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第2章
札幌出張
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次の週の日曜日の午前十時三分。晴人と大道寺元帥の2人は札幌駅のプラットホームに降り立った。2人で荷物は少ない。2人合わせ小さな鞄1つだ。もちろん、それは晴人が持っているので、大道寺元帥は切符1枚だ。改札に向かいながら大道寺元帥に再び聞いてみた。 「一体、何をしに札幌まで?」
また大道寺元帥は悪戯をするような目で晴人を見て言った。
「時期にわかるよ、今はまだ教えない」
そう言って大きく笑った。改札を出て、併設してある有名百貨店に入った。左右に広がる店には目も止めないでエレベーターホールまで行きエレベーターを待つ。
「あの大道寺元…」
大道寺元帥がそれを小さく手で制す。そして耳元で言う。
「ここで元帥はやめろ。先輩と呼べ」
「はい」
小さく返事する。大道寺元帥も小さく頷く。エレベーターに乗り、『8』を大道寺元帥が押す。途中何回か止まりながら8階に着く。降りると大道寺元帥は腕時計を見て言った。
「約束の15分前か、少し早いけど入るとしよう」
そう言って少し行った所にある喫茶店に入って一番端の札幌市街が一望できる窓側に座る。店にはカウンターが8席と晴人等を含めてテーブル席が6つある。店内にはゆっくりとしたジャズか、クラシックが流れている。おしぼりを届けに来たウェイトレスにレギュラーコーヒーを2つ注文する。大道寺元帥は目を瞑って何事かを考えている様だった。カランカランと詰まったような扉に付けている鈴の音がした。それが聞こえると大道寺元帥も目を開けた。そして大道寺元帥はもう一度自身の腕時計を見た。
「五分前か………」
そこに1人の体格の良い40代後半ぐらいの男が近づいて来た。二つ分けの口髭を蓄え、スーツを着ている。
「君等か?」
そう言って1人で納得して向かいのソファに腰を下ろした。さっ、と大道寺元帥が起立するのに倣って晴人も立って礼をする。男は満足そうに頷いて晴人等に着席を促した。
「失礼します」
そう言って2人とも座った。
「お呼び立てして申し訳ありません。本当ならばこちらから出向くものを」
「来られたら余計ややこしくなる。ここで十分だ」
そして男は先程晴人等が注文した同じウェイトレスにレギュラーコーヒーを注文する。注文が来る前に男は話を切り出した。
「話があるんだろ、早く始めてくれ」
「そうですか、では、始めさせて頂きます。ところで、僕らのことはどこまで……」
「君等の活動までかな。で、おれに話って」
「イトウさんは大変、保守的な、今で言うと皇国再建主義者でもあられる。」
イトウと言うこの男はそう言われた瞬間目を細めてこちらを見透かす様な目になった。
「まあ、もっと直球に言いましょう。僕等の目的は武力による大政奉還です」
イトウが目を今度は見開く。
「そこでイトウさんや、その方面の方々のお力をお借りしたい」
ウェイトレスがコーヒーを持ってくる。その間は各々下を向いたり窓を見たりと黙った。イトウはコーヒーに一口、口をつける。
「なぜ、武力なんだ?」
「簡単な事です。2年前に第二次大政奉還を公約にした新日本党(新党)が衆参両院で七割を超える議席を取って大勝しました。しかし、新党は様々な事を理由にして一切、大政を奉還する素振りを見せない。もはや、武力に頼るしかない。ただし、武力は脅しでなければならない。いや、それが理想ではあります………」
そういうことだったか。皇国再建部は武力による脅しで政府に大政奉還を迫ろうとしていた。しかし、皇国再建部と第二皇国再建部を合わせたとしてもきっと自衛隊には敵わない。そこでこの男の力を借りる気なのだ。大道寺元帥は話し終えて一口、コーヒーニュース口を付ける。
「で、その話を俺が断ったらどうするんだ…?」
男は厳しそうな目でこちらを睨む。
