10 / 11
肝心な事は目に見えない
しおりを挟む
「おはようございます!!爽やかな朝ですね!!」
そう挨拶をされ、俺は引き攣った笑みで曖昧に応えるのが精一杯だった。
何にでも適応力の高いハックは慣れたもので、全く気にせず普通にしていた。
召喚除霊を行った次の日。
朝目覚めると、町の様子は様変わりしていた。
早朝から皆が筋トレしている……。
いや筋トレは言いすぎだが、誰もが何かしら運動しているのだ。
人々ははつらつと汗を流しキラリと微笑む。
……灰になりそうだ。
朝日だけでなく、人々の発する活動的で前向きなエネルギー。
陰キャの俺はそれに当てられ、存在が無機物化していった。
もう……マジで無理……。
あのクッソ寒いパフォーマンスも死ぬほど嫌だが、死霊に悩まされ陰気だった人々が一転、一晩明ければ爽やか運動部のような生き生きとエネルギッシュな陽キャに変わっているのがもう……。
「うぅ……辛い……生きてるの……辛い……。」
町が、人々が、眩しすぎて俺は両手で顔を覆う。
俺が神仏召喚除霊を行えば陽気な筋トレ好きが増え続け、俺のような陰キャはさらに肩身の狭い思いをしなければならなくなる。
「ただでさえ根暗には居場所がないのに……もうヤダ……。」
そんな俺をハックが呆れたように見てくる。
「お前……本当、陰湿だな……。」
「そうだよ!俺は陰湿なんだ!!なのに何で!こんな筋肉大好き!筋トレ大好きの爽やか陽キャを増産するような能力が俺にあるんだよ!!そういうのは陽キャ同士でやってくれよ!!」
「わかったわかった。」
「わかってないだろ?!俺がどれだけネガティブに落ちてるかなんか!!」
「まぁあんましよくわかんねぇけど……。でもそんだけダメージなら、受けた分もらえるもん貰ってこようぜ?!」
猫背に背中を丸め俯いている俺の頭を、背の低いハックが仕方なさそうによしよしする。
こんな子どもに慰められるとか……なんて情けないんだろう……。
「うぅ……異世界に来れば……心機一転、めくるめく日々が送れると思ったのに~。」
「いや、気の持ちようじゃね??お前の場合??どう考えてもこの能力と前向きに向き合えば、お前の言うめくるめく日々が送れると思うぜ??」
「俺は筋肉とか別に好きじゃないっての!!」
「いや……筋肉云々はどうでもよくって……。」
何か言いかけたハック。
じっと俺を見た後、諦めたようにため息をつくと首を振った。
「……言っても無駄だよなぁ~。」
「何がだよぉ~。」
「自分で気づかなきゃ意味がねぇって事。」
そしていつものようにバシッと俺に蹴りを入れる。
「痛い!何すんだ!!」
「いいからうじうじ言ってねぇで報酬貰いに行くぞ!!しゃんとしろ!!イチル!!」
そう追い立てられ、俺は渋々、代表者の家へと向かったのだった。
そう挨拶をされ、俺は引き攣った笑みで曖昧に応えるのが精一杯だった。
何にでも適応力の高いハックは慣れたもので、全く気にせず普通にしていた。
召喚除霊を行った次の日。
朝目覚めると、町の様子は様変わりしていた。
早朝から皆が筋トレしている……。
いや筋トレは言いすぎだが、誰もが何かしら運動しているのだ。
人々ははつらつと汗を流しキラリと微笑む。
……灰になりそうだ。
朝日だけでなく、人々の発する活動的で前向きなエネルギー。
陰キャの俺はそれに当てられ、存在が無機物化していった。
もう……マジで無理……。
あのクッソ寒いパフォーマンスも死ぬほど嫌だが、死霊に悩まされ陰気だった人々が一転、一晩明ければ爽やか運動部のような生き生きとエネルギッシュな陽キャに変わっているのがもう……。
「うぅ……辛い……生きてるの……辛い……。」
町が、人々が、眩しすぎて俺は両手で顔を覆う。
俺が神仏召喚除霊を行えば陽気な筋トレ好きが増え続け、俺のような陰キャはさらに肩身の狭い思いをしなければならなくなる。
「ただでさえ根暗には居場所がないのに……もうヤダ……。」
そんな俺をハックが呆れたように見てくる。
「お前……本当、陰湿だな……。」
「そうだよ!俺は陰湿なんだ!!なのに何で!こんな筋肉大好き!筋トレ大好きの爽やか陽キャを増産するような能力が俺にあるんだよ!!そういうのは陽キャ同士でやってくれよ!!」
「わかったわかった。」
「わかってないだろ?!俺がどれだけネガティブに落ちてるかなんか!!」
「まぁあんましよくわかんねぇけど……。でもそんだけダメージなら、受けた分もらえるもん貰ってこようぜ?!」
猫背に背中を丸め俯いている俺の頭を、背の低いハックが仕方なさそうによしよしする。
こんな子どもに慰められるとか……なんて情けないんだろう……。
「うぅ……異世界に来れば……心機一転、めくるめく日々が送れると思ったのに~。」
「いや、気の持ちようじゃね??お前の場合??どう考えてもこの能力と前向きに向き合えば、お前の言うめくるめく日々が送れると思うぜ??」
「俺は筋肉とか別に好きじゃないっての!!」
「いや……筋肉云々はどうでもよくって……。」
何か言いかけたハック。
じっと俺を見た後、諦めたようにため息をつくと首を振った。
「……言っても無駄だよなぁ~。」
「何がだよぉ~。」
「自分で気づかなきゃ意味がねぇって事。」
そしていつものようにバシッと俺に蹴りを入れる。
「痛い!何すんだ!!」
「いいからうじうじ言ってねぇで報酬貰いに行くぞ!!しゃんとしろ!!イチル!!」
そう追い立てられ、俺は渋々、代表者の家へと向かったのだった。
2
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

魔王デルタービア
神通百力
ファンタジー
魔王デルタービアによって世界は支配され、凶悪な魔物が大陸を闊歩していた。平和な世界を取り戻すために一人の少年が立ち上がった。おふざけファンタジーです。ノベルアップ+にも投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ヒョロガリ殿下を逞しく育てたのでお暇させていただきます!
冬見 六花
恋愛
突如自分がいる世界が前世で読んだ異世界恋愛小説の中だと気づいたエリシア。婚約者である王太子殿下と自分が死ぬ運命から逃れるため、ガリガリに痩せ細っている殿下に「逞しい体になるため鍛えてほしい」とお願いし、異世界から来る筋肉好きヒロインを迎える準備をして自分はお暇させてもらおうとするのだが……――――もちろん逃げられるわけがなかったお話。
【無自覚ヤンデレ煽りなヒロイン ✖️ ヒロインのためだけに体を鍛えたヒロイン絶対マンの腹黒ヒーロー】
ゆるゆるな世界設定です。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる