4 / 40
04.序曲 【勇者side①】
しおりを挟む「覚悟しやがれ、魔王ジョウカー! ここがテメエの墓場だぜ!」
魔王城、王座の間で。
オレ、勇者ダイトは。
サリィ、シャル姉、ツカサを従え、魔王ジョウカーと向き合っていた。
「……へへっ! へへへへへ!」
オレの口からは、笑いがもれる。
いきなり半年前に現れ、人類に宣戦布告してきた『魔王』ジョウカー。
どんなヤツかと思っていたが……。
「たいしたことなさそうだな!」
体格は、成人男性と大差がない。
全身を白いローブでくるみ、顔には仮面をつけている。
仮面の額部分には、闇色のクリスタルがギラギラと光を放っているが。
「今のオレの敵じゃねえ! こんな弱っちそうなヤツをカモるだけで、オレは英雄ってか! まったく、笑いが止まらねえぜ!」
そんなオレに向かい。
「クククク……どうやら、口だけは達者なようだね」
ジョウカーが笑いながら、続ける。
「しかし、まさかキミたちは。本気でこのワタシ、『魔王ジョウカー』に勝てると思っているのかな? その浅はかさには、恐れ入るよ」
「んだと……!」
「聖剣ブルトガング、魔剣グラム、聖杖ワルキューレ、魔杖アポカリプス。確かに、キミたちの武器は強力だ。だが……」
ジョウカーは肩をすくめる。
「キミたちごときの力で、その武器の性能を引き出せるとは思えないね」
「……どういう意味だ?」
「深い意味はない。言葉通りに、受け取ってもらってかまわないよ?」
「テメエ……!」
オレはこぶしを握りながら、ジョウカーをにらみつけた。
「オレたちの力が、たいしたことないって言いてえのか!?」
「まさにその通り。理解が早くて助かるね、勇者ダイト」
ジョウカーの口調は、余裕たっぷりだった。
「調子に乗ってんじゃねえぞ! うらああああぁぁ!」
オレは聖剣を抜き、ジョウカーに向かい突撃した!
同時に!
「我々を甘く見たこと、後悔させてやろう! はああああぁぁ!」
サリィが魔剣を携え、ジョウカーに突っ込む!
「食らいやがれええええぇ!」
「切り裂けええぇ!」
オレとサリィは、聖剣と魔剣をジョウカーに繰り出すが。
「甘い」
スカッ! スカッ!
ジョウカーはサイドステップで、オレたちの斬撃をかわした。
「クソッ! コイツ、ちょこまかするんじゃねえよ!」
「無駄なあがきはやめろ! おとなしく、私に斬られるがいい!」
続けざまにオレたちは、2撃目、3撃目を放つが。
「無駄だよ」
スカッ! スカッ! スカッ! スカッ!
ジョウカーは攻撃をかわしつつ。
大きなバックジャンプで、オレたちから距離を取った。
「では。次は、こちらの番といこうか」
宣言とともに、ジョウカーが大きく手を広げる。
「――アピアランス」
ヤツの前方に、4つの透明なオーブが出現したかと思うと。
「ブリザード、ライトニング、シャイニング、ダークネス」
ジョウカーの詠唱で、オーブへ次々と色が灯っていく。
1つ目は、青に。
2つ目は、黄色に。
3つ目は、白に。
4つ目は、黒に。
「な、何なの!? オーブに、魔力を注入してるの!?」
「気をつけてください! 攻撃が来ますよ!」
とまどうシャル姉に、ツカサが叫んだ瞬間。
「テトラ・バレット!」
ブアアアアアアアアアア!
ジョウカーの合図でオーブから、4色のつぶてが大量に撃ち出された!
「あぶねっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
「くっ!」
オレたちは素早く散ると、魔力のつぶての嵐をかわした。
しかし。
ブアアアアアアアアアア!
「うおあああああ!?」
つぶての攻撃は、尽きることがない。
色とりどりのつぶてが雨あられと、部屋中にバラまかれていく。
「シャル姉! 防御魔法で食い止めろ! 早く!」
「今からやるよ! シャルちゃんに命令しないで!」
シャル姉がいらだたしそうに返しながら、聖杖を前に突き出す。
「ダーク・ホーリーウォール!」
パシュン!
オレたちの前方に、黒い光のカベが展開された。
つぶては光のカベにさえぎられ、次々に消滅していく。
その間に!
「レッド・クリムゾン!」
すかさず魔杖を手にした、ツカサの火炎魔法が飛ぶ!
ゴアアアアアアアアッ!
パキン! パキーン!
火炎の直撃を受け、青と黄色のオーブが砕け散った!
「今ですダイトさん、サリィさん! 残りのオーブを!」
「ナイスだぜ、ツカサ!」
「了解だ!」
オレとサリィは、オーブに向かって突っ込む!
同時に。
「援護してあげる! ダーク・ホーリーシュート!」
バシュバシュバシュバシュッ!
シャル姉は光のカベを解除すると、ジョウカーに光線の乱れ打ちを放った!
「ちっ……!」
ジョウカーが回避に専念したスキに!
「ふっ!」
ズバアッ! パキーン!
サリィが白のオーブを砕き!
「りゃああああ!」
ズバアッ! パキーン!
オレが黒のオーブを砕いた!
その瞬間。
ブアアアアアアアア!
いきなりオレの砕いたオーブから、闇が大量に噴き出した。
「のわっ!?」
噴き出した闇は、あっという間に部屋中を満たしていく。
「何だ!? 見えねえ!? くっ、この野郎ぉ!」
濃い闇を振り払おうと、オレはメチャメチャに聖剣を振り回す。
そんな中で。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
闇を切り裂き、何かがオレのもとに飛んだ。
「うおっ――」
ガヂッ!
不意打ちに、身をかわすこともできず。
飛んできた何かは、オレの首にハマった。
「何だコリャ!? 首輪!?」
オレは全力を込め、首輪に手をかけるが。
「んぐっ……ぐぐぐっ……ぐぎぎぎぎーーーー!」
どんなに力を込めても、首輪は外れなかった。
「ふむ。まあこんなものか」
あせるオレの耳に、ジョウカーの声が響く。
「こうもカンタンに引っかかってくれるとはね。拍子抜けもいいところだよ」
パチン!
指の鳴るような音とともに、あたりの闇が消えていく。
クリアになったオレの視界に、入ってきたものは。
「なっ、何なんだ、この首輪は!?」
「うぅ~! 外れないよぉ!」
「く……くっ!」
オレと同じように首輪をハメられた、サリィ、シャル姉、ツカサの姿だった。
そんなオレたちに向かい。
「あっけない幕切れだが。これで詰みだ、勇者ダイト」
勝ち誇ったように、ジョウカーが告げる。
「その首輪は、『魔王の呪い』と呼ばれる特別製でね。相手を捕らえた呪いの首輪は、72時間後に爆発する」
なっ!?
「な……ん……だと……!?」
「キミたちの命も、残りわずか。勇者パーティー崩壊の序曲は、今まさに奏でられた。というわけさ」
ジョウカーからの、衝撃の宣言を受け。
オレは口の中が、カラカラに乾いていくのを感じた……。
10
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜
ネリムZ
ファンタジー
唐突にギルドマスターから宣言される言葉。
「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」
理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。
様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。
そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。
モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。
行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。
俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。
そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。
新たな目標、新たな仲間と環境。
信念を持って行動する、一人の男の物語。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる