上 下
28 / 42

28.支援役ロベル 魔族四天王のひとりをカンタンに倒す①

しおりを挟む

「どうして俺、レベルもステータスも最大限界をぶっち切ってるんだろう……?」



 そうだ。
 みんなにも聞いてみようか。



「サミー。ちょっと確認だけど」



「ん? なあに、お兄様?」



「確か、前に言ってたよな? 冒険者のレベルは99が最高だって」



「うん。ステータスの最大値は999だね。フツーは、だけど」



 ……ん?
 普通は?



「ってことは、普通じゃない場合もあるのか?」



「うん! お兄様みたいに、たまーーーーーに超えられる人がいるみたい」



「そうなのか!? というか、俺がレベル99超えてるって知ってたの?」



「うん、知ってた」



「あ、わたしも知ってましたよ?」



「もちろん私も」



 ……マジで?
 サミーもアンリもトウナも知ってたの?



「そ、そうだったのか。俺、てっきり誰も知らないと思ってたよ。みんな無反応だったから」



「だってお兄様だもん! 当然かなーって!」



「あなた様ですし。当然ですよね」



「主様だし当然」



「理由になってないと思うんだけど、俺の気のせいか?」



「うふふ! やっぱりお兄様はキセキの人だね! 上限突破できる確率って、100万人に1人らしいよ!」



「100万人に1人!? そんなに低い……あ、でも待てよ」



 あの『プラチナメタル・ブレスレット』のドロップ率が1/10000だから。



「ブレスレット100コ分と同じ確率か。案外たいしたことないな。『エンカウント操作・インスタント』を使えばカンタンにいけそうだし」



「おにーさま? たいしたことあるから! その計算、お兄様専用だから!」



 サミーのツッコミが入った。



「とゆーか! そんなことが平気でできちゃうお兄様の『エンカウント操作・インスタント』ってスキル、ハチャメチャだから! 目覚める確率、おそらく100万分の1より低いんじゃないかなぁ?」



「そもそもレベルが上限突破できるとして、ですよ? 普通はレベル99までたどり着かないのでは? かつての勇者様が魔王を倒したレベルは、77だったそうですし」



「主様は確実に歴史上最強。その次が大きく離れて、主様の力を受けた私たち」



 ……うーむ。



 レベルやステータスの上限突破やら。
 『エンカウント操作』のチート覚醒やら。



「もしかして俺、すごい星の下に生まれちゃったのかなぁ?」



「まあお兄様だしねー。納得だよねー」



「あなた様に運命が味方するのは、当然かと」



「主様なら何でもアリ」



「やっぱり理由になってないと思うんだけど、俺の気のせいか?」



 ……まぁ、こういうこともあるんだろうな。
 世の中何が起こるかなんて、誰にもわからないんだ。
 それに。



「レベルやステータスが高くても。スキルをたくさん使えても。力を見せびらかすだけじゃ意味がない。大事なのは手にした力で、どんな支援ができるか、だからな!」




「クククククククク……! リッパなお考えですネェ……!」




 あたりに何者かの声が響いた。




「主様、何かが来る」



「この雰囲気……転移魔法です、あなた様」



「お兄様! 気配が『大聖堂』を襲ったヤツに似てるよ!」



「『大聖堂』の? ということは、高位の魔族か!」




「クカカカカカカカ……カアアアアアアアアッ!」




 目の前に、マントを羽織った男が出現した。
 マントには黒い宝玉が、4つ埋め込まれている。




「クカカカカ! 驚かせてしまいましたかな?」



「いや、特には」



「クククククククク! なかなかユニークな反応をするお方ですなぁ! ワタシの手で殺す価値があるというものですよ! この! 魔王様直属の! 『魔族四天王』がひとり! 『不死のガイナ』の手でね!」



 感覚でわかった。
 確かにこいつは高位魔族だ。
 しかし。




「あんまり強くはないな。これなら俺1人でも何とかなりそうだ」




「なーんか、お兄様と比べたらぜんっぜん弱っちそう」



「あなた様の敵ではありませんね」



「主様の楽勝が見えてる」



「まあ……そんな気がするよなぁ。客観的に見ても」



 別になめてるつもりはない。
 慎重さを欠いているつもりもない。
 事実なんだから仕方がない。



「むぐっ……と、とにかくです! この! 魔王様直属の! 『魔族四天王』がひとり! 『不死のガイナ』は!」



「いや別に、そんなに強調しなくていいから」



「だまらっしゃい! ワタシは偉大なる魔王様の命を受け! 『魔族四天王』を代表して! 魔王様の敵となる存在を始末しに来たのですよ! 最有力候補はアナタと、魔王様は考えておられますからネェ!」



