男一人と続いて受付嬢を伴った女が一人の計3人同時に入ってきた。

扉は静かに開け閉めしようよ…。少し漏れちゃったかも…。



部屋に入ってくるや否や、3人はゆらゆらと煌めく玉をマジマジと見ながら男女が話始める。



「おいおいおいおい…マジか…マジなのか…こんなの初めて見たぞ…嘘だろ…。」

「私も初めて見ました。こんな事って…。信じられない…!」

「ですよね?嘘じゃなかったでしょ?ね?ね?」

ワイワイガヤガヤワイイガヤガヤ…。



俺の存在を無視するかの様に3人だけで話が白熱している。

俺は尿意を我慢してるのだ!早く終わらせてくれ!そう内心思いつつも穏やかな口調で話始める。



「あのー…何なんですか?いきなり?」

「君!!君はどから来たのかね!!」



ビクッ!!

そう言うと、男が俺の両肩をいきなり掴み尋問を始めてきた。

にょ…尿意がやばい…。今のでまた少し…出…。



いきなり筋肉質の大柄な2mはあるだろう巨躯の男に両肩を掴まれそう聞かれた。

何なんだこの世界の男どもは。宿屋のおっさんと言いこういう系統の男しかいないのか?

しかしこんなゴリラみたいなのに逆らったらヤバそうなので素直に答えておくか…。



「メリッサ村で…す。」

「メリッサ村?あの村では2年前も有望な3属性持ちの子が出た所でしたね。」



受付嬢と一緒に入ってきたもう一人の知的そうな眼鏡をかけている女性が横からそう言った。

ソフィちゃんの事かな?



「君ぃ!!君は非常に、ひっつツ常――――に珍しい6属性持ち、つまり全ての属性に適正があるんだよ!!これはこの都市ギルド始まって以来、初めての筈だ!」

「へ、へぇ~…そうなんですね。」



ゴリラ男が興奮しながら俺をゆさゆさ揺さぶりながら顔を赤くしている。俺に惚れている…訳じゃないよな?



これがどの程度凄い事なのか分からないって事が正直な感想だ。それよりも早く解放して欲しい。俺の膀胱を解放させてくれ!



「あなた、これがどれだけ凄い事か分からないの!!」



俺のリアクションが薄い事に不満なのか眼鏡知的美人さんが驚いた表情をしながら叱責する様な口調で話しかけてくる。



「はぁ、全く…。」

「「「………。」」」3人は驚愕の表情を浮かべながら黙ってしまった。



俺のリアクションが薄いのは当然だ。

もしいきなり宇宙人に連れ去られて



「君はカニャルポコニャマンの適正がある!!素晴らしい!!その力でパパイヤン星のプコジョーウを探し出しパイをゲムウしてくれ!!」

といきなり言われても、「え?カニャル…?ポコ…え?ぱいをげむ…?何て?」

そう、宇宙人には当たり前の事であってもそれを意味する事を理解出来ないのだ。



「そ、それより…は、はや」

俺が早く解放して欲しい旨伝えようとすると俺の言葉を掻き消す様に眼鏡知的美人さんが話し始める。



「知ってるとは思うけど、マジックキャスターとしての適性がある人でも1属性が普通なの。

複属性持ちなんて、最近では2年前のあなたと同郷の子ぐらい。それなのにあなたは全属性持ちだなんてこんな事って!!ありえない!!」ビクッ!

眼鏡知的美人さんは興奮してそう絶叫する。



あの、余り大きい声出さないで…。俺の…出ちゃいそうだから…。

そうするとまた3人でガヤガヤと議論が再開しだす…。もう色々な意味で我慢出来ない。



「…ちょっと!!イイですか!!」



俺は語気を強めて叫ぶと3人は黙りこんだ。

「え?…何?どうしたの?いきなり大声なんか出して…。」

眼鏡知的美人さんがそう語りかけてくる。



「トイレ……どこですか…?」

「「「………え?」」」



「トイレですよ!!ト・イ・レ!!便所!!厠です!!WCですよ!bathroom!Rest Room!!」



「トイレはこの扉を出て直ぐ左手にあります…けど。」

俺の気迫に気圧されたのか、受付嬢がそう答える。勝手に手を放して爆発しても知った事か!俺の股間が爆発するよりマシだ!!俺は返事をせずに玉から手を離し、無言ダッシュでトイレへ駆け込み触り慣れた馴染みの玉と棒に触れる。



……ふぅ…。ギリ間に合ったかな…。少しだけ出…言わないでおこう。

俺はマイサンの暴発を沈めて清々しい笑顔を浮かべながらトイレから出てくるとトイレ前にはまだあの3人がいた。受付嬢はまだしも、残りの男女2人は何者なんだ…。



「…あの、すみませんが、受付嬢さんは分かりますが、あなた達お二人は一体、どちら様なのでしょうか…?」



「「:………。」」



「あぁ……ごめんなさい‥。紹介もせずにいきなり出てきて驚いたわよね。私はこの都市ギルドの副ギルドマスターを務めているリッター・ワットと申します。」

眼鏡知的美人さんがそう答える。

ギルド職員の制服を着ているが、いかにも仕事が出来そうな秘書然としていて紫の髪をお団子頭にしてる。耳が少し尖っているがこの人もエルフかな?キャリアウーマンって感じで綺麗な人だ。



