上 下
21 / 42

21.支援役ロベル+3聖女 キズナを深める

しおりを挟む

【支援役ロベル視点】




 『ワンズ王国』の入り口近くで。



「はじめまして! あたしサミーって言います! お兄様とは、小さい頃からの幼なじみでーす!」



「わたしはアンリと申します。20年間とらわれの身でしたけど、ロベル様に助けていただきました」



「私はトウナ。このお方とは、元パーティー仲間」



 3人は互いに自己紹介をしている。
 表情はにこやかだ。



「やれやれ。最初はあせったけど、うまくやっていけそうな感じだな」



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので」



 大陸の伝説……あれか。




『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』




 ってヤツだな。



「伝説ではこう語られています。『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」




 あれ?
 『3人』の聖女?
 この伝説、聖女の『数』に触れてたっけ?




「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」



「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」



 サミーとトウナも同意する。
 どうやら、俺のカン違いだったみたいだ。



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ、よろしくお願いいたします! サミー様! トウナ様!」



「よろしく。サミー、アンリ」



 3人はうれしそうに笑い合っている。
 この短時間で、ここまで仲を深めるとは。



「うん! 3人の相性はバッチリみたいだな!」






【『太陽の聖女』サミー視点】




「はじめまして! あたしサミーって言います! お兄様とは、小さい頃からの幼なじみでーす!」



 なんて、あいさつしながら。
 あたし、頭の中が真っ白になっちゃった。




 どうしようどうしようどうしよう!




 清楚で品があるアンリさんに、知的でクールなトウナさん!
 あたしとはレベルが違いすぎる!
 とてもかなわないよぉ! 



 もしも。
 もしも「やっぱり聖女は3人もいらない」なんて話になっちゃったら。

 追放されるのは、100パーセントあたしに決まってる!



 どうしようどうしようどうしよう!



 あたしが頭を抱えていると。



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので。伝説ではこう語られています。


『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」




 アンリさん……! 




 あたしには、アンリさんのやさしさが痛いほどに伝わった。

 伝説は、聖女の数にはノータッチ。
 アンリさんはあたしがパーティーに残れるように、気をつかって『3人』って言ってくれたんだ!
 あたしもたたみかけるしかない!



「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」



 あたしがアンリさんに乗っかると。



「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」



 すぐに、トウナさんもあと押ししてくれたの!

 なんてすてきな人たちだろう!
 知り合ったばかりのあたしを、こんなに気づかってくれるなんて!

 やっぱりお兄様はすごいや!
 人を見る目が違うんだ!



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



 お兄様が納得したようにうなずいた。
 あたしは心の中で2人に手を合わせる。



 ありがとうアンリさん!
 ありがとうトウナさん!

 これであたしはパーティーにいられます!
 ご恩は一生忘れません!



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ、よろしくお願いいたします! サミー様! トウナ様!」



「よろしく。サミー、アンリ」



 アンリさんとトウナさんが、あたしにやさしくほほえむ。
 お兄様といっしょなだけでも最高なのに、こんなにすてきな人たちとも冒険できるんだ! 



 あたしは感じた。
 心がしあわせでいっぱいになるのを……。






【『光の聖女』アンリ視点】




「わたしはアンリと申します。20年間とらわれの身でしたけど、ロベル様に助けていただきました」



 などと、あいさつしながら。
 わたし、頭の中が真っ白になってしまいました。




 まずいですまずいですまずいです!




 明るくてほがらかなサミー様に、冷静で神秘的なトウナ様!
 わたしとはレベルが違いすぎます!
 とてもかなわないです!



 もしも。
 もしも「やっぱり聖女は3人もいらない」なんて話になってしまったら。
 
 追放されるのは、100パーセントわたしに決まってます!



 まずいですまずいですまずいです!



 どうにかしないと……そうです!



 大陸の伝説!

 聖女の人数をごまかした上で、サミー様とトウナ様に話を合わせていただく!
 これしかありません!



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので。伝説ではこう語られています。


『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」



 うまく言えました!
 あとはサミー様とトウナ様の意識へ、交信を飛ばしてお願いを――。



「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」




 え?
 サミー様?




「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」




 トウナ様まで……!




 わたしには、おふたりのやさしさが痛いほど伝わってきました。

 おふたりはわたしがパーティーに残れるように、心を配ってくださったのです!
 交信を飛ばす前に察していただけるなんて……。



 ああ、なんてすてきな方々なのでしょう!
 知り合ったばかりのわたしを、これほどまでに気づかってくださるのですね!

 やっぱりあなた様はすごいです!
 人を見る目が違います!



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



 あなた様が納得したようにうなずきました。
 わたしは心の中でお2人に手を合わせます。



 ありがとうございますサミー様!
 ありがとうございますトウナ様!

 これでわたしはパーティーにいられます!
 ご恩は一生忘れません!



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ。よろしくお願いいたします。サミー様、トウナ様」



「よろしく。サミー。アンリ」



 サミー様とトウナ様が、わたしにやさしくほほえみます。
 あなた様といっしょなだけでも最高なのに、こんなにすてきな方々とも冒険できるのですね! 



 わたしは感じました。
 心がしあわせに包まれていくのを……。






【『月の聖女』トウナ視点】




「私はトウナ。このお方とは、元パーティー仲間」



 と、あいさつしながら。
 私の頭の中は真っ白だった。




 あああああああああああああああ!




 元気でかわいらしいサミーに、清らかで可憐なアンリ!
 私とはレベルが違いすぎる!
 とてもかなわない! 



 もしも。
 もしも「やっぱり聖女は3人もいらない」なんて話になったら。

 追放されるのは、100パーセント私で確定!



 あああああああああああああああ!



 私があっぷあっぷしていると。



「わたしたちがここに集まったのは、運命にちがいありません」



「ん? アンリ、どういうことだ?」



「状況が、大陸の伝説と一致していますので。伝説ではこう語られています。


『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は『3人』の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』と」




 アンリ……! 




 私はアンリのやさしさを痛感した。

 伝説は、聖女の数に触れてない。
 アンリは私がパーティーに残れるように、配慮して『3人』と言ってくれた!
 私も急いで追撃を! 



 ところが。



「アンリさんの言う通りです! 『3人』の聖女がそろうのが大事ですもんね!」



 私より先に、サミーが援護してくれた!

 なんてすてきな人たち!
 知り合ったばかりの私を、ここまで気づかってくれる!

 やっぱり主様はすごい!
 人を見る目が違う!



「『3人』の聖女が集まらないと意味がない」



 私がダメ押しでつぶやくと。



「と、なると。確かに3人そろったのは、偶然じゃないのかもしれない」



 主様が納得したようにうなずく。
 私は心の中で2人に手を合わせた。



 ありがとうサミー!
 ありがとうアンリ!

 これで私はパーティーにいられる!
 恩は一生忘れない!



「アンリさん! トウナさん! これからよろしくお願いしますね!」



「こちらこそ、よろしくお願いいたします! サミー様! トウナ様!」



「よろしく。サミー、アンリ」



 サミーとアンリが、私にやさしくほほえんだ。
 主様といっしょなだけでも最高なのに、こんなにすてきな人たちとも冒険できる! 



 私は感じた。
 心がしあわせで満たされていくのを……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...