學徒戰争(学徒戦争)〜学生は革命に動きます〜

萬榮亭松山(ばんえいてい しょうざん)

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第4章

最期

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「味方は…?」
「現在のところ優勢です……」
そう市川中将に言われても大道寺元帥も晴人も喜ばない。負けは確実であるからだ。3人は軍勢を見送った後、校舎の屋上に大道寺元帥のボディーガード3人で来て様子を見ていた。ここからだと敵と味方の動きがよく分かる。周りに建物がないお陰だ。ふと門の方を窺うと渡部が写真を撮っていた。まだ残っているとは流石に知らなかった……。すごい根性だ。誰からももう喋らなかった。突然に大道寺元帥が後ろを向いて言った。
「3人とも、ボディーガードの務め御苦労であった。もう好きにしてくれ…」
すると、大道寺元帥は向き直り、後ろではヒソヒソと声が聞こえた。
「では我ら3人、これより敵陣へ突撃します。お世話になりました。」
そう言った3人は足音を伴って階段を駆け下りて行った。10分もしないうちに3人が門から出て行く姿が見えた。それとほぼ時を同じくして体育館に数発、校舎に数発の敵の砲弾が当たった。校舎も大きく揺れ、これ以上の砲撃ではいつ崩壊するか予想するのも困難だった。市川中将と晴人は顔を見合わせると地面(校舎の屋根部分)に膝をついた。事前の約束通りだ。
「…元帥、もう間も無くこの校舎は崩れ落ちます。どうか校外へ出て……御自害を…」
しかし、それに何も答えず大道寺元帥は真っ直ぐ向いている。
「元帥っ、御撤退を」
「…………市川、他の兵士たちはもっと痛い思いをして死んでいっている…なら俺もここで苦しく圧死して死にたい…」
「なりませんっ」
市川中将は慌てて叫んだ。
「古来より、御大将はその誇りの為……何よりも下々の兵士を華々しく散らすために自害します。そしてそれを引き立てるのが下々の我々兵士の役割なのです…。源九郎判官義経公然り、織田右府公、豊臣右府公然りです……。どうか、どうか我々の為…」
それに合わせて晴人も頭を下げた。大道寺元帥はこちらを見もせず目を瞑っている。
「……分かった。脱出する」
そう上を向いて涙を見せまいと言った。そうと決まったからには早速と、晴人が先頭になって校舎内の階段を降りた。敵弾が当たったのか大きく揺れ今にも崩壊しそうだ。なんとかの思いで一階まで駆け下りて一旦、総司令部の棟へ戻り市川中将が大将旗、晴人がガソリンの入ったポリタンクを持って山伝いに校舎を出て校内を出た。校舎から300メートルほど離れた所で後ろ側で爆音を立てて崩れる音が聞こえたので3人揃って振り返る。丁度大きく校舎が崩壊した所だ。ここにいても爆風と小さな破片がパラパラと降ってくる。
「……もうここら辺でいいだろう………」
「はい、その辺りに火をつけて我ら3人が死んだ後にガソリンが移るぐらいに……」
「待てっ」
市川中将の言葉を大道寺元帥が遮る。
「安藤にはもう一つ任務をこなして貰わねばならない…。それ故、我等2人が死ねばガソリンを掛けてそれに火をつけろ。いいな」
「……分かりました。任務とは?…」
「耳を貸せ……」
「……それは本当ですか?」
「残念だがそうだ。頼めるか?」
「………………承知しました…」
「…辛い役目申し訳なく思う」
そう言うと大道寺元帥は頭を下げた。しかし、顔を上げた大道寺元帥の顔は先程とは別人のようにスッキリしていた。
「市川…介錯頼む。最後は大将らしく切腹する」
「…はい」
晴人も少し離れて正座で控えた。大道寺元帥が学ランのボタンを外してシャツを見せた。そして隠していた短刀を前に置き、鞘から抜いた。それをもう一度前に置く。もう砲撃の音も聞こえず、張り詰めた線のような静けさだった。
「天皇陛下、バンザーイ」
そう言うと大道寺元帥はサッと短刀を取って左腹に刺した。それを右に引いてくる。
「まだまだー」
次はそれを一旦抜き、ヘソの上に新たに突き立てて一気に下ろす。
「バンザ…」
「御免」
そう言って剣道部でもあった市川中将が筋よく軍刀を振り下ろした。晴人は何とか目を開け続ける。首がストンと転がる。そこで晴人が立って大将旗を外し、その首を包んで大道寺元帥の遺骸の横に置く。正直、晴人にも死ぬ覚悟が無ければ今頃発狂しているだろう。
「では、先に行って待っているぞ…」
「…はい、私も最後の任務を終えたらすぐに…」
そう言うと市川中将は頷いて拳銃を銃口を慎重に頭に付け、引き金を引く。ズドンっ、その音と共にドサっと音がして市川中将の体が崩れる。
晴人は市川中将の遺骸を大道寺元帥に並ばせ、その上にガソリンを被せ4メートルほど離れて拳銃を3発放つ。間も無く火は広がり、2人を焼き尽くしていく。2人は2人に頭を下げた。
「ありがとうございました…」
そう言ってもう見ないように踵を返す……。いよいよ最後の任務だ……。
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