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14.支援役ロベル 『光の聖女』のお願いを受け入れる
しおりを挟むアンリ姫救出からの帰り道。
地上へ向かう途中で。
「本当にイヤじゃない?」
「イヤなはずがありません! とってもしあわせです! ロベル様のようなステキなお方に、抱いていただけるなんて!」
「なら、この態勢でいっしょに行こうか」
俺はアンリ姫を。
「よいしょっと。いやー、軽いなー」
お姫様抱っこしながら歩いていた。
「夢みたいです……うっとり」
アンリ姫はほっぺたをピンク色に染め、とろーんとしている。
20年も閉じ込められてたんだ。
そりゃあ、疲れも出るだろうな。
「ロベル様! これからわたくしと、一緒に『エルフの里』までまいりましょう!」
「それってアンリ姫のふるさと?」
「ええ! プリンセスとして、ロベル様を歓迎いたしますので!」
「えーーーっと……」
「ロベル様が望む報酬は、なんでも用意いたします。里の民はロベル様を、英雄として迎え入れるでしょう。お母様……いえ、エルフの女王も、ロベル様を気に入るのはまちがいありません。ロイヤル・ガードに任命されるかもしれませんよ? そうだ! よろしければ、わたし個人のボディー・ガードに――」
「うーんすまない。パスで」
「えっ? どうしてです?」
「目立つの、好きじゃなくてね。アンリ姫が自力で脱出した、ってことにしてもらえるとありがたい」
「そ、そんな! そんなことはできません!」
「俺は、誰かの支援ができればそれでいいんだ。ただそれだけ、だからさ」
本心だった。
いつも言ってることだ。
「アンリ姫のピンチを救えた。その事実だけで十分だよ」
「……欲がないお方ですね」
「いやいや。ホントに、目立つのがイヤなだけなんだ」
「ふふ、わかりました。助けていただいた恩人に、ムリは言えません。でも、気が変わったら言ってくださいね? 『エルフの里』はいつでもロベル様をおもてなしできるよう、準備させていただきますので!」
「……前向きに考えておくよ」
「クスッ。それではロベル様」
「ん?」
「エルフのプリンセスではなく。わたし個人のお願いなら、聞いていただけますか?」
「まあ、それなら……って」
あれ?
ちょっと待て?
サミーのときも、こんな展開だったような?
ということは、まさか。
「もしかして……俺と一緒にパーティーを組みたい、とか?」
「その通りです!」
「……マジでか」
「さすがです! わたしの考えなど、とっくの昔にお見通しだったのですね! 感激しちゃいました!」
「いや、まあ、ね。なんとなくわかっちゃった」
「やはりあなた様とわたしは一心同体! 離れようにも離れられない運命にあったのですね!」
「ちょいちょい。ちょいちょいちょい」
「どうかなさいましたか? あなた様?」
「それ! その『あなた様』ってのは何なのさ?」
「わたしの運命の人ですもの! あなた様とお呼びするのは、とても自然なことだと思います!」
……そうかなぁ?
「もしかして、イヤですか?」
「さすがにちょっと、恥ずかしいを通り越してむずがゆいというか」
「しくしくしく」
「わ、わかったわかった! アンリ姫の好きに呼んでいいから!」
「クスッ。ありがとうございます! あなた様!」
……まぁ、そのうちなれるだろう。
おそらく。
きっと。
「あっ、そうです! イイこと思いつきました!」
「こ、今度は何だい?」
「せっかくですし、あなた様もわたしの呼び方を変えませんか? アンリ姫ではなく、アンリ、と。呼び捨てにしていただけると、わたしとってもうれしいです!」
「いいのか? お姫様なのに呼び捨てにされて、気分悪くならない?」
「うるうるうる」
「呼ぶ呼ぶ呼ぶ! アンリアンリアンリ! これでいいか!?」
「はい! それではさっそく誓いの口づけを」
「おわっ!? 待った待った待った待ったそれはダメ!」
「あら、どうしてです?」
「それはその……って! 脱線してるから! 話を戻すぞ!」
さ、さすがは『光の聖女』というべきか、妙にグイグイ来るな。
俺以外の相手にも、こういう感じなのかなぁ?
