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第2章 二つ目の事件( 未来 中学生)
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あの後の会場はカオスだった。警備員が総出で激高した審査員を止めていたし、姉はテレビ局の人に連れて行かれていた。観客やその他出場者には調査をし、後日真実を明らかにすることを告げて会場から追い出された。恐らくテレビ放送も途中で止まっているだろうが、それでも、どこまで流れていたのか不明だ。今後、姉が料理人として活動するにはこの誤解を解かなければならないだろう。なんせ、流れたのは全国放送なのだから。
「お姉ちゃんが、盗作なんてするはずない」
追い出されたテレビ局の廊下で口にした未来の言葉に千鶴がチラリと視線を向ける。
「というより、そんな必要ない、だな」
そう口にした千鶴の表情がいつも以上に冷たく、鋭い物だった。千鶴はものすごく怒っているらしい。
「お姉ちゃん、レシピの力があるから、人から盗む必要ないよね。料亭で料理を食べて、その料理のレシピを思いついたとしてもこんな場に持ってくるとは思えないし……」
そんなことをしなくても、奈々子にはレシピのストックが山のようにあった。その中の1つを選べばいいだけだ。
「未来、お前夢で見ろ」
「え?」
「奈々子に何があったのか、何故奈々子のレシピが外に漏れたのか、夢で見ろ」
千鶴の言葉に唖然と目を瞬く。夢で見ろと言われても、未来の夢は勝手に見るものであって、好きな夢を見れるわけではない。制御なんてできないのだ。
「む……無理だよ……」
「無理じゃない、やれ」
バンッと近くの壁を千鶴が蹴りつけた。その音に何人かが振り向いたが関わりたくないと思ったのか早々に目をそらしてその場を去っていく。
「で、でも……」
「やれ」
「私は見たい夢が見れるわけじゃ……」
「お前、Ariaに所属してどのくらい経った?」
「半年、だけど」
「半年いるのなら、そろそろAriaの役に立て。頭を振り絞れ。おまえのその力、人を傷つけたという実績だけでいいのか?姉を守る剣と楯にしようという気はないのか?」
「で……」
「姉を守りたければ、死ぬ気で力を制御して見せろ!!」
怒鳴りつけるように言われ未来は小さく息を呑んだ。姉を守る近道、たぶん道筋の一つでしかないだろうが、でも、Ariaの人間として力を使うのなら、今がその時なのだろう。
「三波、さん……。お姉ちゃんを陥れた人間が見つかったら、どうするの?」
恐る恐る尋ねた未来は、直後その問いを後悔した。千鶴は冷たい、今にも凍えそうな笑みを浮かべている。
「破滅」
千鶴が何をどうするつもりなのか、これ以上聞きたくなかった。だから、未来は慌ててその場を離れる。夢を見れるか解らないが、やらなければならない事が決まった以上、未来にはのんびりしているだけの時間的余裕はない。
「お姉ちゃんが、盗作なんてするはずない」
追い出されたテレビ局の廊下で口にした未来の言葉に千鶴がチラリと視線を向ける。
「というより、そんな必要ない、だな」
そう口にした千鶴の表情がいつも以上に冷たく、鋭い物だった。千鶴はものすごく怒っているらしい。
「お姉ちゃん、レシピの力があるから、人から盗む必要ないよね。料亭で料理を食べて、その料理のレシピを思いついたとしてもこんな場に持ってくるとは思えないし……」
そんなことをしなくても、奈々子にはレシピのストックが山のようにあった。その中の1つを選べばいいだけだ。
「未来、お前夢で見ろ」
「え?」
「奈々子に何があったのか、何故奈々子のレシピが外に漏れたのか、夢で見ろ」
千鶴の言葉に唖然と目を瞬く。夢で見ろと言われても、未来の夢は勝手に見るものであって、好きな夢を見れるわけではない。制御なんてできないのだ。
「む……無理だよ……」
「無理じゃない、やれ」
バンッと近くの壁を千鶴が蹴りつけた。その音に何人かが振り向いたが関わりたくないと思ったのか早々に目をそらしてその場を去っていく。
「で、でも……」
「やれ」
「私は見たい夢が見れるわけじゃ……」
「お前、Ariaに所属してどのくらい経った?」
「半年、だけど」
「半年いるのなら、そろそろAriaの役に立て。頭を振り絞れ。おまえのその力、人を傷つけたという実績だけでいいのか?姉を守る剣と楯にしようという気はないのか?」
「で……」
「姉を守りたければ、死ぬ気で力を制御して見せろ!!」
怒鳴りつけるように言われ未来は小さく息を呑んだ。姉を守る近道、たぶん道筋の一つでしかないだろうが、でも、Ariaの人間として力を使うのなら、今がその時なのだろう。
「三波、さん……。お姉ちゃんを陥れた人間が見つかったら、どうするの?」
恐る恐る尋ねた未来は、直後その問いを後悔した。千鶴は冷たい、今にも凍えそうな笑みを浮かべている。
「破滅」
千鶴が何をどうするつもりなのか、これ以上聞きたくなかった。だから、未来は慌ててその場を離れる。夢を見れるか解らないが、やらなければならない事が決まった以上、未来にはのんびりしているだけの時間的余裕はない。
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