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第2話 退社からの異世界へ初出社?
しおりを挟む……異世界生活に転移する400年前……
山奥にある工場から1台の車が帰途を急でいる‥。
俺は地方の工場で働いていた38歳独身のサラリーマン。
11月の身に刺す様な寒さのある日、休日に残業をこなし帰宅を急いでいた。
既に周りは闇夜に包まれ俺の車しか走っていない。
「世間は土曜で休みだってのに俺はこの寒い中、今日も残業…。
でも明日は休みだしビールでも飲みながら一日、先週購入したゲームをしながら一日籠るか!ムフフ。」
俺は先週購入した美少女ゲームの事を思いながらアクセルを踏み込む。
「その前に飯と肝心のビールも買って行かないとな!しかし、うちの会社ってほんと山奥にあるよなぁ…。
しかも近場に墓地もあるし…いくら土地が安いからって…こんな深夜だと今にも幽霊が出てきそうな感じ…幽霊とかって夏場のイメージだけど、今にもカーブの先に白い幽霊が…「おわかり頂けただろうか」…なんて事になりそうな場所だ…。」
俺そう思いながら近場の24時間スーパーを目指して山頂にある仕事場から山道を下り初め、中腹辺りに差し掛かったその時にそれは起きた…。
「…助けて…たす…けて…」
「え!!」
俺は突然、耳元の囁き声に驚き脇道に車を止めて周囲の様子を伺った。
「…今、何か囁き声が聞こえたよーな、聞こえなかったよーな、聞こえなかったよーね?」
耳元で囁いた声…空耳?俺は再び周囲の様子伺う…が周りは真っ暗闇の静寂…。
シンとして虫の声さえも聞こえない。
眼前には完全な闇が広がり、車のライトが照らし出すガードレールとその先の森林が広がるだけだ‥。
「おいおい、マジでやめてくれ…ホラーをネタにはするけど俺はそっち系はマジでダメなんだからさぁ…。
…気のせいだな…。仕事のし過ぎで耳鳴りでもしたんだろきっと!音楽でも聞いて落ち着こう!」
俺はそう自分に言い聞かせカーオーディオを操作し再び車を動かそうとした…。
その時
カッ…ピカァァァ!
突然、目の前が眩しく光り輝き俺は咄嗟に目を閉じた。
すると俺の身体全体を暖かな光が包みこみ、運転姿勢のまま落下していく様な気がした。
そう、例えるなら夢の中、高所から落下する感覚に近いが、その感覚がずーっと続く感覚だ。
そして俺の意識は遠ざかっていった。
……。
俺は閉じた瞼の上からでも分かる光と草と土の混ざり合う臭いを感じて目が覚めた。
「う…うぅん…何だ…?俺は事故っちまったのか?ゴールド免許保持者であるこの俺が…。」
どれぐらいの時間が経っていたのだろうか。俺は気を失っていた様だ‥。
意識が混濁した状態でヨロヨロとその場に立ち上がったが目を開いた光景に絶句した。
目を見開いた先には広大な草原が広がっていた‥。
「え…?あれ?え……?草原…?…どこ?ここ?俺さっきまで運転中だったし……。」
俺は今置かれた状況を必死に理解しようとしたが混乱していて考えが纏まらない。
「車がない…!?え?嘘だろ!?…そうだ携帯と財布は…?」
車がない事を認識した次は、スマホと財布を取り出そうと後ろのポケットに手をやるが……スカスカ……お尻スリスリ…。
「……って何で裸ぁぁぁぁぁ!!!!」
そう、俺はどうやら真っ裸で草原にいるらしい…。
「いやいやいや!おかしい…何で俺、いきなり草原で真っ裸なの?Why?え?え?何?俺運転しながら真っ裸で外に飛び出してこの草原にFlyawayしちゃったの?それとも誰かに身ぐるみ剥がされてここに放置されちゃったの?嘘でしょ!?」
俺は広大な草原に全裸でいる事で更に混乱する。
「学生の頃、飲み過ぎていつの間にか家の玄関の前で真っ裸になってた事はあったけど…素面の時に俺のジャイアントソーセージ(仮)を晒す事なんてない…筈。
俺は確かに運転していた。しかもなぜに全裸…こんな所を見られたら確実に変質者事案として通報されてしまう…。」
「最近は、幼児に挨拶や道を聞いただけで通報されて不審者として取り締まられる事もあるし…この状況は非常にヤバイ…。と、兎に角、何か着る物が必要だ…!ってこんな草原に着るものなんてある訳ねーよな…俺が来ていた服も見当たらないし…。
しかもいつの間にか昼になってる…。そもそもここは何処だ…?職場やうちの近所にこんな草原、無かった…よな。」
俺はキョロキョロと周囲を確認した。
先ほどまで闇夜で寒空だった筈の周りは、すでに昼間になっており気温もぽかぽかと春先を思わせる陽気だ。
先ほどまで混乱していて前方にしか注意していなかったが、後方には鬱蒼として森が生い茂っている。
しかもその森林は、俺が知っている近所の植生と異なる様に見えた。
「人っこ一人いないなー……しかももう昼?今の状況で人がいたらヤバいけど…?む?まさか…俺、事故って死んじまったのか?ここは死後の世界とかって言われても信じちゃいそうだけど…。
若しくはこれは先日ネットで見た明晰夢と言う奴じゃないか!?」
俺は先日ネットの夢占い検索しながらその明晰夢と言うワードに引っかかりそのサイトを見ていたのだ。
※明晰夢:潜在意識の夢を現実的に夢として認識した状態で自由に見る事が出来る事。
「そうか…これはきっと夢なんだ!多分、俺は疲労のせいで車内で仮眠をしている筈。そして俺の深層心理ではこの壮大な草原を真っ裸で駆け回る事を夢想していたに違いない…!
