18 / 42
18.支援役ロベル 『月の聖女』を救出する(?)
しおりを挟む「いよいよ見えてきたな。『ワンズ王国』が」
歩きながら、俺の思考はだいぶ整理された。
ただ。
「トウナに何を話すかは、結局まとまらなかったけどな……ははは」
と、そのとき。
「何かいるな。殺気を感じる。気配は5つだ」
モンスターとのランダム・エンカウントではないはずだ。
「『エンカウント操作』は『ゼロ』にしてあるからな」
便利な『エンカウント操作:ゼロ』だけど、あくまでも効果はランダム・エンカウントのモンスターに限られている。
「ユニークな存在や固定配置モンスター、ボス・クラスなんかを消すのはムリみたいだ」
となると。
「魔族か? それとも人間か?」
ただ。
感覚でわかった。
「あんまり強くはないな。これなら俺1人でも何とかなりそうだ」
野盗?
それとも山賊の連中か?
まあ、とにかく。
「相手は複数だな。それなら!」
モンスター召喚、実戦投入第1弾といくか!
「コール、ドラゴン・タイラント! コール、フェニックス!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
暴君龍と不死鳥が出現する。
感覚でわかった。
「力の差は圧倒的だ。支援スキルを使うまでも……って」
あれ?
「何だ? 殺気が消えていくぞ……?」
どういうことだ?
よし、あたりの様子を探ってみよう。
支援スキルの出番だな!
「聴覚アップスキル『サラウンド・イヤー』発動!」
宣言で、俺の聴き取り能力が大幅にアップすると。
遠くから悲鳴が聞こえた。
『うううううううううううわあああああああああああああああああ! 何なんだこのバケモノどもはあああああああああああああああああああ!?』
『かかかかかか勝てるわけがねえええええええええええ!? ひいいいいいいいいいいいいいいいいああああああああああああ!?』
『なにがカンタンな依頼だばかやろおおおおおおおおおおおおお! ここここここんなの相手にどうしろってんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
『ひひひひるむんじゃねええええええええええええ! オレたちは絶対無敵の『影のレンジャー5人衆』なんだうわあああああああダメだああああああああああ!?』
『改心するからもう悪いことしないから許してえええええええええ! いいいいいいいやあああああだああああああああああああああ!?』
「……俺の召喚モンスターにビビった、ってわけか」
とはいえ。
「逃がすわけにはいかないぞ。『影のレンジャー5人衆』。有名な闇組織だ」
どんな汚い依頼も金次第で受ける連中。
それこそ犯罪でもおかまいなしに。
「何かの闇仕事中に、たまたま俺と出くわした。ってとこか」
召喚モンスターを戻し、追撃に入る。
「支援スキル『ゴッド・スピード』で超速度上昇!」
超速を手に入れた俺が、声の聞こえた方に向かうと。
「「「「「うわわわわわわわわひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃあああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」」」
5人の黒服連中が、ブザマに逃げまどっていた。
「スキル『スリープ・クラウド』発動! 対象は『影のレンジャー5人衆』!」
ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
眠りの霧が『影のレンジャー5人衆』を包み込んだ。
やがて霧が晴れると。
「グガー……」
「グゴー……」
「たしゅけぇ……」
「ガー……」
「グガガガ……」
連中はうなされながら眠っていた。
「こんなもんか。ちょうど向こうに『ワンズ王国』兵の軍事基地があるな」
俺が直接行くと、100パーセント目立つだろうから。
「まずはこいつらの武具を外して。手足を縛って。さるぐつわをかませて」
あとは支援スキルの力を借りようか。
「投てきスキル『フリー・スロー』発動! 対象の『影のレンジャー5人衆』を、『ワンズ王国兵の軍事基地』へ!」
『影のレンジャー5人衆』の体がフワッと浮き上がると、ポイポイ軍事基地へ投げ込まれていく。
「これでよし! あとのことは王国兵にまかせよう」
王国の裁きで、これまでの犯罪は全部あきらかになるだろう。
「せいぜい、牢獄で罪をつぐなうんだな」
ひと仕事を終え。
ふたたび『ワンズ王国』へ歩き出そうとした、そのとき。
『うっ……!? これは……しまった……!?』
『サラウンド・イヤー』で強化された聴覚が、少女の声をとらえた。
「この声は……」
『体がしびれて……動けない……!』
「まさか……」
『くっ……私としたことが……』
「トウナなのか?」
『助けて……あ……主様……』
どういう状況なのかはわからない。
でも、やることは1つしかない!
「俺が助けるさ」
心は決まっていた。
大切な仲間がピンチなんだ!
『支援役』が支援しないでどうする!
「『支援役』ロベル・モリスは、ここに宣言する!」
俺はこぶしを握ると、天に向かって突き上げる。
「『月の聖女』トウナの完全勝利を、全力で支援する、と!」
宣言と共に、支援スキルを一気に発動する!
「『超高速詠唱』で、スキル使用スピードアップ!」
からの!
「『ゴッド・スピード』で、超速度上昇!」
まだだ!
「『ゴッド・スピード』で、超速度上昇!」
まだだ!
「『ゴッド・スピード』で、超速度上昇!」
からの!
「『シャイニング・アーマー』で、超防御力上昇!」
からの!
「『リーサル・パワー』で、超攻撃力上昇!」
からの!
「『ワンダー・イデア』で、思考力急上昇!」
からの!
「『アデプト・アヴォイド』で、回避力急上昇!」
からの!
「『オーヴァー・クリティカル』で、会心率急上昇!」
からの!
「『ワンブレス・アウェイ』で、攻撃回数増加!」
からの!
「『ヒット・ザ・ターゲット』で、命中率急上昇!」
からの!
「『アーク・ライト』で、全ステータス極大上昇!」
からの!
「『ブレイブ・ハート』で、支援力極大上昇!」
この間、わずか2秒。
「場所は『ワンズ王国』の入口そばだな! 今行くぞ!」
俺は全力で駆け抜け、目的地に突撃する!
その間、わずか10秒。
「無事か、トウナ!」
「えっ? あっ……!」
トウナはその場にうずくまり、体を小刻みにふるわせている。
「今助ける! マヒ解除スキル『キュア・パラライズ』発動!」
パァァァァ!
やさしい光がトウナを包み、体のしびれを消し去る。
身につけている『月のペンダント』は、淡い金色に輝いていた。
「魔力は抜かれていない! 間に合ったみたいだな!」
「主さ……ロベル様……! またお会いできた……!」
「話はあとだ! 敵は俺が倒す!」
「え? 敵?」
「ここはまかせてくれ! トウナが戦ってたヤツはどこだ!」
「敵なんていない」
……へっ?
「ウソだろ?」
「ホント……」
うつむくトウナ。
視線の先には、地面に転がったビン。
「トウナ。それってもしかして、しびれ薬か?」
「そ、その……あの……えっと……」
トウナは何やらオロオロしていたが。
あきらめの表情を浮かべると。
「水とまちがえて、しびれ薬を飲んじゃった」
…………。
「は?」
「お、王国に着いたところで。頭に、ロベル様の顔が浮かんできて」
「ほぉ」
「一気に緊張してきて。ノドがかわいて」
「はぁ」
「水を飲んだつもりで、まちがえた」
「…………」
「…………」
俺とトウナの間に、気まずい空気が流れたのだった。
9
お気に入りに追加
1,108
あなたにおすすめの小説
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる