雨に濡れた犬の匂い(SS短文集)

ねぎ(ポン酢)

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夢幻泡影

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「ねぇ、知ってる?」

唐突に彼女が言った。容赦ない事を言う某豆犬CMかと思ったが黙っておいた。

「濡れ手にあわのアワって、シャボンの泡じゃないんだよ?」
「そうなの?」

ちょっと意外だった。てっきり濡れた手だと泡が割れずにたくさんすくえるみたいな事だと思ってた。驚く僕に彼女は得意げに笑う。

「穀物の粟なんだって。」
「鳥の餌の?」
「失礼ね。歴とした五穀の一つよ?栄養価だって高いし。」
「ふ~ん?でも何で濡れ手に粟?」
「粟は粒が小さいでしょ?濡れた手だといっぱい手につく事から、思い掛けずたくさん利益を得るって意味なんだって。」
「へ~。」

感心する僕。彼女はニヤッと笑って抱きついてくる。

「ちなみに花言葉は生命力、調和。それから……まとわりつく愛。」

絡みつく白い腕。彼女は泡沫のようにパチンと弾けた。

「私を忘れないで……。」

残る余韻。僕の人魚姫はいつまでも消えない。
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