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34.支援役ロベル 『世界』の支援を誓う
しおりを挟む「乗り込める。俺の支援スキルがあれば、空にだって行けるさ!」
「ウソ!?」
「ええっ!?」
「そんなことまで……?」
サミーもアンリもトウナも、目をまるくしている。
「どうやって!? お兄様の力で、お馬さんに羽根をつけるとか?」
「それともあなた様の力で、空飛ぶ乗り物を作るのですか?」
「主様の力で、空を歩けるようにする?」
「どれもできそうだけど、どれも違う。移動手段は『俺自身』だ! 支援スキルの力で、モンスターに変身する!」
そう。
このスキルだ。
『シェイプ・シフト(任意のモンスターに変身)』
「まずは見ててくれ。変身スキル『シェイプ・シフト』発動! 変身するモンスターは、『もふもふ・ヴォーパルバニー』!」
宣言すると。
ボムッ!
俺の体がまるまるとした、むっちむちでもっちもちでもっふもふの、ふっかふかウサギに変身した。
見た目のかわいさで油断させ、近づいたエモノを牙で襲う。ズルがしこいモンスターだ。
「とまあ、こんな感じで――」
「うわあああああかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「かわいいですうううううううううううぅぅぅぅぅ!」
「かわいいかわいいかわいいかわいい」
ぎゅっ! ぎゅむっ! ぎゅう!
「ちょっ――」
「わーーーいわーーーいふかふかだーーーーー! しかも中身がお兄様ーーー! もふもふもふもふもふー!」
「もふもふウサちゃん最高ですぅ! 中の人があなた様だからなおさらですぅ!」
「もふもふ、ぺたぺた、すりすり、るんるん」
「ちょい待ち! ちょい待ち! さわりすぎ! さわりすぎだから!」
もふもふもふもふ!
もふもふもふもふもふ!
「も、もとに! もとに戻る!」
ボウン!
宣言で、俺の体は人間に戻った。
「あ、戻っちゃった。もーっといっぱいもふもふしてたかったのにー!」
「すっごくかわいかったですよ! あなた様のウサちゃん姿!」
「今後もたまにやってほしい」
「……気が向けばな」
やれやれ。
変身するモンスターのチョイスをまちがえたな。
オーガとかにしとけばよかった。
「ゴホン! とまあ、こんな感じでだ! この『シェイプ・シフト』を使えば、好きなモンスターに変身できるってわけだな!」
「はーい! わかった! あたしわかっちゃいましたー!」
「なるほど、そういうことですか!」
サミーが笑い、アンリがうなずく。
トウナが続ける。
「空飛ぶモンスター、でしょ?」
「その通り! 俺が飛行能力持ちのモンスターに変身する、ってわけさ! 背中にみんなを乗せて、天空の魔王城に突撃する! 初めての空旅、俺がみんなの命を預かるよ!」
「お兄様ってホントにさすが! よくそんなにポンポンポンポンいろんなこと思いつくよね! ホーーントにステキ!」
「しかもその考えを、カンタンに実現できてしまうのですから! あなた様は素晴らしいお方です!」
「頭が柔らかすぎ。尊敬しかない」
「ははは。まあ、いくつか選択肢を考えたけどな。俺自身が1番納得できるやり方を、採用させてもらったよ」
そうだ。
俺が責任を持って、みんなを魔王城まで送り届けるんだ!