「ここまで聞いたからには……貴方を野放しには出来ない。私達にはいくらでも鉄砲玉になってくれる者がいる。国の為に…。それから、もう一つ貴方は絶対に断れない。」
そう言って大道寺元帥は誰に撮らせたのかイトウが高校生と思われる女子と歩いている様子の写真が右から丁寧に置かれていく。全部で十数枚。ほとんどが違う女性で、中には中学生から二十代前半ぐらいまでと、ややイトウの歳を考えればロリコンの域に入るだろう。イトウの額には大粒の汗が浮かんでいる。
「脅す気か?」
そう少し声を高くして言う。大道寺元帥は何も言わずにジッとイトウを見る。
「………………分かった。協力する…………」
「それは良かった。では、僕らの作戦を説明します」
そう言って大道寺元帥は写真をしまった。「詳しい日時は未定ですが、僕等は近々武力蜂起します。そうすれば、貴方は僕等を攻撃する応援を装って参戦してください。もちろんその時点では国の命令に沿って」
「寝返るんだな……」
「ええ」
「分かった。俺も元々主義は一緒なんだ、任せとけ」
と、言うとイトウはコーヒーを一気に飲み干し、次の予定があると言って帰って行った。大道寺元帥もコーヒーを一口飲む。
「分かったか?」
「はい、北北海道師団、師団長の伊東冬樹陸将ですね」
数年前の自衛隊改革で北海道に4つあった師団と旅団は2つになった。元々あった第十一旅団と第七師団が合併し、南北海道師団に、そして第二師団と第五旅団が合併し北北海道師団になった。理由は、ロシアの分裂で弱体化し、北海道が襲われる可能性が限りなく低くなったからだ。兵力は南北共に1万程だった。(その代わり政府は西に重きを置きつつある)
「伊東のことどう思った?」
「きっとありふれた官僚タイプなんでしょう。そんなに大器とは思いません」
「それが良いんだ……簡単に操れる」
「確かに……」
ああいうタイプの人間はちょっとした脅しでも簡単に思うようになる。
「さあ、そろそろ行こうか。次だ。」
「つぎ?」
「ああ、あと1人会う約束の人がいる」
アンティークな店の時計を見ると11時を2分ほど過ぎていた。百貨店を出ると駅前に出て客待ちしていたタクシーを拾った。大道寺元帥が運転手に目的地を告げると運転手は頷くだけで車を出した。こういう時に無愛想な運転手で良かった。車は北海道大学の横を過ぎ、しばらくして中世西洋風のホテルが見えて来た。そこでタクシーが止まり、大道寺元帥が支払いを済ましてタクシーを降りる。すると、大道寺元帥が電話をかけ始めた。
「もしもし、大道寺です。今ホテルの前に着きました………。はい、分かりました、では……」
と言ってスマホを仕舞う。
「405号室だ」
ホテルに入って四階まで昇る。405と言う札を確認して大道寺元帥がノックする。
「大道寺です」
すると、中から扉が開いた。
「どうぞ、お入りください」
開けたのは三十代前半ぐらいのスーツをビシッと着た細身の男だった。部屋はシングルだった。
「先生がお待ちです」
中にはベッドにもう1人、六十代くらいの少し太った男が座っていた。その前に大道寺元帥と2人並んで立つ。さっきは背を向けて座っていたので分からなかったが、顔を見て驚いた。衆議院議員で現財務大臣で、外務大臣なども歴任した大倉源三郎だった。
「大倉先生、早速ですが、ご返事をお聞かせ願いたい」
「焦るねえ、まあ良い。君等の作戦に、乗らせてもらうよ。なーに、手順は分かってるから心配いらない」
「そうですか、では国会の事は先生にお任せします」
「分かった。頼まれよう」
そう言って大倉は満足そうに頷いた。
「先生、あれも」
きっと秘書と思われる先程の男が大倉に声をかける。
「おっ、そうだったそうだった。なーに、安井会長からの預かり物があるんだ。」
「ほー、安井会長ですか」
安井会長。安井グループ会長の安井和弘。安井グループは、戦前の安井財閥で、戦後の財閥解体で一度解体されたが、三十年ほど前に現会長の父が再統合し、日本一の規模を誇る企業になった。その現会長の安井和弘は長尾学園の卒業生で、何を隠そう皇国再建部の創始者でもあり、皇国再建部の名誉部長だ。すると秘書の男がバスルームからテレビドラマなどで見るジュラルミンケースを2つ出してくる。
