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第2章
2話
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「ハスクマン家傘下のジオミル家、全滅とのことです……」
「……そうか」
"吸血鬼殺し"という言葉を耳にするようになった。このような事件は過去にもあったが、三百年以上生きているヴァルドーですら歴史上の出来事である。最初は野良や下級の吸血鬼が減っていることから広まった。その凶行は今や王族・貴族にまで及んでいるらしい。
下級といえど、吸血鬼を討つことの出来る種族など限られている。ドラゴンなどを代表とする神話級の生物、上級の聖霊や魔物ならば可能だ。しかし、それらが吸血鬼を狩る理由など到底思い当たらない。
最も考えられるのは吸血鬼か人間だ。王族たちが抑止力となり、長い間均衡を保ってきたが、それでもはぐれ者は絶えることはない。それに加えて、真偽不明の伝説もある。
"吸血鬼の心臓を喰らえば、更なる力を得ることができる"
この伝説すら知らない若い吸血鬼も多いほどの眉唾物だ。他の王族から狙われるリスクを冒してまで行うものがいるだろうか。
「エレッタ、これをどう見る?」
「貴族まで殺されている以上、遠方の話といえども楽観視はできません。周辺の王族・貴族と話すべきかと」
「私も概ね同じ考えだ。話し合う相手は慎重に選ばねばなるまいがな……」
そこでヴァルドーの部屋にノックが響いた。
「リュシールか、入れ」
「失礼します、お父様」
ヴァルドーはエレッタに吸血鬼狩りのことを説明させた。
「そのようなことが……」
「他の王とも協力する必要もある。館を離れることもあるだろう。その時はここを頼む」
「……はい」
リュシールが部屋を出ていく。
「では、お嬢様とセレスタ様はあそこへ向かわせるのですか?」
「ああ、ここは吸血鬼も人間も多い。事を面倒にすることはない」
自室へ戻ろうとしていたリュシールはセレスタと鉢合わせた。彼女のマントは土で汚れていた。
「おはよう、リュー」
「おはよう。特訓お疲れ、セリィ」
父から聞いた話への不安を極力抑え、笑顔を作った。
「あまり無茶しないでね。まだ体は不安定なんだから」
「分かってる。でも、何かしてないと落ちつかなくて」
心配を別の方へと向けて自分を誤魔化した。ベッドへと横たわる。
「大丈夫、絶対に大丈夫」
わざとらしく声に出して笑う。
すると、ノック音がした。今の独り言が聞こえていたらと思うと、少し恥ずかしくなった。
「……リュー」
「入っていいよ」
セレスタが扉を開けて入ってくる。薄い部屋着に着替えていた。
「修行の後、ジュラルドさんと食事したんだけど、まだ空腹間があって……」
「相変わらず頼るのが下手だね。遠慮しないでいいのに」
ベッドに座っていたリュシールにセレスタはゆっくりと近づく。彼女はそのまま横に座り込んで腕を引き寄せる。二人の体勢が崩れた。
「がっつかなくてもわたしは逃げないよ」
そう言い終えることは出来なかった。首を舐められた。リュシールの顔が紅くなっていく。
すぐに首に牙を立てられた。二人の息が荒くなる。
「どうしたの……、今日は激しいね」
「……"光"を使いすぎたみたい」
セレスタが吸血を終えた。二人の服は赤い液体で汚れている。
「あーあ。もうベトベトじゃないか」
リュシールは上着を脱ぎ捨てると、セレスタのシャツのボタンに手をかける。
「今度はわたしの番。付き合って貰うからね」
「……そうか」
"吸血鬼殺し"という言葉を耳にするようになった。このような事件は過去にもあったが、三百年以上生きているヴァルドーですら歴史上の出来事である。最初は野良や下級の吸血鬼が減っていることから広まった。その凶行は今や王族・貴族にまで及んでいるらしい。
下級といえど、吸血鬼を討つことの出来る種族など限られている。ドラゴンなどを代表とする神話級の生物、上級の聖霊や魔物ならば可能だ。しかし、それらが吸血鬼を狩る理由など到底思い当たらない。
最も考えられるのは吸血鬼か人間だ。王族たちが抑止力となり、長い間均衡を保ってきたが、それでもはぐれ者は絶えることはない。それに加えて、真偽不明の伝説もある。
"吸血鬼の心臓を喰らえば、更なる力を得ることができる"
この伝説すら知らない若い吸血鬼も多いほどの眉唾物だ。他の王族から狙われるリスクを冒してまで行うものがいるだろうか。
「エレッタ、これをどう見る?」
「貴族まで殺されている以上、遠方の話といえども楽観視はできません。周辺の王族・貴族と話すべきかと」
「私も概ね同じ考えだ。話し合う相手は慎重に選ばねばなるまいがな……」
そこでヴァルドーの部屋にノックが響いた。
「リュシールか、入れ」
「失礼します、お父様」
ヴァルドーはエレッタに吸血鬼狩りのことを説明させた。
「そのようなことが……」
「他の王とも協力する必要もある。館を離れることもあるだろう。その時はここを頼む」
「……はい」
リュシールが部屋を出ていく。
「では、お嬢様とセレスタ様はあそこへ向かわせるのですか?」
「ああ、ここは吸血鬼も人間も多い。事を面倒にすることはない」
自室へ戻ろうとしていたリュシールはセレスタと鉢合わせた。彼女のマントは土で汚れていた。
「おはよう、リュー」
「おはよう。特訓お疲れ、セリィ」
父から聞いた話への不安を極力抑え、笑顔を作った。
「あまり無茶しないでね。まだ体は不安定なんだから」
「分かってる。でも、何かしてないと落ちつかなくて」
心配を別の方へと向けて自分を誤魔化した。ベッドへと横たわる。
「大丈夫、絶対に大丈夫」
わざとらしく声に出して笑う。
すると、ノック音がした。今の独り言が聞こえていたらと思うと、少し恥ずかしくなった。
「……リュー」
「入っていいよ」
セレスタが扉を開けて入ってくる。薄い部屋着に着替えていた。
「修行の後、ジュラルドさんと食事したんだけど、まだ空腹間があって……」
「相変わらず頼るのが下手だね。遠慮しないでいいのに」
ベッドに座っていたリュシールにセレスタはゆっくりと近づく。彼女はそのまま横に座り込んで腕を引き寄せる。二人の体勢が崩れた。
「がっつかなくてもわたしは逃げないよ」
そう言い終えることは出来なかった。首を舐められた。リュシールの顔が紅くなっていく。
すぐに首に牙を立てられた。二人の息が荒くなる。
「どうしたの……、今日は激しいね」
「……"光"を使いすぎたみたい」
セレスタが吸血を終えた。二人の服は赤い液体で汚れている。
「あーあ。もうベトベトじゃないか」
リュシールは上着を脱ぎ捨てると、セレスタのシャツのボタンに手をかける。
「今度はわたしの番。付き合って貰うからね」
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