「お兄様。城にたどり着くまでに、魔族に襲われないかな?」
「そうですね。おそらく城の外は、空中部隊が守っているでしょう」
「対策は? 私たちで応戦する?」
「いや、みんなは場内戦まで温存したい。俺も移動に専念だ」
だから、ここで頼るのは。
「護衛にドラゴン・タイラントとフェニックスをつけて、一気に蹴散らす! スキルで強化すれば万全だろう!」
「なるほどーー! それならバッチリだね! 信頼度120パーセント、ってカンジ!」
「あの2体にあなた様の支援がプラスされれば、向かうところ敵なしかと!」
「安心と信頼の主様支援。これでついに、準備が整った」
「そういうことだな。何か質問はあるか?」
3人とも首を振る。
「大丈夫そうだな」
……よし。
話すか。
いよいよ。
「それじゃあ、みんな。これからひとつ、聞いてほしいことがある」
「主様。さっき言ってた『決意』の話?」
「そうだ。少し、時間もらってもいいか?」
みんなは無言でうなずいた。
「ありがとう」
俺は話し出す。
「俺は用心深くて慎重で目立つのが苦手な、ただの『支援役』だ。勇者でも大魔導師でも英雄でもない。俺の天職は『支援役』。その考えは変わらないよ。今までも、これからもな」
けど。
「そんな俺だけど、よくわかってる。俺が打倒魔王に、1番近い人間だってことを」
みんな真剣なまなざしで、俺の話を聞いてくれている。
「伝説にある魔王を滅ぼす『ひとりの男』が、俺かどうかはわからない。俺じゃないのかもしれない。でも」
俺は続ける。
「そんなことは問題じゃないんだ。これは俺自身の問題だから」
そう。
「いくら強い力を持ってても、正しく使わないと意味がない。誰かを助ける力があるのに何もしないヤツが、『支援役』を名乗っていいはずがない」
そうだ。
「これからも俺は、天職の『支援役』であり続けたい! 俺の力で、これからもたくさんの人たちを助けたい! サミーも! アンリも! トウナも! それに『ワンズ王国』の人たちも!」
そして。
「こんなに素晴らしい人たちがいる『世界』そのものも! みんなが生きるこの『世界』を! 俺は助けたい! 俺が支援したいんだ! だから!」
心は決まっていた。
みんなの世界がピンチなんだ!
『支援役』が支援しないでどうする!
「『支援役』ロベル・モリスは、ここに宣言する!」
俺はこぶしを握ると、天に向かって突き上げる。
「『世界』の完全平和を、全力で支援する、と!」
「お兄様……!」
「あなた様……!」
「主様……!」
「俺はこれから魔王を倒し、世界を救う」
断言し、みんなを見る。
「サミー。アンリ。トウナ。みんな、俺について来てくれるか?」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
「あったりまえじゃない!」
「もちろんです!」
「当然!」
「そうか……!」
「あたしはこれからもずーっと! ずーーーーーっと、お兄様といっしょだもん! 魔王さん、ざーんねーん! これでもう、あなたの勝ち目はゼロパーセントになっちゃいましたー!」
「あなた様とわたしとのキズナは永遠! いつまでも、どこまでもお供いたします! 何なりとご命令を!」
「私の命は主様のために。この命、主様にささげます!」
「ありがとう! 本当にありがとう! みんな!」
「フフフフッ! 人間の『支援役』ごときが魔王様を倒す? 思い上がるのはいい加減してほしいね」
いきなり何者かの声が響いた。
「転移魔法か。魔族四天王だな」
「もう! せっかく盛り上がってたのに!」
「空気を読んでほしいですね!」
「水を差された」
「フフフ! フハハハハハハハハ!」
高笑いと共に、気取ったヤサ男が出現する。
「僕は『闇色のロメア』。四天王最強にして、魔族のナンバー2さ。せいぜい光栄に思うんだね。この僕の手にかかって死ねることを――」
「力の差は圧倒的だ。支援スキルを使うまでもない」
俺は話をぶった切りながら、聖剣で魔族をぶった斬った。
ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!?」
魔族の体が真っ二つにカチ割れる。
「こんなバカなあああああああああああ!? この僕がこんなカンタンにいいいいいいいいい!? これは何かのまちがいだあああああああ!? まちがいなんだあああああああああああ!? ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
魔族は悲鳴をあげ、消滅していった。
「あんたはその『支援役』ごときの、足元にも及ばないみたいだけどな」
「カッコイイーーーー! 一刀両断だーーーー! お兄様さっすがーーーーー!」
「魔族四天王を瞬殺とは! 恐れ入りました!」
「もはや敵なし」
「まあ、俺じゃなくても楽勝だったと思うぞ? 魔族ナンバー2っていうのも、ハッタリだろう。たぶん」
ともかく。
邪魔は入ったけど、覚悟も伝えられた!
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「「「オーーーーーッ!」」」
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