雨に濡れた犬の匂い(SS短文集)

ねぎ(ポン酢)

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ナイショ話

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「ジュース飲みたい!」
「サイダーがいい!」

いつもならそう言われても、おいそれと甘いものは飲ませない。
溶けるような暑さの中でも子どもたちは元気だ。それに振り回された私の方がへばってしまう。

今日は特別。

そう言ってコップに炭酸を注いであげた。キンッと冷えた炭酸は澄み渡り、清々しく喉を駆け抜ける。

「……あれ?どうしたの?」

私が心地よい清涼感に浸っている中、子どもたちは炭酸の注がられたコップに顔を近づけ、じっと見つめている。

「飲まないの?」

不思議に思ってそう聞くと、二人はタタタッと私の下に駆け寄る。そして両脇から内緒話をするように耳元に顔を寄せた。

「あのね、ママ。あわあわ、お話してるの。」
「小さい声で何か話してるよ。」

泡の弾ける音のように密やかに、二人は私の耳元にこっそりと囁く。それがおかしいやらこそばゆいやら、愛おしいやら。
私はぎゅっと二人を抱きしめた。
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