菜の花散華

了本 羊

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番外編

筒井菜月

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「菜月ちゃん・・・」
 「ご、ごめんなさい~・・・、心結お姉ちゃん~~・・・」


 菜月は現在、心結と実の家で毛布を幾重にも被って、絶賛逃亡中である。






 「ただい・・・」


 実が早目に帰宅すると、その異様な光景は嫌でも実の目に入ってきた。
 結婚したばかりの妊娠中の妻が、毛布を何重にも積み重ねた場所をジッ、と見つめている。


 「心結・・・、その」
 「こんにちは! 実お兄さん! 新婚家庭にお邪魔するのはとっっても逡巡したのですが、緊急事態なので少しだけ匿って下さい!!」


 実の言葉を遮り、毛布の山から菜月が顔を出し、早口に捲し立てると、また毛布の中に隠れてしまった。


 「・・・・・・何なんだ?」


 実は毛布の山、正確には隠れている菜月を指差して、怪訝な表情をしている。
それに困り顔で心結は口を開く。


 「実は・・・、千咲さんから逃げているらしくて・・・」
 「あら、アタシがどうかした?」


この場にいるはずのない人物の声に、心結はえっ? と振り返った。







 「みぃちゃん、身体のほうは大丈夫?」
 「あ、それは大丈夫です。悪阻は酷いですけど、初産ですし・・・。それよりも、どうして千咲さんが此処に・・・?」
 「ああ、トキ君にみぃちゃんとちょっと話したいってお願いしたの。だって・・・」


 笑顔で話す千咲は毛布の山からソロリソロリ、と逃げようとしている菜月を素早く捕獲した。


 「ヤダ――――ッ!!」
 「絶対になっちゃんはみぃちゃんの所に隠れてるだろうなって確信してたから」


そのまま菜月を軽々と肩に担ぎ上げると、千咲は玄関に向かい、心結と実のほうを振り返り、片手を上げて、手を振る。


 「それじゃあ、夫婦水入らずでゆっくりね。なっちゃんが迷惑を掛けてごめんなさい」
 「ヤダ、ヤダ――――!!!」


 往生際悪く暴れ続けている菜月を軽々と肩で支えながら、千咲は心結と実の家を後にして行った。







 「・・・・・・何だったんだ?」


 首を傾げる実に、心結はどう説明したらよいものか、と思案しつつ、言葉を選びながら話す。


 「えっと・・・。二ヶ月に一度くらい、菜月ちゃんはあんな状態の日があってね? どう言ったらいいのかな・・・。ああいった状態の日は、必ず千咲さんにお誘いを受けている日で・・・・・・」
 「ああ、セックス日か」


 実の明け透けな物言いに、心結は顔を赤らめるが、実はさして気にした風もなく、二人が出て行った玄関を仰ぎ見る。
 菜月は世界的な画家として嘱望されており、とても多忙なことが多い。
 幾ら行動を毎日共にしている婚約者とはいえ、菜月の身体に負荷を強いることは出来ないのだろう。


 「だからって、なんであんなに嫌がるんだ? 婚約者同士だろう?」
 「ええと・・・、その、ね・・・。そういった日から一週間ぐらい、菜月ちゃん、ベッドの住人になっちゃうんだ・・・・・・」


 両手で真っ赤になった顔を隠して暴露する心結に、実は唖然としてしまう。


 「・・・・・・あのおっさん・・・。一回り以上歳の離れた女になにやってんだよ・・・」


 実も己のことは言えないが、心結の様子から、まず間違いなく、千咲は自分よりも粘着質だと察知した。








 「で? なっちゃん、言うことがあるわよね?」
 「・・・・・・ゴメンナサイ」
 「とっても棒読みだけど、許してあげるわね」


ニッコリ微笑んで菜月の頬にキスをしてくる千咲であったが、菜月としては、


 毎回毎回逃げ出す理由を真剣に考えてほしい! 


と千咲に対して思っている。
 現在、帰宅してすぐにベッドに放り込まれ、圧し掛かられている。



 千咲のことは異性としてキチンと好きだし、婚約者なのだから身体の関係があっても何ら問題などない。だが。


 「ザッカリーから特別に有給を貰ったから、四日はゆっくり過ごせるから」
 「よっ・・・?!」
 「大丈夫。なっちゃんが動けなくなって、アタシがキチンと面倒看てあげるから」


だからそれが嫌だから、毎回毎回逃亡してるんじゃないかッ!! 


 何とか千咲の下から這い出そうとするが、無駄な足掻きにしかならない。


 「せ、せめてお風呂を先に・・・ッ」
 「我慢出来ないから、却下」



・・・そうですか。確かにわたしも、忙しいので毎日傍に居ても我慢をさせていますがね! 
ザック小父様のバカ~~~~~ッ!!!










 「ん、ふぅ・・・、や、あぁっ」


 深いキスから解放されても、千咲の指が菜月の秘部から離されることはなく、雌芯を何度も擦られ、舐めまわされ、観察され、膣内には三本の指が挿入されている。
 指が抜き差しされる度、奥内から際限なく膣液が滴り、菜月の息があがる。



 情事の最中、千咲は普段の様子からは一変して男らしい雰囲気と逆らえない何かを醸し出す。
 既に何度イカされたのか、回数など菜月は覚えていない。
 此方を労わってくれているように感じるが、そんなことは全然ない。
 寧ろネチッコ過ぎるのだ。
 身体から完全に力が抜けきるまで待って、挿入されるが、それまでの責め苦は拷問にも等しい。


 絶ッッッ対に千咲の性癖だ!! 


と声を大にして叫びたい。


 「あああっ」


 乳首を吸われ、秘部を弄られ続け、再度菜月がイクと、それを見計らったかのように、千咲の張り詰めた雄が勢いよく挿入され、それだけでまたイッてしまう。


 「んあああぁぁぁ、やァあっああぁぁぁ!!!」


イッている最中なのに、抽挿は止まらず、菜月の目尻から幾度も涙が零れ落ちる。


 「ハッ・・・。ホント、最高・・・っ!」


ビクビクしている膣壁を擦られ、身体は菜月の意思に反して、大きく仰け反り、更に強い快感を拾ってしまう。


 「やッ、も、もう! イァ、クのやああああぁっぁぁッ!!!」


 菜月が絶頂に達すると同時に、千咲も菜月の膣内に熱い飛沫を放った。


 「は、ああぁ・・・」
 「んっ・・・、菜月、大丈夫?」


 情事の最中は普段の呼び方ではなく、キチンとした名前呼びになる。
 千咲の無意識なのだろうが、その容姿も相まって心臓に悪い。
 名前を呼ばれる度に、不覚にも膣が収縮し、千咲のものを締め付けてしまう。


 「っ・・・。まだ、大丈夫そうね」
 「もっ、むりぃ・・・っ」


 菜月の懇願など意に介さず、再び淫猥な水音が部屋に響きはじめた。









 後日、心結が菜月に電話を掛けると、ガラガラ声の菜月が出た。
その声の酷さに、後日実は千咲に、


 「体力差が違い過ぎる子に無茶させんなよ」


と実らしからぬ苦言を呈することとなった。







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