うん!きっとそうだ!そう思わない事にはこの状況は理解できない!!そうとなれば楽しまねばいかんな!俺のマイサン(股間)もこの草原のそよ風に揺れてそうおっしゃっておられる……。」
全裸姿で胸を張り、腰に手をやりながら俺は自分にそう言い聞かせた。
プラプラ…ソヨソヨ……。マイサンが風に揺られて気持ちがいい…。
「何て清々しい気持ちなんだ‥。こんな開放感は今までの人生で味わった事がない…。昔、人間とは本来、自然と一体となって生活していた筈だ。きっと俺の本能がそう告げているのか…。
嫌な人間関係や騒音、蟠り(わだかまり)もない大自然の世界…。
ヨシ!!この世界は俺の世界だ!!何でも出来る!!この世界は俺のものだぁーーー!!はっははははっははっはっはっはピョーンピョーンピョー…ン」
その時、頭に誰とも知らぬ声が響き渡った。
(謎の声:了承されました。随時認識設定で更新されます。)
「え?何?今の声…。囁き声…と言う割にはハッキリ聞えたな…。まぁいっか!夢出し!」
俺は夢だと確信し、この壮大な草原でスキップを度々挟みながら童心に戻り無邪気にぴょんぴょんと飛び跳ね回り時に縦横無尽に転がり回った。全裸で。
楽しかった。
現実でも出来たらいいのに…。
俺は華麗にキラキラと飛び跳ねながら森に入り込もうとした時にそれは突然起きた。
入り込もうとした森の手前でしゃがみこんでいたと思われる神官の様な衣服を纏った10代未満?前半?と思われる少女が突然、立ち上がり俺と視線が交錯したのだ…。
「え?」
「え?」
お互いの動きが止まり、時間が永遠に止まったかと誤認したかの様に思えたが…その静寂を打ち破ったのはその少女の声だった…。
「ッッ…キャァァァァッぁぁっぁっぁ!!!!」
少女は悲鳴を上げてその場に蹲うずくまってしまった。
「えぇぇぇぇえ!!俺一人じゃなかったNooooo?Why?え?ここは俺の世界、明晰夢の中ではなかったのかぁ!?いや!まて、俺の夢の中ならこのままこの美少女とも直ぐに打ち解けてからのLOVE展開に持って行ける筈だッ!俺の美少女ゲームスキルが試される瞬間ときだッ!!」
そう自分に言い聞かせて蹲り震えている少女にそっと近づく。
「ゴホン…や、やぁ…あの…お嬢さん?大丈夫?怪我はないかい?」
俺はこれでもかと言うぐらいの爽やかな笑顔で少女に手を差し伸べた。全裸で。
マイサン(股間)も本体に負けじとソヨソヨと風に揺れながら今にも少女に手(?)を差し伸べんとする様だ‥。
「いやぁぁぁっぁぁ!!」
少女は更に悲鳴を上げ両手を交差させて身体を固く握りしめ震えている。
どうやら思いきり逆効果だったらしい…。おかしい…。これは俺の明晰夢の筈…。なぜ悲鳴を上げるのだ!?
悲鳴を上げる原因は直ぐに分かった。
……股間丸出しの全裸のおっさんに満面の笑顔でいきなり話しかけられたらそら怖いわな‥幾ら俺の夢の中であったとしても逆の立場なら逃げ出す‥。
と思いを巡らせているとまた別の女の声が森の奥から聞こえてきた。
「ソフィ~!悲鳴が聞こえたけど何かあったの~!?」
森からポニーテールの快活そうな、恐らく10代半ばから後半と思われる冒険者風の女の子が現れ俺と目が合う…。
「あ…」
「あ…」
「あんたぁぁ!ソフィに何をしたぁぁぁぁ!!」
「ひぇぇっぇっぇ……」
目が合った女の子が俺に対してこの38年間でも感じた事がない程の殺気を纏わせて殴りかかってきた!
そして俺は右ストレートをまともにくらい、続けざまに左フックを受けて昏倒した所を化け物(女の子)に追撃を受けボコボコにされた。
「いいもん持ってんじゃねぇか…っておかしい…これは俺の夢じゃ…なかったのか…。」
薄れ逝く意識の中、俺はそんな事を思いながら気を失って逝った…。
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