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世界と光と影
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この世界。
俺が飛ばされてきたこの異世界は、死霊悪霊、魑魅魍魎といった類のものに人々が怯えて暮らす世界だった。
なので、この世界ではモンスターと戦うというより、除霊や鎮魂、悪魔祓いやヒーリングなどができるものが尊ばれる。
その力が強ければ強いほど人々に求められた。
で、だ。
俺の賜ったチート能力。
これがかなり強い除霊能力だった。
今のところ一度それを行えば、その場を収めるどころか街全体を完璧に安全な状態にする事ができている。
なのだけれども……。
「……嫌だって言ったのに……。」
「うっせぇなぁ!つべこべ言わずに働け!!フヨウホウの神殿までの旅費を稼がねぇでどうすんだ!!」
がっくりと肩を落とし、半べその俺にハックが発破をかける。
ガツン!といつものように蹴っ飛ばされ、力なくよろめく。
「お金ならこの前もらったじゃんかぁ~!!」
「馬鹿野郎!!稼げる時に稼いでおかないと!後々痛い目見るんだからな!しっかり働け!!俺より大人のくせに文句ばっか言うな!!」
夜になり、俺は町を襲いにくるという死霊の群れが出てくるらしい森の前に立っていた。
消極的な俺とは裏腹に、こうやっていつもハックが話をつけて俺が除霊を行う形になっていた。
「……あれ、本当に大丈夫なのか?」
「さぁ……。」
離れた柵の向こう。
集まっている町人たちがそんな俺を見てひそひそしている。
無理もない……嫌がってよろよろしている俺なんかに除霊ができるかって思うよな……。
でもできるんだよ……。
やりたくないだけで……。
俺は大きくため息をついた。
それをハックが「しゃんとしろ!」と叱りつける。
と……。
辺りがフッと暗くなる。
この世界に月はない。
そもそも空の概念が違う。
この世界の空は天界なのだ。
昼の明るい時は人々に有益な神々の世界(上天界)が、夜、その中でも深夜に差し掛かると人々に害を成す悪霊の世界(下天界)に変わる。
その天界の光や闇に照らされる事で地上は変化を起こす。
そして今まさに、夜の中でも最も闇が強い時間、悪霊の世界である下天界の入り口が黒い太陽のように頭上にぽっかりと口を開け闇を大地に降り注いでいた。
ゆらり……と森の中の影が濃くなる。
そしてそれは黒い太陽から降り注ぐ闇を浴び、その色を濃くしていく。
「……ひっ。」
人々が恐怖に息をのむ。
まぁ、確かに気持ちのいい光景ではない。
祓えるとはいえ何度見ても薄ら寒い。
「ハック、そろそろ皆の方に。」
「お、おう……。」
「指示、頼むな。」
「……うん。気をつけろよ、イチル……。」
現れた魑魅魍魎の群れに恐怖心から動けなくなっていたハックに声をかける。
俺の声に弾かれるようにハックは我にかえり、人々がいる柵の前まで移動した。
俺はそれを見届け前を向いた。
ここまてきたらもう逃げようもない。
俺は諦め半分に覚悟を決めたのだった。
俺が飛ばされてきたこの異世界は、死霊悪霊、魑魅魍魎といった類のものに人々が怯えて暮らす世界だった。
なので、この世界ではモンスターと戦うというより、除霊や鎮魂、悪魔祓いやヒーリングなどができるものが尊ばれる。
その力が強ければ強いほど人々に求められた。
で、だ。
俺の賜ったチート能力。
これがかなり強い除霊能力だった。
今のところ一度それを行えば、その場を収めるどころか街全体を完璧に安全な状態にする事ができている。
なのだけれども……。
「……嫌だって言ったのに……。」
「うっせぇなぁ!つべこべ言わずに働け!!フヨウホウの神殿までの旅費を稼がねぇでどうすんだ!!」
がっくりと肩を落とし、半べその俺にハックが発破をかける。
ガツン!といつものように蹴っ飛ばされ、力なくよろめく。
「お金ならこの前もらったじゃんかぁ~!!」
「馬鹿野郎!!稼げる時に稼いでおかないと!後々痛い目見るんだからな!しっかり働け!!俺より大人のくせに文句ばっか言うな!!」
夜になり、俺は町を襲いにくるという死霊の群れが出てくるらしい森の前に立っていた。
消極的な俺とは裏腹に、こうやっていつもハックが話をつけて俺が除霊を行う形になっていた。
「……あれ、本当に大丈夫なのか?」
「さぁ……。」
離れた柵の向こう。
集まっている町人たちがそんな俺を見てひそひそしている。
無理もない……嫌がってよろよろしている俺なんかに除霊ができるかって思うよな……。
でもできるんだよ……。
やりたくないだけで……。
俺は大きくため息をついた。
それをハックが「しゃんとしろ!」と叱りつける。
と……。
辺りがフッと暗くなる。
この世界に月はない。
そもそも空の概念が違う。
この世界の空は天界なのだ。
昼の明るい時は人々に有益な神々の世界(上天界)が、夜、その中でも深夜に差し掛かると人々に害を成す悪霊の世界(下天界)に変わる。
その天界の光や闇に照らされる事で地上は変化を起こす。
そして今まさに、夜の中でも最も闇が強い時間、悪霊の世界である下天界の入り口が黒い太陽のように頭上にぽっかりと口を開け闇を大地に降り注いでいた。
ゆらり……と森の中の影が濃くなる。
そしてそれは黒い太陽から降り注ぐ闇を浴び、その色を濃くしていく。
「……ひっ。」
人々が恐怖に息をのむ。
まぁ、確かに気持ちのいい光景ではない。
祓えるとはいえ何度見ても薄ら寒い。
「ハック、そろそろ皆の方に。」
「お、おう……。」
「指示、頼むな。」
「……うん。気をつけろよ、イチル……。」
現れた魑魅魍魎の群れに恐怖心から動けなくなっていたハックに声をかける。
俺の声に弾かれるようにハックは我にかえり、人々がいる柵の前まで移動した。
俺はそれを見届け前を向いた。
ここまてきたらもう逃げようもない。
俺は諦め半分に覚悟を決めたのだった。
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