勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ

文字の大きさ
上 下
27 / 40

27.対面 【勇者side⑨】

しおりを挟む

 午後5時45分。



 オレとシャル姉に、ツカサは。


 『絶望の崖』という名の、断崖絶壁にいた。



 ハンター・ハルカをブチ殺し。


 いまいましい『魔王の呪い』から、解き放たれるために。



「しっかしよ。こんな場所を処刑場に選ぶとは、シャル姉も趣味が悪いぜ」



 オレは肩をすくめた。



「なーに言ってるの、ダイトくん! どうせ処刑するなら、ふさわしい場所をチョイスしないと!」



 シャル姉は、ご満悦の様子で笑っている。



「崖の先端で、夕日を浴びながら、心を絶望に包まれて爆死! とか、最っ高にステキな死に方でしょ?」



「素晴らしいです……シャルロッテさん!」



 ツカサが感激のまなざしで、シャル姉を見つめた。



「でしょでしょ! さっすがツカサちゃん! わかってるぅ!」



 シャル姉はツカサと手を取り合い、キャッキャウフフと盛り上がっている。



「ったく、この女どもは……」



 オレはあきれたが。


 理にもかなってるのが、恐ろしいところだ。



「ジョウカーの魔石の効果は、5メーター先への対象召喚。ただし、即死場所への召喚はNGだったな」



 そして、今。



「オレたちの5メーター先は、崖の先端。もちろん、即死はしない」



 でもって。



「少しでも後退すりゃあ、崖下に真っ逆さまに転落……ってわけだ」



 さらに。



「オレたちに突っ込んできて、横をすり抜るのもムリだ」



 なぜなら。



「半径2メーター以内にオレたちが侵入すれば、ヤツの首輪は起爆条件を満たすからな」



 プラス。



「ヤツの精神状態は、ボロボロのはずだ」



 なぜかというと。



「いつ追手が来るかわからない状況で、丸2日以上が過ぎてんだからな。ロクに寝てねえはずだぜ……!」



 それに引き換え。



「オレたちは、さっきまでゆっくり寝させてもらったからな。精神状態の差も、圧倒的だぜ……クククク!」



 オレの口から、笑みがこぼれた。



「カンペキだ! この状況なら、どんなボンクラでも負ける要素はねえ! クハハハハハハハ!」



 ひとしきり笑ったあとで。



「おっしゃ! そろそろはじめようぜ! お待ちかねの処刑ってヤツをよ!」



 オレは、シャル姉とツカサに声をかけた。



「はいはーい! 待ってましたー!」



「いつでもどうぞ♪」



「っしゃあ! ご対面の時間だぜ! 出てこいハンター・ハルカぁ!」



 オレは手にした、魔石を砕いた。


 その瞬間。




 ブアアアアアアアアァァ!




 前方に、闇が広がって。


 すぐに、それが収まると。




「……なっ!? ここは!?」




 そこには弓を手にした女が、驚きの表情で立っていた。



 赤茶色の髪。


 バツグンのルックスに、大きく見開かれた黒い瞳。



 まちがいねえ!


 魔王城のスクリーンで見た、あの女だ!



「もらったぜ! ハンター・ハルカああああああぁぁ!」



 すかさずオレは、前方へと一気にダッシュした!



 作戦通りだ!



 ハンター・ハルカが状況を把握できないスキに、ダッシュで突っ込み!


 ヤツの半径2メーター以内に侵入して、首輪の起爆条件を満たす!



(勝った!)



 と思った瞬間。



「ちいっ!」



 鋭い舌打ちとともに。


 ハンター・ハルカの弓から、勢いよく矢が放たれた。




 ビシュッ!




「うおっ!?」



 ギリギリのところで、オレは矢をかわしたが。


 立て続けに二の矢、三の矢が、オレに向かって飛んでくる。




 ビシュッ! ビシュッ! ビシュッ!




「うおわああああああっ!?」



 たまらず、オレは後退した。



「ちょっとダイトくん! なにやってんの! とっとと突っ込んじゃってよぉ!」



「む、無茶言うんじゃねえ! あんなんで近づけるかよ!」



 怒鳴るシャル姉に、オレは怒鳴り返した。


 そんなオレたちを。



「あなたたちが、追手?」



 ハンター・ハルカは、クールな視線で見定めると。



「ムダな戦いはやめた方がいい。あなたたちでは、わたしに勝てない」



 なんて、ほざきやがった!



「ざけんじゃねえよ!」



 オレは絶叫する。



「オレには、テメエを殺さねえといけねえ理由があるんだ! お前を殺せば、魔王ジョウカーを殺せる! そのあとで、あのクソ生意気な解呪師のマモル・フジタニも――」



「マモル・フジタニ!?」



「は?」



 なぜか。


 どういうわけか。


 ハンター・ハルカは、反応を示した。



「あん……?」



 眉をひそめるオレに向かい。



「今、マモル・フジタニって言ったわね!? 知ってるの!? 生きてるの!? その人は今、どこにいるの!?」



 顔色を変え、ハンター・ハルカが叫ぶ。


 何だコイツ?


 マモルの知り合いか?



「マモルがどこにいるか!? そんなの、オレの知ったこっちゃねえよ!」



 オレも、ハンター・ハルカに叫び返した。



「ま、すぐに地獄へ連れてくけどな! テメエとジョウカーをブッ殺したあとによ!」



「……そう」



 ぽつりとつぶやくと。


 ハンター・ハルカの瞳に、鋭さが宿った。



「それならわたしは、ここで死ぬわけにはいかない」




 ビシュッ! ビシュッ! ビシュッ!




「のわああああぁぁっ!?」



「ひゃああああっ!?」



「くうっ!?」



 矢が連射され、次々とオレたちに飛んでくる。



「ちくしょう! 何て速さなんだよ!」



 クソ、それなら!



「おいシャル姉!」



「めーーいーーれーーいーーするなって言ってんでしょう! わかってるよ!」



 シャル姉はイラつきながら、防御魔法を唱える。



「ダーク・ホーリーウォール!」




 パシュン!




 オレたちの前方に、黒い光のカベが展開された。


 矢の嵐は光のカベにさえぎられ、次々に消滅していく。



「見た見たー? シャルちゃんの手にかかれば、ヘッポコ弓矢なんてどうってことないしー!」



 勝ち誇るシャル姉だったが。



「それはどうかしら」



 ハンター・ハルカは冷静に、次の矢を放つ。



「ペネトレイト・アロー!」




 ギュイイイイイイイイン!




 紫色に輝く矢が、超速で光のカベにブチ当たると。




 バギイイィィィィイイン!




 光のカベは音を立て、コナゴナに砕け散った。



「なにっ!?」



「ウソっ!?」



 驚くオレと、シャル姉に向かい。




 ビシュッ! ビシュッ! ビシュッ!




 ふたたびハンター・ハルカの矢が、雨あられと襲いかかる。



「ツ、ツカサ! 魔法だ! 魔法でヤツをブッ倒せ!」



「だ、ダメです! 攻撃が速すぎて、詠唱するスキがありません!」



 ツカサは、矢から身をかわすので精いっぱいの様子だ。




 ビシュッ! ビシュッ! ビシュッ!




 矢は途切れることなく、次々とオレたちに飛んできて……。




 ドズッ!




「うぎゃああああああぁぁ!?」



 激痛に、オレは絶叫した。


 1本の矢が、オレの右腕を貫いたのだ……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

処理中です...