「いやいや、俺はそんなに大したヤツじゃない。魔王も的外れだなー。みんなもそう思うだろ?」



 と、俺はみんなに振ってみたが。



「なかなかやるわね魔王! お兄様の力に目をつけるなんて!」



「こればかりは認めるしかありません! 見る目があると!」



「敵ながらあっぱれ」



「おいおいおいおいおいおいおい!」



 なぜか大賛成されてしまった。



「クククククク! このワタシ! 『不死のガイナ』のチカラは圧倒的! アナタ方がどうお考えになろうが! 『魔族四天王』の力に、人間ごときがかなうはずないのですよ! アナタみたいな男と小娘が何人集まったところで、ワタシを倒すことなど不可能!」



「……まあ。そこまで何度も、四天王四天王言うってことは」



 俺は納得した。



「あんた。本当に『四天王』なんだな」



「フザけるな!?」



「いや、別にフザけてるわけじゃ――」



「やかましい! その余裕もここまでですよ! さあ、おしゃべりは終わりです! このワタシ! 『不死のガイナ』が! この場でアナタ方を! 死の世界へと連れて行って差し上げましょう! ありがたく思いなさい!」



「それは無理だな」



 そうだ。
 どんなに慎重に考えてもわかる。



「この状況で俺たちが負ける確率は、ゼロだ」



「減らず口を! ワタシの力を思い知りなさい! 『デス・コネクション』!」




 ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




 魔族は闇の波動を放ってきたが。




 ピキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!




 俺たちの体を、プラチナメタル・ブレスレットのバリアが包んだ。
 バリアの効果で、波動は俺たちに届かない。




「なんですと!?」




「力の差は圧倒的だ。支援スキルを使うまでもない」




 俺はショートソードを抜き、魔族に向かって斬りつけた。




 ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」



 
 魔族は悲鳴をあげ、その場に倒れた。



「まずはこんなもんか」



「何か拍子抜けー」



「力の差がありすぎましたね!」



「主様とやり合うなんて愚か」



「ただ、まあ。これで終わりじゃなさそうだけどな」



 そう俺が言ったとき。




 パキイイイイイイイイイイイイイイイイン!




 魔族のマントに埋め込まれた、宝玉の1つが砕け散り。




 バシュウウウウウウウウウウウウウウウ!




 中からあふれ出た闇が、魔族の体を包むと。




「クカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!」



 ふたたび魔族が立ち上がった。



「クカカカカカ! 理解していただけましたかな? ワタシは何度でもよみがえる! 『不死のガイナ』はダテではないのですよ!」



「復活した? もう! しつこいなぁ!」



「なるほど。『不死のガイナ』……名前だけではない、ということですか」



「往生際が悪い」



「確かにアナタ方はお強いようだ! ですが! ワタシが無限によみがえるのでは、どうすることもできないでしょう? 人間ごときの力では、ワタシを滅ぼすなど不可能なのですよ! さあ! おとなしく降参なさい! クカカカカカカカカカカ!」



 魔族は勝ち誇っているが。
 俺は言ってやる。



「けど、あんた。本当は、あと3回しか復活できないんだろ?」



「クカカカカカ……カ?」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜

KeyBow
ファンタジー
カクヨムで異世界もの週間ランク70位! VRMMORゲームの大会のネタ副賞の異世界転生は本物だった!しかもモブスタート!? 副賞は異世界転移権。ネタ特典だと思ったが、何故かリアル異世界に転移した。これは無双の予感?いえ一般人のモブとしてスタートでした!! ある女神の妨害工作により本来出会える仲間は冒頭で死亡・・・ ゲームとリアルの違いに戸惑いつつも、メインヒロインとの出会いがあるのか?あるよね?と主人公は思うのだが・・・ しかし主人公はそんな妨害をゲーム知識で切り抜け、無双していく!

処理中です...