「あなた様だけですよ」
「えっ? 何か言った?」
「なんでもありません。クスッ」
なんだろう。
心を読まれたような……まあいいか。
「それよりアンリ姫……じゃなかった、アンリ。ひとまず『エルフの里』に戻った方がいいんじゃないか? みんな心配してると思うぞ?」
「ええ。ですので。里に報告をしてたあとで、あなた様のパーティーに加えていただければ、と考えております」
「そうか……」
……まあ、確かに。
「『エルフの里』にいれば絶対安全、ってわけじゃなさそうだしな」
「えっ?」
「これまでの経験でわかったんだ。『大陸3大聖女』の力は強大だけど、悪いヤツらに目をつけられる可能性も高い。魔族にも、人間にもだ」
「そうみたい、ですね……」
「『光の聖女』がふたたび人前に現れた! なんて話題は、すぐ大陸中に広まるはずだ。そうなったら、アンリはまた狙われるかもしれない。いざという時、そばにいてあげられなかったら。俺は絶対に後悔すると思う」
「あなた様……」
「そんな後悔、俺はしたくない。だから、アンリ!」
「は、はい!」
「いっしょにパーティーを組もう! 準備ができたらこの前みたいに、俺の頭に交信を入れてくれ!」
「うれしい……うれしいです!」
アンリの顔に笑顔がはじけた。
「感激しました! ありがとうございます! ありがとうございます! これでわたしとあなた様とは、永遠のキズナで結ばれたわけですね! 末席でかまいませんので、世界が平和になったら必ずや――」
「ちょっ!? そんなに暴れないで! 落としちゃうから!」
俺はアンリをなだめながら、お姫様だっこの腕に力を入れなおした。
「ところであなた様。旅のお仲間は、どういう方々なのですか?」
「今はソロだけど、これから『ワンズ王国』でパーティーを組む予定なんだ」
『太陽の聖女』サミーのかわいらしい顔が、頭の中をよぎる。
「これから『ワンズ王国』で、ですか?」
「ああ」
「ということは、今まではずっとおひとりだったと」
「いいや。実は俺、少し前に勇者パーティーを追放されちゃってさ」
「クスッ。冗談を言っても、わたしにはわかりますよ?」
……へ?
冗談?
「あなた様のような立派な方が、そのような仕打ちを受けるはずがありません。こんなに強くてカッコよくてたくましい、頼りになる方なんですもの!」
「いやいやいやいや。ホントのことなんだ」
「ふふ、ウソをついてもダメです。もしもあなた様のお話が真実ならば、ですけど」
「真実なんだけどね」
「その勇者パーティーとかいう方々は、とんっっでもない無能で見る目がない最っ低最っ悪なヘッポコポンコツ連中の集まり、になるわけですから」
「ちょ、言い方言い方! お姫様なんだから!」
「勇者とは、あなた様のような方にこそふさわしい称号なのです! やさしくて! 器が大きくて! 勇気があって!」
「買いかぶりすぎさ。たぶん甘いだけだよ。おっ」
地上につながる階段が見えた。
「着いたよアンリ! この階段を上がれば外だ」
「えっ? もう着いてしまったのですか?」
「ん? 何か問題でも?」
「えっと……できれば、ですけど」
腕の中で、アンリがもじもじしている。
「そ、その……抱っこしたまま、『エルフの里』まで送ってほしいなぁ……なんて」
「お姫様だっこで? 別にいいけど、里の中に連れ込むのはカンベンしてくれよ?」
「ホントですか! ありがとうございます、あなた様! ぽっ」
アンリの顔は、真っ赤っかに染まっていた。
疲れのせいで、熱が出たんじゃないだろうな?
あとで、熱さましの支援スキルを使った方がよさそうだ。
「ともかく。アンリの方は一見落着、だな!」
……となると、次は。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!』
頭の中に、『月の聖女』トウナの手紙がよみがえる。
「……今度こそ向き合おうか。トウナと」
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