22 / 76
第1章
22話
しおりを挟む
自室のベッドにセレスタを寝かした。すでにセレスタの息はほとんど無かった。心臓の動きも弱々しい。
「こんなことしたら君は怒るかな……」
先程、父ヴァルドーから受け取った小瓶を開け、中に入った赤い液体を口移しでセレスタに飲ませる。
「"光"の魔術師を闇の住人へと変えてしまうことを許してもらおうとは思わない。けれど、これがわたしの気持ちだよ……」
赤々とした口づけを終えると、セレスタの体が大きく痙攣した。呻き声を発しながら暴れ続ける。ベッドから落ちてしまわないように彼女に抱きつくように押さえつける。
『吸血鬼化の始まり。数分ほど全身への激痛及び痙攣が起こる』
抉れたはずの腹部が信じられない速さで治っていく。身体が書き換えられているのだ。暴れる彼女の力が強くなってきているのがはっきりと分かる。そして、呻きと痙攣が収まった。これを乗り越えれば死には至らない。安堵してベッドから降りた。
『それが終わると犬歯が鋭くなり、眼が赤くなる』
閉じた眼を指で優しく開いて赤くなっていることを確認した。
「これで大丈夫。君が起きたときには全部終わらせておくから、そのまま眠っててね」
そう言って部屋を出ようとした瞬間、背後から何かが襲いかかってくるのを感じた。しかし、それを避けようともせず振り返って受け入れた。
首に牙を立てられ、血が吸われていく。吸血鬼同士の血のやり取りでは渇きを満たすことはできない。しかし、半分人間なら効果はあるのかもしれない。
リュシールは自分の血を吸う相手の頭に手を置き、震えながら声を出した。
「……おはよう、セリィ」
「……ただいま、リュー」
「どこも痛くない?」
「ええ」
「どこまで覚えてる?」
「リューがキスしてくれたとこまで」
「……いや、あれはそういうのじゃなくて、ええと…………」
「大丈夫、嬉しかったわ。行きましょう」
「……うん」
一刻も早くディミロフを倒さなければならない。そして、ネクロゲイザーと呼ばれていたゾンビからは底が見えない不気味な雰囲気を感じた。吸血鬼の王である父と貴族である二人が負けるとは思わないが、数の利が相手にある以上すぐにでも戦いに戻るべきだと思った。
この部屋に来るときは気にも止めなかったが、この館にも大量のゾンビが出現したはずだ。しかし、廊下を見渡すと死体の一つも見当たらない。ディミロフが呼び戻したのだろうか。それを口には出さずセレスタとともに部屋を出る。
館の外へと向かう途中、ヴァルドーの過去と自らの出生に関することを説明した。
「……だから、お父様を責めないでほしい」
「よく似た親娘だね。まっすぐで危なっかしくて、とても優しい」
「……ありがとう」
外に続く扉の前で立ち止まる。セレスタは急かすが、これを言うまでは一歩も動く気はなかった。
「約束してほしい。危ないと思ったらすぐに逃げて。二度目はないから……」
セレスタは無言でうな頷いて扉を押した。分厚く大きな扉は軽々と開いた。
「こんなことしたら君は怒るかな……」
先程、父ヴァルドーから受け取った小瓶を開け、中に入った赤い液体を口移しでセレスタに飲ませる。
「"光"の魔術師を闇の住人へと変えてしまうことを許してもらおうとは思わない。けれど、これがわたしの気持ちだよ……」
赤々とした口づけを終えると、セレスタの体が大きく痙攣した。呻き声を発しながら暴れ続ける。ベッドから落ちてしまわないように彼女に抱きつくように押さえつける。
『吸血鬼化の始まり。数分ほど全身への激痛及び痙攣が起こる』
抉れたはずの腹部が信じられない速さで治っていく。身体が書き換えられているのだ。暴れる彼女の力が強くなってきているのがはっきりと分かる。そして、呻きと痙攣が収まった。これを乗り越えれば死には至らない。安堵してベッドから降りた。
『それが終わると犬歯が鋭くなり、眼が赤くなる』
閉じた眼を指で優しく開いて赤くなっていることを確認した。
「これで大丈夫。君が起きたときには全部終わらせておくから、そのまま眠っててね」
そう言って部屋を出ようとした瞬間、背後から何かが襲いかかってくるのを感じた。しかし、それを避けようともせず振り返って受け入れた。
首に牙を立てられ、血が吸われていく。吸血鬼同士の血のやり取りでは渇きを満たすことはできない。しかし、半分人間なら効果はあるのかもしれない。
リュシールは自分の血を吸う相手の頭に手を置き、震えながら声を出した。
「……おはよう、セリィ」
「……ただいま、リュー」
「どこも痛くない?」
「ええ」
「どこまで覚えてる?」
「リューがキスしてくれたとこまで」
「……いや、あれはそういうのじゃなくて、ええと…………」
「大丈夫、嬉しかったわ。行きましょう」
「……うん」
一刻も早くディミロフを倒さなければならない。そして、ネクロゲイザーと呼ばれていたゾンビからは底が見えない不気味な雰囲気を感じた。吸血鬼の王である父と貴族である二人が負けるとは思わないが、数の利が相手にある以上すぐにでも戦いに戻るべきだと思った。
この部屋に来るときは気にも止めなかったが、この館にも大量のゾンビが出現したはずだ。しかし、廊下を見渡すと死体の一つも見当たらない。ディミロフが呼び戻したのだろうか。それを口には出さずセレスタとともに部屋を出る。
館の外へと向かう途中、ヴァルドーの過去と自らの出生に関することを説明した。
「……だから、お父様を責めないでほしい」
「よく似た親娘だね。まっすぐで危なっかしくて、とても優しい」
「……ありがとう」
外に続く扉の前で立ち止まる。セレスタは急かすが、これを言うまでは一歩も動く気はなかった。
「約束してほしい。危ないと思ったらすぐに逃げて。二度目はないから……」
セレスタは無言でうな頷いて扉を押した。分厚く大きな扉は軽々と開いた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
異世界で捨て子を育てたら王女だった話
せいめ
ファンタジー
数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。
元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。
毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。
そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。
「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」
こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが…
「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?