「意味は、分かるね?」
「はい、このような橋渡しの様なマネをさせてしまって申し訳ありませんでした」
「それから、これも」
そう言って大倉はスーツ内から灰色の封筒に入った手紙を大道寺元帥に渡した。
「では、これで我々は失礼します」
大道寺元帥がジュラルミンケースを2つ持って部屋を出た。晴人もそれに続く。
「元……。先輩、替わりましょう。」
「ん、じゃあ1つだけ頼むよ」
「いや、もう1つも」
「君はボストンバッグもあるんだから1つでいいよ」
そしてまたホテルの前でタクシーを拾って札幌駅に戻った。遅くなるようだったら学校を休んで一泊するつもりだっだが、どうやらその必要は無さそうだ。2時過ぎの電車に乗れた。乗ると直ぐ大道寺元帥は封筒を開いて手紙を5分ほどかけて読んでいた。
「安藤君も読むかい?」
「では、失礼して」
手紙を大道寺元帥から貰って開く。拝啓から始まってとても綺麗な字体で書かれている。
『拝啓新春の候……(略)』
文章を要約すると自分の作った分がとうとう動くと連絡を貰ったので私も全力で後押しをしたい。金の心配はいらない。後で見繕って送る。武器などについても受け継いで来た物で足りなければいつでも相談に乗る。という文だった。
『受け継いで来た物』とは、いつも会議を行う小屋の近くの洞窟に隠してある旧日本軍が残した武器で、代々皇国再建部が整備してきた物だった。三八式歩兵銃2100挺。南部式大型自動拳銃250挺。九九式軽機関銃55挺。九四式三七mm速射砲7門。九六式榴弾砲3門。手榴弾300発。などなどの武器だ。実はこらら、旧日本軍が本土決戦や、ロシア侵攻に備えて蓄えた物を終戦時に隠した物らしく、修理を行い使えるようにした。また、その弾も豊富で、軍備は十分だ。それに、大日本皇国から贈られた機関銃もある。
「安藤君」
「はいっ」
「これからいよいよ作戦も中盤を迎える。君が生徒会長になって、そしたらいよいよ作戦も終盤になる。革命戦争だ。日本をもう敗戦国とは呼ばせない」
「はい」
「その途中では半端でない人が死ぬだろう。だが、この革命を止めることは許されない、その為に私は鬼になるら、いよいよだ」
「はいっ」
大道寺元帥は鬼とは思えない明るい目でこちらを見て大きく頷いた。
また大道寺元帥は悪戯をするような目で晴人を見て言った。
「時期にわかるよ、今はまだ教えない」
そう言って大きく笑った。改札を出て、併設してある有名百貨店に入った。左右に広がる店には目も止めないでエレベーターホールまで行きエレベーターを待つ。
「あの大道寺元…」
大道寺元帥がそれを小さく手で制す。そして耳元で言う。
「ここで元帥はやめろ。先輩と呼べ」
「はい」
小さく返事する。大道寺元帥も小さく頷く。エレベーターに乗り、『8』を大道寺元帥が押す。途中何回か止まりながら8階に着く。降りると大道寺元帥は腕時計を見て言った。
「約束の15分前か、少し早いけど入るとしよう」
そう言って少し行った所にある喫茶店に入って一番端の札幌市街が一望できる窓側に座る。店にはカウンターが8席と晴人等を含めてテーブル席が6つある。店内にはゆっくりとしたジャズか、クラシックが流れている。おしぼりを届けに来たウェイトレスにレギュラーコーヒーを2つ注文する。大道寺元帥は目を瞑って何事かを考えている様だった。カランカランと詰まったような扉に付けている鈴の音がした。それが聞こえると大道寺元帥も目を開けた。そして大道寺元帥はもう一度自身の腕時計を見た。
「五分前か………」
そこに1人の体格の良い40代後半ぐらいの男が近づいて来た。二つ分けの口髭を蓄え、スーツを着ている。
「君等か?」
そう言って1人で納得して向かいのソファに腰を下ろした。さっ、と大道寺元帥が起立するのに倣って晴人も立って礼をする。男は満足そうに頷いて晴人等に着席を促した。
「失礼します」
そう言って2人とも座った。
「お呼び立てして申し訳ありません。本当ならばこちらから出向くものを」
「来られたら余計ややこしくなる。ここで十分だ」
そして男は先程晴人等が注文した同じウェイトレスにレギュラーコーヒーを注文する。注文が来る前に男は話を切り出した。
「話があるんだろ、早く始めてくれ」
「そうですか、では、始めさせて頂きます。ところで、僕らのことはどこまで……」
「君等の活動までかな。で、おれに話って」
「イトウさんは大変、保守的な、今で言うと皇国再建主義者でもあられる。」
イトウと言うこの男はそう言われた瞬間目を細めてこちらを見透かす様な目になった。
「まあ、もっと直球に言いましょう。僕等の目的は武力による大政奉還です」
イトウが目を今度は見開く。
「そこでイトウさんや、その方面の方々のお力をお借りしたい」
ウェイトレスがコーヒーを持ってくる。その間は各々下を向いたり窓を見たりと黙った。イトウはコーヒーに一口、口をつける。
「なぜ、武力なんだ?」
「簡単な事です。2年前に第二次大政奉還を公約にした新日本党(新党)が衆参両院で七割を超える議席を取って大勝しました。しかし、新党は様々な事を理由にして一切、大政を奉還する素振りを見せない。もはや、武力に頼るしかない。ただし、武力は脅しでなければならない。いや、それが理想ではあります………」
そういうことだったか。皇国再建部は武力による脅しで政府に大政奉還を迫ろうとしていた。しかし、皇国再建部と第二皇国再建部を合わせたとしてもきっと自衛隊には敵わない。そこでこの男の力を借りる気なのだ。大道寺元帥は話し終えて一口、コーヒーニュース口を付ける。
「で、その話を俺が断ったらどうするんだ…?」
男は厳しそうな目でこちらを睨む。
「ここまで聞いたからには……貴方を野放しには出来ない。私達にはいくらでも鉄砲玉になってくれる者がいる。国の為に…。それから、もう一つ貴方は絶対に断れない。」
そう言って大道寺元帥は誰に撮らせたのかイトウが高校生と思われる女子と歩いている様子の写真が右から丁寧に置かれていく。全部で十数枚。ほとんどが違う女性で、中には中学生から二十代前半ぐらいまでと、ややイトウの歳を考えればロリコンの域に入るだろう。イトウの額には大粒の汗が浮かんでいる。
「脅す気か?」
そう少し声を高くして言う。大道寺元帥は何も言わずにジッとイトウを見る。
「………………分かった。協力する…………」
「それは良かった。では、僕らの作戦を説明します」
そう言って大道寺元帥は写真をしまった。「詳しい日時は未定ですが、僕等は近々武力蜂起します。そうすれば、貴方は僕等を攻撃する応援を装って参戦してください。もちろんその時点では国の命令に沿って」
「寝返るんだな……」
「ええ」
「分かった。俺も元々主義は一緒なんだ、任せとけ」
と、言うとイトウはコーヒーを一気に飲み干し、次の予定があると言って帰って行った。大道寺元帥もコーヒーを一口飲む。
「分かったか?」
「はい、北北海道師団、師団長の伊東冬樹陸将ですね」
数年前の自衛隊改革で北海道に4つあった師団と旅団は2つになった。元々あった第十一旅団と第七師団が合併し、南北海道師団に、そして第二師団と第五旅団が合併し北北海道師団になった。理由は、ロシアの分裂で弱体化し、北海道が襲われる可能性が限りなく低くなったからだ。兵力は南北共に1万程だった。(その代わり政府は西に重きを置きつつある)
「伊東のことどう思った?」
「きっとありふれた官僚タイプなんでしょう。そんなに大器とは思いません」
「それが良いんだ……簡単に操れる」
「確かに……」
ああいうタイプの人間はちょっとした脅しでも簡単に思うようになる。
「さあ、そろそろ行こうか。次だ。」
「つぎ?」
「ああ、あと1人会う約束の人がいる」
アンティークな店の時計を見ると11時を2分ほど過ぎていた。百貨店を出ると駅前に出て客待ちしていたタクシーを拾った。大道寺元帥が運転手に目的地を告げると運転手は頷くだけで車を出した。こういう時に無愛想な運転手で良かった。車は北海道大学の横を過ぎ、しばらくして中世西洋風のホテルが見えて来た。そこでタクシーが止まり、大道寺元帥が支払いを済ましてタクシーを降りる。すると、大道寺元帥が電話をかけ始めた。
