雨に濡れた犬の匂い(SS短文集)

ねぎ(ポン酢)

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包丁砥ぎ

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包丁を砥ぐのは簡単な様で難しい。

まず砥石に水を含ませる所から始める。
砥石の種類も考える。

私の指には、砥いでいる時に切った深い傷がいくつかある。

それを私は戒めとしている。

一度切った後、また包丁を砥ぐのは怖い。
でもそれでやめるとできなくなる。

刃物は良い物がやはりいい。

けれど包丁を砥ぐ事で思い知るのだ。
いくら良い物であっても、自分の身の丈に合っていなければ要らぬ物まで切ってしまう。

何だってそうだ。
物が良いに越した事はない。

だがそれを扱う人間は、それに見合った器を持っていなければならない。
その器のない者が身の丈以上の物を持てば大惨事になる。

必ず誰かを傷つける。
自分自身を傷つける。

だから良い物を持ち、取扱いたいなら、常に自分を磨いていなければならない。

この傷たちはその戒めだ。

私は気を抜かず、真剣に包丁を砥ぐ。
それに見合った自分になる為に。
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