若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」
孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…
はあ?ムカつくー!
だったら私が育ててやるわ!
しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。
誤字脱字、いつも申し訳ありません。
ご都合主義です。
第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。
ありがとうございました。
糸遣いの少女ヘレナは幸いを手繰る
犬飼春野
ファンタジー
「すまない、ヘレナ、クリス。ディビッドに逃げられた……」
父の土下座から取り返しのつかない借金発覚。
そして数日後には、高級娼婦と真実の愛を貫こうとするリチャード・ゴドリー伯爵との契約結婚が決まった。
ヘレナは17歳。
底辺まで没落した子爵令嬢。
諸事情で見た目は十歳そこそこの体格、そして平凡な容姿。魔力量ちょっぴり。
しかし、生活能力と打たれ強さだけは誰にも負けない。
「ぼんやり顔だからって、性格までぼんやりしているわけじゃないの」
今回も強い少女の奮闘記、そして、そこそこモテ期(←(笑))を目指します。
*****************************************
** 元題『ぼんやり顔だからって、性格までぼんやりとしているとは限りません』
で長い間お届けし愛着もありますが、
2024/02/27より『糸遣いの少女ヘレナは幸いを手繰る』へ変更いたします。 **
*****************************************
※ ゆるゆるなファンタジーです。
ゆるファンゆえに、鋭いつっこみはどうかご容赦を。
※ 設定がハードなので(主に【閑話】)、R15設定としました。
なろう他各サイトにも掲載中。
『登場人物紹介』を他サイトに開設しました。↓
http://rosadasrosas.web.fc2.com/bonyari/character.html
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
VRMMOでスナイパーやってます
nanaさん
SF
ーーーーーーーーーーーーーーーー
私の名は キリュー
Brave Soul online というVRMMOにてスナイパーをやっている
スナイパーという事で勿論ぼっちだ
だが私は別にそれを気にしてはいない!
何故なら私は一人で好きな事を好きにやるのが趣味だからだ!
その趣味というのがこれ 狙撃である
スキルで隠れ敵を察知し技術で当てる
狙うは頭か核のどちらか
私はこのゲームを始めてから数ヶ月でこのプレイスタイルになった
狙撃中はターゲットが来るまで暇なので本とかを読んでは居るが最近は配信とやらも始めた
だがやはりこんな狙撃待ちの配信を見る人は居ないだろう
そう思っていたが...
これは周りのレベルと自分のレベルの差を理解してない主人公と配信に出現する奇妙な視聴者達 掲示板の民 現実での繋がり等がこのゲームの世界に混沌をもたらす話であり 現実世界で過去と向き合い新たな人生(堕落した生活)を過ごしていく物語である
尚 偶に明らかにスナイパーがするような行為でない事を頻繁にしているが彼女は本当にスナイパーなのだろうか...
ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む
紫楼
ファンタジー
酔っ払って寝て起きたらなんか手が小さい。びっくりしてベットから落ちて今の自分の情報と前の自分の記憶が一気に脳内を巡ってそのまま気絶した。
私は放置された16歳の少女リーシャに転生?してた。自分の状況を理解してすぐになぜか王様の命令で辺境にお嫁に行くことになったよ!
辺境はイケメンマッチョパラダイス!!だったので天国でした!
食べ物が美味しくない国だったので好き放題食べたい物作らせて貰える環境を与えられて幸せです。
もふもふ?に出会ったけどなんか違う!?
もふじゃない爺と契約!?とかなんだかなーな仲間もできるよ。
両親のこととかリーシャの真実が明るみに出たり、思わぬ方向に物事が進んだり?
いつかは立派な辺境伯夫人になりたいリーシャの日常のお話。
主人公が結婚するんでR指定は保険です。外見とかストーリー的に身長とか容姿について表現があるので不快になりそうでしたらそっと閉じてください。完全な性表現は書くの苦手なのでほぼ無いとは思いますが。
倫理観論理感の強い人には向かないと思われますので、そっ閉じしてください。
小さい見た目のお転婆さんとか書きたかっただけのお話。ふんわり設定なので軽ーく受け流してください。
描写とか適当シーンも多いので軽く読み流す物としてお楽しみください。
タイトルのついた分は少し台詞回しいじったり誤字脱字の訂正が済みました。
多少表現が変わった程度でストーリーに触る改稿はしてません。
カクヨム様にも載せてます。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる