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第6話 力の行使
しおりを挟む「…………え?…えええええええええッ!!いやいやいや!
確かにダメ元で1発食らわそうとは思ったけども…!?これ俺がやったの?!嘘、そんなバカな!!カ゛クフ゛ル」
もう訳が分からん!
俺は今しがた自分がやらかした事を理解できずに頭を抱えてしまう。
「あの狼を殺したのか…?と言うか、何なんだこの力…?人外の力じゃないか…。
何かの間違いじゃ…。火事場の馬鹿力なんてもんじゃない。」
「キャァー!!」
「しまった!!ソフィ!!」
アイルがそう叫ぶと俺のやらかした事に呆けている所に他のウェアウルフがソフィちゃんに攻撃を仕掛けて来た。
アイルとソフィちゃんの悲鳴で俺は、はっと我に返りウェアウルフを迎撃する為に体制を整える。
「倒せる力があるなら覚悟を決めるしかない!」
ソフィちゃんに向かって来たウェアウルフの横顔に向けて一撃を加えると、
最初に仕留めたウェアウルフと同様に上半身が吹き飛んだ。
先ほどより力は込めていなかった為か、森林一体が抉れる事はなかった。
その後、俺は目に入った狼共を闇雲に襲い掛かった。兎に角今はこのパーティを守る事しか頭にない。
何故か俺には力がある、それに伴う高揚感とまだこの世界を理解出来ていない事を振り払う様に俺は目の前に立ち塞がる狼男どもを倒していった…。
そうして数体の狼を倒していく内に少しずつではあるがこの力の使い方にも慣れ始め、不必要に狼の体を飛散させる事なく倒せる様になった。
数分後、辺り一面、ウェアウルフの死体と気絶しているウェアウルフが散乱していた。
数体、逃がした様だが。
俺が気絶させたウェアウルフは、ゲイブル達が止めを刺し、何の為か分からないが耳の一部を切り取り牙や爪を丁寧に叩き折り各々、袋に収納して死体を燃やしていた。態々火葬してやるなんて律儀なんだな…。
そんな事を思う。
しかしこれだけ動いても疲労感もスタミナ切れも感じない…どうしっちまったんだ…。
俺の身体は?それに…ここは…この世界は…何だ…?
「……ちょ…ちょっと、変態パンツ!」
「ん?変態じゃねーし!その呼び方やめて…。ショホ゛ン」
「その……前隠してよ…!!///」
「………いやぁぁぁぁ!!」
夢中で戦ってる最中、ウェアウルフの攻撃を避けた拍子に布を破かれていた事に気づいていなかった…。///
「あの…助かったわ…。あなた、本当に何者?あの…ウェアウルフを全く相手にしてなかった…。」
「…無敵の武道家、パンツァーさ。」
俺は頭を掻きながらそう答える。
アイルも今起きた事が信じられないと言う表情を浮かべながらも感謝の言葉を述べた。
俺自身も訳分からんけど、そう言う事にしておこう。説明出来ないし。
そこにソフィも傍に近づいて来た。
「あ、あの、助けてくれてありがとう…。」
「ん?あぁ、構わないよ!美少女を助けるのは男として当然だ!」
そう言うとソフィは照れながらもニコリと微笑んだ。
「いや、本当に助かったわ。我々だけなら恐らく全滅していただろうし…。
ねぇ変態パンツ、後で少し相談があるんだけど。」
「パンツだ!つか変態を取れ!…ってパンツじゃねー!パンツァーだ!!」
「いいじゃない。もうパンツで、ツァーて言いにくいし何か子供っぽくてなんか嫌だし。」
何でガキっぽいて分かるんだろう…。
「血まみれだけど、どこか怪我とかしてない?ソフィはヒーリングが使えるから治癒して貰うといいよ。
あたしはパーティの被害状況を確認してくるから。ソフィ、パンツを宜しくね。」
「うん。分かった。アイル姉ちゃんも気を付けてね。」
「うん。まだ周辺にいるかもしれないけど、残りは逃げたと思うし。」
アイルはそう言い残し、先ほどの洞窟へ戻っていった。
俺の身体には1~2体目で倒したウェアウルフの返り血がべったりと纏わりついている。
ヒーリングって、戦う前にソフィちゃんから掛けて貰った魔法か。
掠り傷一つ無いけど、してもらおーかな…。
座り込んでいる俺の傍らに来ると、ソフィは何やら詠唱を開始して掌に光を帯びたかと思うと俺の肩に手を触れた。
お?何かほんのり暖かいモノが身体に流れ込んでくる。
掠り傷一つないが、その魔法は心地よく癒される感じがした。
「どう…ですか?」
「ああ!君みたいなかわいい子に癒されて元気になったよ!!」
ソフィは顔を伏せ照れながらもクスリと笑った。
「ソフィちゃん、ヒーリングを使える魔法使いなんだね。」
ソフィはコクリと頷く。
「まだ2年ぐらいしか修めてませんけど、魔術書や村の神官様に教えて貰ってます。」
「2年の修行であれだけの魔法が使える様になるモノなの?」
戦闘開始直後のウェアウルフへ攻撃した炎の槍を思い浮かべながらそう話す。
「本来であればあれを習得するには5年程度必要らしいわよ?あの攻撃魔法…ファイアランスだったっけ?」
「「ドキッ!!」」
俺たちの後ろからいきなりアイルが突然話しかけて来た為、俺とソフィはわたわたする。
「お、お姉ちゃん!!いきなり声かけないで!びっくりしたぁ!!」
?
