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18.支援役ロベル 『月の聖女』を救出する(?)

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「いよいよ見えてきたな。『ワンズ王国』が」



 歩きながら、俺の思考はだいぶ整理された。
 ただ。



「トウナに何を話すかは、結局まとまらなかったけどな……ははは」



 と、そのとき。



「何かいるな。殺気を感じる。気配は5つだ」



 モンスターとのランダム・エンカウントではないはずだ。



「『エンカウント操作』は『ゼロ』にしてあるからな」



 便利な『エンカウント操作:ゼロ』だけど、あくまでも効果はランダム・エンカウントのモンスターに限られている。



「ユニークな存在や固定配置モンスター、ボス・クラスなんかを消すのはムリみたいだ」



 となると。



「魔族か? それとも人間か?」



 ただ。
 感覚でわかった。




「あんまり強くはないな。これなら俺1人でも何とかなりそうだ」




 野盗?
 それとも山賊の連中か?

 まあ、とにかく。



「相手は複数だな。それなら!」



 モンスター召喚、実戦投入第1弾といくか!



「コール、ドラゴン・タイラント! コール、フェニックス!」




「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




 暴君龍と不死鳥が出現する。



 感覚でわかった。



「力の差は圧倒的だ。支援スキルを使うまでも……って」



 あれ?



「何だ? 殺気が消えていくぞ……?」



 どういうことだ? 



 よし、あたりの様子を探ってみよう。
 支援スキルの出番だな!



「聴覚アップスキル『サラウンド・イヤー』発動!」



 宣言で、俺の聴き取り能力が大幅にアップすると。



 遠くから悲鳴が聞こえた。




『うううううううううううわあああああああああああああああああ! 何なんだこのバケモノどもはあああああああああああああああああああ!?』



『かかかかかか勝てるわけがねえええええええええええ!? ひいいいいいいいいいいいいいいいいああああああああああああ!?』



『なにがカンタンな依頼だばかやろおおおおおおおおおおおおお! ここここここんなの相手にどうしろってんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』



『ひひひひるむんじゃねええええええええええええ! オレたちは絶対無敵の『影のレンジャー5人衆』なんだうわあああああああダメだああああああああああ!?』



『改心するからもう悪いことしないから許してえええええええええ! いいいいいいいやあああああだああああああああああああああ!?』




「……俺の召喚モンスターにビビった、ってわけか」



 とはいえ。



「逃がすわけにはいかないぞ。『影のレンジャー5人衆』。有名な闇組織だ」



 どんな汚い依頼も金次第で受ける連中。
 それこそ犯罪でもおかまいなしに。



「何かの闇仕事中に、たまたま俺と出くわした。ってとこか」



 召喚モンスターを戻し、追撃に入る。



「支援スキル『ゴッド・スピード』で超速度上昇!」



 超速を手に入れた俺が、声の聞こえた方に向かうと。




「「「「「うわわわわわわわわひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃあああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」」」




 5人の黒服連中が、ブザマに逃げまどっていた。



「スキル『スリープ・クラウド』発動! 対象は『影のレンジャー5人衆』!」




 ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




 眠りの霧が『影のレンジャー5人衆』を包み込んだ。
 やがて霧が晴れると。




「グガー……」



「グゴー……」



「たしゅけぇ……」



「ガー……」



「グガガガ……」




 連中はうなされながら眠っていた。



「こんなもんか。ちょうど向こうに『ワンズ王国』兵の軍事基地があるな」



 俺が直接行くと、100パーセント目立つだろうから。



「まずはこいつらの武具を外して。手足を縛って。さるぐつわをかませて」



 あとは支援スキルの力を借りようか。



「投てきスキル『フリー・スロー』発動! 対象の『影のレンジャー5人衆』を、『ワンズ王国兵の軍事基地』へ!」



 『影のレンジャー5人衆』の体がフワッと浮き上がると、ポイポイ軍事基地へ投げ込まれていく。



「これでよし! あとのことは王国兵にまかせよう」



 王国の裁きで、これまでの犯罪は全部あきらかになるだろう。



「せいぜい、牢獄で罪をつぐなうんだな」



 ひと仕事を終え。
 ふたたび『ワンズ王国』へ歩き出そうとした、そのとき。




『うっ……!? これは……しまった……!?』




『サラウンド・イヤー』で強化された聴覚が、少女の声をとらえた。



「この声は……」




『体がしびれて……動けない……!』




「まさか……」




『くっ……私としたことが……』




「トウナなのか?」




『助けて……あ……主様……』




 どういう状況なのかはわからない。 
 でも、やることは1つしかない!



「俺が助けるさ」



 心は決まっていた。



 大切な仲間がピンチなんだ!
 『支援役』が支援しないでどうする!




「『支援役』ロベル・モリスは、ここに宣言する!」



 俺はこぶしを握ると、天に向かって突き上げる。



「『月の聖女』トウナの完全勝利を、全力で支援する、と!」




 宣言と共に、支援スキルを一気に発動する!




「『超高速詠唱』で、スキル使用スピードアップ!」



 からの!



「『ゴッド・スピード』で、超速度上昇!」



 まだだ!



「『ゴッド・スピード』で、超速度上昇!」



 まだだ!



「『ゴッド・スピード』で、超速度上昇!」



 からの!



「『シャイニング・アーマー』で、超防御力上昇!」



 からの!



「『リーサル・パワー』で、超攻撃力上昇!」



 からの!



「『ワンダー・イデア』で、思考力急上昇!」



 からの!



「『アデプト・アヴォイド』で、回避力急上昇!」



 からの!



「『オーヴァー・クリティカル』で、会心率急上昇!」



 からの!



「『ワンブレス・アウェイ』で、攻撃回数増加!」



 からの!



「『ヒット・ザ・ターゲット』で、命中率急上昇!」



 からの!



「『アーク・ライト』で、全ステータス極大上昇!」



 からの!



「『ブレイブ・ハート』で、支援力極大上昇!」




 この間、わずか2秒。



「場所は『ワンズ王国』の入口そばだな! 今行くぞ!」



 俺は全力で駆け抜け、目的地に突撃する!



 その間、わずか10秒。



「無事か、トウナ!」



「えっ? あっ……!」



 トウナはその場にうずくまり、体を小刻みにふるわせている。



「今助ける! マヒ解除スキル『キュア・パラライズ』発動!」




 パァァァァ!




 やさしい光がトウナを包み、体のしびれを消し去る。
 身につけている『月のペンダント』は、淡い金色に輝いていた。



「魔力は抜かれていない! 間に合ったみたいだな!」



「主さ……ロベル様……! またお会いできた……!」



「話はあとだ! 敵は俺が倒す!」



「え? 敵?」



「ここはまかせてくれ! トウナが戦ってたヤツはどこだ!」



「敵なんていない」




 ……へっ?




「ウソだろ?」



「ホント……」



 うつむくトウナ。
 視線の先には、地面に転がったビン。



「トウナ。それってもしかして、しびれ薬か?」



「そ、その……あの……えっと……」



 トウナは何やらオロオロしていたが。
 あきらめの表情を浮かべると。




「水とまちがえて、しびれ薬を飲んじゃった」




 …………。



「は?」



「お、王国に着いたところで。頭に、ロベル様の顔が浮かんできて」



「ほぉ」



「一気に緊張してきて。ノドがかわいて」



「はぁ」



「水を飲んだつもりで、まちがえた」



「…………」



「…………」



 俺とトウナの間に、気まずい空気が流れたのだった。
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