「もしもし、大道寺です。今ホテルの前に着きました………。はい、分かりました、では……」
と言ってスマホを仕舞う。
「405号室だ」
ホテルに入って四階まで昇る。405と言う札を確認して大道寺元帥がノックする。
「大道寺です」
すると、中から扉が開いた。
「どうぞ、お入りください」
開けたのは三十代前半ぐらいのスーツをビシッと着た細身の男だった。部屋はシングルだった。
「先生がお待ちです」
中にはベッドにもう1人、六十代くらいの少し太った男が座っていた。その前に大道寺元帥と2人並んで立つ。さっきは背を向けて座っていたので分からなかったが、顔を見て驚いた。衆議院議員で現財務大臣で、外務大臣なども歴任した大倉源三郎だった。
「大倉先生、早速ですが、ご返事をお聞かせ願いたい」
「焦るねえ、まあ良い。君等の作戦に、乗らせてもらうよ。なーに、手順は分かってるから心配いらない」
「そうですか、では国会の事は先生にお任せします」
「分かった。頼まれよう」
そう言って大倉は満足そうに頷いた。
「先生、あれも」
きっと秘書と思われる先程の男が大倉に声をかける。
「おっ、そうだったそうだった。なーに、安井会長からの預かり物があるんだ。」
「ほー、安井会長ですか」
安井会長。安井グループ会長の安井和弘。安井グループは、戦前の安井財閥で、戦後の財閥解体で一度解体されたが、三十年ほど前に現会長の父が再統合し、日本一の規模を誇る企業になった。その現会長の安井和弘は長尾学園の卒業生で、何を隠そう皇国再建部の創始者でもあり、皇国再建部の名誉部長だ。すると秘書の男がバスルームからテレビドラマなどで見るジュラルミンケースを2つ出してくる。
「意味は、分かるね?」
「はい、このような橋渡しの様なマネをさせてしまって申し訳ありませんでした」
「それから、これも」
そう言って大倉はスーツ内から灰色の封筒に入った手紙を大道寺元帥に渡した。
「では、これで我々は失礼します」
大道寺元帥がジュラルミンケースを2つ持って部屋を出た。晴人もそれに続く。
「元……。先輩、替わりましょう。」
「ん、じゃあ1つだけ頼むよ」
「いや、もう1つも」
「君はボストンバッグもあるんだから1つでいいよ」
そしてまたホテルの前でタクシーを拾って札幌駅に戻った。遅くなるようだったら学校を休んで一泊するつもりだっだが、どうやらその必要は無さそうだ。2時過ぎの電車に乗れた。乗ると直ぐ大道寺元帥は封筒を開いて手紙を5分ほどかけて読んでいた。
「安藤君も読むかい?」
「では、失礼して」
手紙を大道寺元帥から貰って開く。拝啓から始まってとても綺麗な字体で書かれている。
『拝啓新春の候……(略)』
文章を要約すると自分の作った分がとうとう動くと連絡を貰ったので私も全力で後押しをしたい。金の心配はいらない。後で見繕って送る。武器などについても受け継いで来た物で足りなければいつでも相談に乗る。という文だった。
『受け継いで来た物』とは、いつも会議を行う小屋の近くの洞窟に隠してある旧日本軍が残した武器で、代々皇国再建部が整備してきた物だった。三八式歩兵銃2100挺。南部式大型自動拳銃250挺。九九式軽機関銃55挺。九四式三七mm速射砲7門。九六式榴弾砲3門。手榴弾300発。などなどの武器だ。実はこらら、旧日本軍が本土決戦や、ロシア侵攻に備えて蓄えた物を終戦時に隠した物らしく、修理を行い使えるようにした。また、その弾も豊富で、軍備は十分だ。それに、大日本皇国から贈られた機関銃もある。
「安藤君」
「はいっ」
「これからいよいよ作戦も中盤を迎える。君が生徒会長になって、そしたらいよいよ作戦も終盤になる。革命戦争だ。日本をもう敗戦国とは呼ばせない」
「はい」
「その途中では半端でない人が死ぬだろう。だが、この革命を止めることは許されない、その為に私は鬼になるら、いよいよだ」
「はいっ」
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