そこには頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるアイルがいた。
「そんな事より一緒に洞窟に来てくれない?パンツの血も洗い流した方がいいだろうし。」
そうして俺達は洞窟の方へ向かった。
洞窟について直ぐにアイルから革袋を手渡される。
「…?何これ?何か入れるのか?まさかこれで身体拭く…訳ないよね?」
「え?…まさか使った事ないの?嘘でしょ?」
何やらアイルが呆れ顔だ。そもそもいきなり革の袋を押し付けられて何をすると言うのか。
俺の記憶には小物を入れるぐらいしか思い浮かばない。
「それはマジックアイテムの「水革袋」よ。袋を少し傾けてみて。」
俺は言われるままに革袋を傾けるとその口から水が溢れて出てきた。
「うぉっ!何だこれ!!水が出てきた!!」
「当たり前じゃない。そういうアイテムなんだから。それで身体の返り血を洗い流した方がいいわ。」
この革袋は水のみを一定量保管しておけるアイテムであるらしく、アイテムボックス(品物を異空間に保管出来る魔法)と呼ばれる魔法の流用魔法との事だ。
この世界では当たり前の冒険者のMUSTアイテムとの事だ。
おいおい、魔法万能すぎるだろ…。魔法凄い。便利過ぎる。
俺もアイテムボックス使えたらいいなぁ…。
(天の声:アイテムボックスを更新しました。随時認識で使用可能です。)
ん?また変な声が聞こえた。また空耳?ま、いっか。今は身体の返り血を洗い流す事にしよう。
アイルのパーティ達も装備品を纏めていたが、死体袋が4体安置されている。
やはり先の襲撃で死亡者が出ているらしい。
返り血を洗い流した後、ゲイブルから誰の衣類なのか分からない下着と服を渡されてそれに着替える。
上着はくすんだ白っぽいシャツと下はチノパンの様な茶色のズボンだ。
恐らく亡くなった誰かの着替えなのだろう。余りいい気分ではないが、着る物がない俺に取っては真っ裸より遥かにマシだ。
そうして一段落した時にアイルとゲイブルが話しかけてきた。
「ねぇパンツ、よければ…私たちの村に帰るまで護衛を頼めない?」
もう名前をツッコむのもめんどくさいな…(笑)。
「護衛?ここの草原でレベル上げをするんじゃなかったのか?」
「そうだっんだけど、さっきのウェアウルフの襲撃で仲間を亡くしちゃったの…。
だから傷む前に早く家族達に知らせて村に弔ってやりたいんだ…。」
アイルは安置された死体袋をチラと見ながら目を落とす。
「それにこのマゾン草原に死体を長い時間放置すると魔素の影響でゾンビ化しちゃうし。」
「ぞ…ゾンビ!?何それ!!怖い!!」
「はっきり言って、俺達のパーティだけじゃまた奴等の襲撃があった時に撃退できるとは思えない。
パンツが居てくれれば心強いしそれなりの報酬も支払おう。」
ゲイブルからそう申し出があった。
「そっか…。それは気の毒だったな…。分かったよ。俺で良ければ力になるよ。
どうせここにいても仕方がないし。」
「ありがとう!助かるわ!!今日は一先ずここで野営してから朝一で移動するから宜しくね!」
いつの間にかアイルの隣にいたソフィも俺が依頼を引き受けた事に安心したのかニコニコしている。
逆に誘われて良かったと俺は安堵した。こんな物騒な所に一人取り残されてもこの世界の事を全く知らない俺には何も出来ない事に不安を覚えていたし。
この話がなければ近くの村や町まで強引にでも付いて行くつもりではあったけどさ。
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