「そしてこちらの筋肉ダルマバカ……。ゴホン…。こちらの方がここのギルドマスターのレト・ホーム様です。」



眼鏡知的美人さんは少し落ち着いたのか、自己紹介とギルドマスターの紹介をしてくれた。

眼鏡知的美人さんがリッターさん、筋肉ダルマがレトさんね。



筋肉ダルマバカさんは筋肉モリモリ、ボディビルダーの様な2Mを超える巨体で見た目はGIカットみたいに刈り込んでおり正に軍人!って感じだ。



「ちょっ…リッタ、お前、今、バカって言ったよね?涙」

「いえ、言ってません。」



副ギルドマスターのリッターはそう言うとぷいと顔を逸らしながら中指で眼鏡を上げる動作をする。

ギルドマスター…。筋肉ダルマってワードはスルーなんだ…。



自己紹介が終わると筋肉バカ…ギルマスが口を開く。

「いきなり怖がらせちまったみたいですまなかったな。簡潔に言うとだな、お前は変態だ!!」

「…………。」



おいおい、初対面の人間に対していきなり変態呼ばわりはないんじゃねーの?変態呼ばわりされるのはアイルだけで言いいんだけど!



続けて筋肉バカ…レトは続ける。

「兎に角、こいつがさっきから言う様に、魔法の全属性適正がある奴なんてこれまで聞いた事も見た事も無かったから皆驚いてたんだよ。」

前例がない事が起きて慌てふためいたって事か。

しかし俺は当たり前の疑問をぶつけてみる。



「この玉の故障とか測定ミスとかじゃないんですか?」



そんな前例のない異常が起きるのであれば、それを測定する物を疑うのが自然の流れだ。



「いえ、それはありえません。この魔法適正オーブアイテムは、アマゾナイト級神官フランジェール様が光魔法で作成された世界に7つしかない希少レアアイテムなのです。

これは過去500年間、故障や判定を誤ると言った事がないアイテムなのです。」



500年!?500年も同じ玉を使ってんの!?それで故障しないってどんだけメンテフリーの素晴らしいアイテムなんだよ!



しかし説明を聞いてもいまいち故障や判定ミスではない理由がよく分からないが、この玉が世界に7しかないって…ドラゴン○ールじゃん(笑)神龍でも呼び出すのか?

それにアマゾ○ドットコム級ってどのランクだったか?確かコエン○イム級の直ぐ下か上だったか…?

しかしこの世界ではそんな物なのかね‥。普通に故障じゃ?と疑うのは邪推なのか…?



この玉による魔法属性の判定方法に対して俺は半信半疑だが、この人達はこれが判定を間違える筈がない!と大真面目で話をしている。



「余り釈然とはしませんが…。ではギルドマスター、私はこれからどうすればよいのでしょうか?」



「あぁ。そうだな、とりあえず冒険者登録を済ませてから私の所に来てくれ。じゃぁミリィ、受付、頼んだよ。」



「はい。承知しました。ではパンツ様、こちらへどうぞ。」



ミリィと呼ばれた受付嬢Aに連れられて別の部屋に移動する。



通された部屋は机と椅子が6組程ある部屋だ。

ちらほらと俺と同じ様な新規の冒険者と思われる連中もいる。

殆どパーティで座学を受けているが一人で受けているのは俺だけだ。



ミリィと呼ばれた受付嬢Aは俺の対面に座りながらギルドについて座学を行っている。



「ギルドの冒険者について説明させて頂きますが、ギルドについて既に知っている事はありますか?」



俺は頷き、事前にアイルから教えて貰った情報、モンスター討伐報酬、討伐したモンスターの部位も別途売却出来る事、そしてギルド冒険者ランクについて知っている旨を伝える。



「分かりました。ではその辺りの補足説明をさせて頂きますね。

モンスター討伐についてはご存じの通り、ギルドからの依頼討伐と突発的に遭遇した場合に支払われます。

またモンスターの部位毎の持ち込み買い取りについてですが、最善なのは、討伐したモンスターそのものを持ち込んだ方が買い取り額は上がります。」



倒したモンスターの死体をそのまま持ち込む!?余り気分良くないなぁ。

「それは何故ですか?」



「討伐してその場で解体して部位を持ち込んで頂いても構いませんが、どうしても取り残しの部分が出てきます。また解体後、モンスターによっては肉自体も食材として買い取りさせて頂いていますので買い取り額を上げたい場合には、モンスターをそのままに持ち込んで頂いた方がいいですね。」



モンスター…って、食材になるの…?美味いのか?食べてみたい気もするが…。



「冒険者ランクについては御認識されている内容で相違ありません。

続けて冒険者のパーティについてです。基本的に冒険者はパーティ4人~6人で組み冒険をされる事が一般的です。

当然ご承知とは思いますが、職業適性もさる事ながら、治癒魔法や攻撃魔法、戦士や剣闘士など様々な職業適正によって得手不得手があるからです。



簡単に言ってしまうと前衛が直接攻撃を行う戦士職、後衛からサポートするのが魔法職…と言った具合です。

勿論、例外もありますが、基本的な構成は変わりません。

またパーティを組む事で冒険中に仲間が死亡した場合の生還率を高められる側面もあります。」



「今の話を聞いていると、単独ソロでは活動が出来ない…と言う事でしょうか?」

「いえ、それは構いません。実際、一人や二人で活動されている方々もいらっしゃいますが、生存率が格段に落ちる、または素材の回収やドロップアイテムの回収率が落ちる為、余りお薦めはしません。」



「ドロップアイテム?」

「はい。ドロップアイテムとは、モンスターが稀に体内に宿すレアアイテムになります。先ほども話した通り、通常、討伐した際には、そのモンスターの部位、若しくは体をそのままギルドへ持ち込んでくださればそれに見合う討伐報酬を支払わせて頂いていますが、稀に魔石を宿すモンスターがおりその魔導石が非常に高値で取引されているのです。」



魔石か…。…何?それ?

「あの…すみません。魔石…魔導石について教えて下さい。」



「魔石は基本的に鉱山で発掘されるアイテムです。

普段、魔素はどこにでも大気中に漂っておりますが、一定の魔素量が多い場所で岩肌や鉱山などで結晶化します。これが普通の魔石です。



ですが魔素が大量に漂う場所を住処とするモンスターやユニークモンスター(突然変異)の体内に魔素が大量に蓄積されて結晶化する事あるのですが、それを魔導石と呼称しています。



これは魔石よりも高純度の魔力を内包しており、様々なアイテムに付与する事で魔法発動の短縮化や保有しているだけでMPを高められるなど非常に有用なアイテムです。普通の魔石でも代用可能ですが、魔力内包量が通常の魔石の4倍以上ありますのでレアアイテムとなっています。



また魔石・魔導石は宝石的な側面もありますので装飾品に加工されてマジックアイテムとして高値取引されています。

王侯貴族などがよく身に着けられていていますが、ほぼ身を守る為の魔法が付与されたマジックアイテムに使用されています。

ですが魔導石を有するモンスターはほぼCランク以上に相当し討伐する事が困難な依頼ですね。」



なるほど…。やっぱりレアアイテムを獲得する為には、それなりのリスクがあるって事か。



「モンスターのランクについて教えて下さい。」

「モンスターの討伐ランク…つまりモンスターの強さの指標となるランクになります。



A・・・尖晶石スピネル級冒険者相当以上~

B・・・金緑石クリソベリル級冒険者相当

C・・・白銀石プラチナ級冒険者相当

D・・・ゴールド級冒険者相当

E・・・シルバー級冒険者相当

F・・・貝殻シェル級冒険者相当



「あくまで目安ですが、単独で討伐出来る冒険者ランクで脅威度を表しています。勿論、基本的に冒険者はパーティを組んで戦いますので多少危険は伴いますが1~2個上ぐらいのランク討伐までは可能ですね。

ギルドからの依頼であれば事前にパーティの面談を行って討伐可能の可否判断もしますし。」

銀級冒険者であればEランクのモンスターを単独で討伐可能って事か。

もし銀級がCランクを討伐する時には冒険者ランクが低くても数人、数十人集まって討伐って事か。

アイルやソフィちゃんの戦闘力で銀級なのにそれより上の連中ってやっぱり凄いんだな…。



「最後に罰則についてお話しします。依頼を反故した場合、または達成できなかった場合は当然、未達成と言う事で、罰金と階級が下がります。また、無闇やたらに不必要な殺人を犯した場合も同様の措置、最悪はギルドから脱退となります。また依頼中の生死については、ギルドは一切関知致しませんのでご注意ください。」



生きるも死ぬも自分次第って事か…ハイリスクハイリターン…まぁ当然だな。

「有難う御座いました。大体内容は理解しました。後は何をすればいいですか?」

「はい。ギルド会員証を発行致します。明日の朝には発行出来ると思いますのでそれまでお待ち頂ければ問題ありません。」

…そういえば受付が終わったらギルマスの所に来いとか言われたな。



「あの、先ほどギルドマスターに部屋に来いと言われたのですがどちらにいけばよいでしょう?」

「はい。私がご案内します。プラーニャ?暫く受付宜しくお願いね。」

「はいはぁい~。ニッコリ」

プラーニャと呼ばれた別の受付嬢Bがヒラヒラと手を振り微笑みかける。



…おお、この子もカワイイなぁ…。しかもおっぱい大きい!おっぱいは正義だよなぁ…やっぱり。よし久しぶりあれを発動するか!

魔眼!がんみす…!!



「あの…パンツ様、こちらです。」

『眼見巣琉』を発動しようと構えたと同時に俺が付いて来ない事を不審に思ったミリィさんが申し訳なさそうに俺を誘導しようとしていた。

「あ、ああ!すみません。パタパタ…。」

俺は慌ててミリィさんの後を追い階段上がって行く。

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