31 / 42
31.【勇者side その⑦】勇者グレイ ただの男になる
しおりを挟む「あがああああぁぁぁぁ……メイファァ……いきなり何をするんだ……ぐおおおおお……」
「それはこっちのセリフよ!」
悶絶するボクに、メイファがすごむ。
「人がせっかく見に来てやったのに! よくもこのアタシを売ろうとしたわね!」
「ま……待て……待ちたまえメイファァ……。違うぅ……違うんだぁぁ……さっきのは作戦だったんだぁぁ……」
「はいはいウソウソ! 覚悟しなさいよ? これからたーーーっぷりとフクロ叩きにしてやるわ!」
「は、話を聞いてくれぇぇぇぇ……。さっきのは敵を油断させておいて――」
「だまれですわ!」
キィィィィィィィィィィィン!
「ほぎゃおおおおおおお!?」
キャロラインの金的蹴りが、ボクの股間にめりこんだ。
「ああぁぁ……おおぉぉぉ……があぁぁぁぁ……のぉぉぉぉぉ……」
「このワタクシを捨て駒にしようとは、いい度胸してますわねぇ。メイファさんにボロ雑巾にされたあとで、たぁっぷり拷問して差し上げますわよ……ホホホホ」
「は、話を聞いてくれぇぇぇぇ……話せばわかるぅぅぅぅ……」
「問答無用よ!」
「ですわ!」
「頼むぅぅぅぅ……頼むからぁぁぁぁ……ボクの話をぉぉぉぉ……」
ボクが腹と股間を押さえ、言い訳を考えていると。
パアアアアアアアアアアアアアアアアア!
突然、聖剣『ビリーヴ・ブレード』が光り出した。
まるで、何かに目覚めたかのように。
何かに導かれたかのように。
聖剣はしばらく光を放ち続けると。
パシュン!
いきなり、その場から姿を消した。
「なっ!?」
あたりを見回すが、聖剣はどこにもない。
「お、おい!? どこに行ったんだ!?」
ボクはあせった。
「じ、冗談はやめたまえ! 出てこい! 出てくるんだ! おい! おい!?」
まさか!?
聖剣に逃げられた!?
「そ、そんなバカな!? 聖剣は勇者のものだろう!? どうしてボクから逃げるんだよ!? も、戻ってこい! 戻ってくるんだ! 戻ってきてくれ! 戻ってきてくれよおおおおおおおおおおおお!」
「アーーーーーーーーッハッハッハッハ!」
「オーーーーーーーーッホッホッホッホ!」
メイファとキャロラインが笑い出す。
「うわーーーーーー! ざっまああああああああ! 聖剣に見捨てられてるしー! このメイファ様を売ろうとするから、バチが当たったんだわー!」
「ざっまああああああですわ! これでもう、アナタは勇者ではありません! ただの男ですわ! ただの人ですわ! ただのムシケラですわ! ただのゴミですわーー!」
「やーーいやーーい! あっかんべーーーー! アーーーーーーッハハハハハハ!」
「ゴミクズ男には似合いの末路ですわー! ホーーーーーーッホホホホホホ!」
「ぐっ……ぬぐっ……ぬぐぐぐぐぐっ……!」
ブチィィィィィン!
「だまれだまれだまれええええええええ! ふざけるなああああああああ! ボクは勇者だ! ボクは選ばれし者だ! ボクこそが勇者なんだあああああああああ! 聖剣なんか関係ないんだあああああああああ!」
そ、そうだ!
ボクにはまだ、あの技がある!
勇者グレイの究極最強最終必殺奥義を!
このフザけたクソ女どもに!
一発ブチかましてやる!
「ううううううおおおおおおおおおお! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ボクは両手に、怒りのエネルギーを集中させていく!
「ちょっ!? グレイ!? アンタ何する気よ!?」
「メイファァァァアアアア! キャロラインンンンンンンン! 見せてやるぞ見せてやるぞおおおおおおおおおお! この勇者グレイの究極最強最終必殺奥義ぃぃぃ! 『ゼット・エンド・クラッシュ』をなぁああああああああ!」
「ゼ、ゼット・エンド・クラッシュですって!? 何ですのその技は!?」
「あらゆるものをブッ壊す超絶攻撃だぁぁぁぁぁ! 使ったあとは反動で、しばらく激痛に襲われるハメになるがなぁぁぁぁぁ!」
「なっ!? そんなスゴイ技、なんで今まで使わなかったのよ!? さっきの魔族に使えばよかったでしょうがぁぁぁぁぁ!?」
「痛いのはイヤだからなぁぁぁぁぁ!」
「サイテーですわぁぁぁぁぁぁ!?」
「いくぞおおおおおおおおおおおおお! ボクより強いヤツはいなくなれえええええええええ! ボクを嫌いなヤツはみんないなくなれええええええええええええええええ! ボクは勇者だあああああああああああああああああああああああああ!」
ボクは怒りのエネルギーを解き放つ!
「ゼット・エンド・クラァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッシュ!」
ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
しかし。
「うわわわわっ!?」
「ひゃああああっ!?」
メイファとキャロラインに、ギリギリで回避され。
怒りのエネルギーのかたまりは。
ちょうどふたりの後ろにあった。
『ワンズ王国』管理の鉱山に向かう。
「あ」
「あ」
「あ」
ちゅどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
鉱山は爆散した。
「……逃げるわよ、キャロライン」
「逃げましょう、メイファさん」
メイファとキャロラインが、スタコラ逃げ出す一方で。
「ぴぎゃああああああああああああ!?」
ボクはゼット・エンド・クラッシュの反動に襲われ、激痛で暴れ回っていた。
「いでででででんぎょわああああああああ!? どひぇええええええええぐびょおおおおおおおお!? ふんぎゃああああああああああああ!? ぎょわぎょええええええええええええええええええええええ!?」
「おい! あそこに誰かいるぞ!」
「あいつが爆破犯にちがいない!」
「しかしどういうことだ!? アホみたいなヘンな踊りを踊ってるぞ!?」
「油断するな! ワナかもしれん!」
「ああ! 悪魔召喚の儀式かもしれないぞ!」
「スキを見て取り押さえるんだ!」
近づいてくる『ワンズ王国』兵に向かって。
「いいがら助けろおおおおぉぉぉぉ! はやくボクを助けろおおおおぉぉぉぉ! ボグは勇者グレイだああああぁぁぁぁ! のぎょわああああぁぁぁぁ!? ぶぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ボクは全力で、助けを求めるのだった。
「ふんぎゃああああああああああああああ! ぎょべええええええええ! あぎゃあぎゃぶぎゃおおおおおおおおおおおおおおお! いだいいだいいだいよぉぉぉぉ! だずげでえええええええええええええええ!」
8
お気に入りに追加
1,108
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。
現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。
アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。
しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。
本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに……
そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。
後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。
だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。
むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。
これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる