勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ

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09.成果

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 それから2時間後、カフェの店内で。



「本当に2時間で、準備できちゃうものなのね……」



「ワタシ、とってもワクワクしてます!」



 ナヅキとカンナギの、期待のまなざしを浴びつつ。


 僕は、練り上げた集客プランを披露する。



「まずは、店の名前だけど」



 僕は、考えた店名を口に出す。



「『カフェ・神月かんづき』っていうのはどうかな?」



「カンヅキ……」



 ナヅキが噛みしめるように、店名を口にした。



「ネーミングの理由、聞いてもいいですか?」



 カンナギが聞く。



「もちろん。まず、『神』っていう文字は使いたかった。ふたりは『死神』だから、そこは残しておきたくてさ」



 で。



「あとは。ふたりの『名前の一部』を、うまく使えないかと思ってね」



「ワタシ、カンナギの『カン』と」



「私、ナヅキから『ヅキ』、というわけね?」



「ああ。くっつけてから、当て字にハメてみた」



「フジタニくんは本当に、いろいろ考えてくれるのね」



 ナヅキがにっこり笑った。



「もちろん、私は賛成よ」



「ワタシも、すっごく気に入りました! 異論はありません!」



 あ、そうだ。



「ちなみに正式名称は、『くつろぎカフェ・神月へようこそ! ナヅキとカンナギのおもてなしでお客様に癒しを与えます――」



「だ、大丈夫よ! 『カフェ・神月』だけで大丈夫!」



「ワ、ワタシも同意です!」



「……そう?」



 うーん、まあいいか。


 リネームは、いつでもできるしな。



「じゃあ、次はコレを」



 僕は、ふたりにコスチュームを渡した。


 ちょっぴり露出多めの、メイド服だ。



「『いにしえの勇者パーティー』の力で、店のコスチュームを作ってみたんだ」



「フジタニくん、そんなことまでできるの!?」



「うん。『超速アイテム・クリエイト』って能力だよ」



「すごいわね……」



 感心するナヅキに対し。



「でも、どうしてメイド服なんですか?」



 首をかしげるカンナギに、僕は答える。



「さっき外に出て、ホープタウンで流行ってるカフェをリサーチしてきたんだ。コスチュームはみんな、こんな感じのメイド服だった」



「そんなことまで……してくれたの」



 ナヅキの瞳に、感動の光が宿る。



「ベストは尽くさないと。流行に乗って損はないよ」



「本当にありがとう……フジタニくん」



 ナヅキは頭を下げると、コスチュームを手に取るが。



「え」



 ぎょっとした顔で、固まってしまった。



「ちょ、ちょっと待って! コレ、スカートが短すぎるわ! それに袖がないから、手を上げたらワキが見えちゃう!」



「なーに恥ずかしがってるんですか、ナヅキさん!」



 カンナギが、ナヅキの手をグイグイ引っ張る。



「いとしのマモルさんへの、アピールチャンスですよ! ほらほら、早く着替えましょう!」



「カ、カンナギ! そんなに引っ張らないで!」



 ふたりはもみ合いながら、店の奥に消えて行く。



「ああしてると。人間の女の子と、何も変わらないよなぁ」



 そんなふたりを、微笑ましく眺めてるうちに。



「……ハルカに、ユウリやアイにも。生きてれば、こんな未来があったはずなのにな」



 ふと。


 幼い頃の思い出が、頭によぎった。



 妹や、ふたりの幼なじみと。


 将来の夢を語り合った、思い出が。




『アイね! おっきくなったらメイドさんになる! ただのメイドさんじゃないよ! 戦えるメイドさんになって、マモルさんやみんなを守るの!』



『それじゃあユウリは、魔法剣士になるわ! 剣にカミナリをドカーン! って落として、ズバッ! て敵をやっつけるの! かっこいーでしょ!』



『ハルカは、弓使いになろうかな。みんなの後ろから、ビシュッて矢を撃って助けるんだ』



『僕は、やっぱり解呪師かな。鑑定士さんに見てもらったけど、すごい才能を持ってるって言われたし』



『えー? ちょっと地味じゃない? ユウリ、マモルには勇者が似合うって思うけどなー』



『わたしは、解呪師もいいと思う。ハルカが大変な呪いにかかったとき、お兄ちゃんに助けてもらうの。そういうの、あこがれちゃうな』



『アイ、いいこと思いついたよ! 解呪師と勇者、両方なっちゃえばいいんだよ! マモルさんなら、絶対できるから!』




「……そうだ」



 僕の心に、復讐の炎がくすぶる。



「みんなの無念を晴らすためにも……村を焼いた犯人は、絶対に僕が見つけて――」



「……フジタニくん?」



 はっ、と僕は我に返った。



「大丈夫ですか? ずいぶん怖い顔をしてましたけど……」



 ナヅキとカンナギが心配そうに、僕の顔をのぞき込んでいる。



「あ……ああ。ごめん、何でもないよ」



 いけないいけない。


 今考えるべきなのは、カフェの成功だ。


 僕はパチンと、頬を叩く。



「うん! ふたりとも、コスチュームがメッチャ似合ってるよ! 最高にかわいい!」



 僕の感想を受け。



「かっ……かわっ……!?」



 ナヅキは顔を真っ赤にし。



「そ、そんなこと言われると、さすがに照れますねぇ……」



 カンナギは頬を染め、もじもじしていた。



 そんなふたりを眺めつつ。


 僕は、最後の詰めに取り掛かるべく。



 『いにしえの勇者パーティー』の力を発動する。



「いにしえの勇者たちよ! 僕に力を! 超速スケッチ!」



 僕は超高速で、紙にナヅキとカンナギのイラストを描き出すと。


 店名を加え、事前に調べた周辺地形を地図に起こし。


 もろもろプラスして、チラシを1枚完成させた。



 からの。



「いにしえの勇者たちよ! 僕に力を! 超速アイテム・コピー!」



 僕は超高速で、チラシを複製した。


 一瞬で、チラシの山ができあがる。



「それじゃ今から、コレを配って宣伝してくるよ! ふたりのビジュアルなら、集客力はバッチリさ!」



 そう言い残し。


 さっそうとカフェを出ていく、僕の背後で。



「すごすぎ……」



「ですねぇ……」



 ナヅキとカンナギの、あっけに取られた声が聞こえた。





   □   □   □





 それから、しばしの時間が経って。


 チラシを配り終えた僕が、カフェに戻ると。


 そこには。



「行列ができてる……な」



 カフェの中に入ると。


 さっきまでカラッポだった、店内は。



「満席……だな」



 見込み通り……いや。


 見込み以上の成果だった。



「あなたって、ホントにすごい人なのね……」



 ナヅキが感激の表情で、僕を出迎えた。



「たいしたことはしてないよ。たまたまこのタイミングで、ナヅキたちの努力が実っただけさ」



「ううん。全部、マモルくんのおかげよ」



 ん?



「あれ? さっきまで僕、ナヅキに『フジタニくん』って呼ばれてなかった?」



「気のせいよ、マモルくん」



 なぜかナヅキは、潤んだ瞳で。


 じいっと僕を、見つめてくるのだった……。


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