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一行の過ち
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私の罪は一行。
たった一行の過ちだ。
だが、たった一行だとしても、それは過ちなのだ。
しかも致命的だった。
私は見落としたのだ。
それがそこまでの影響力を持つ一行になる事を。
何故、私はその一行を使った?
理由は簡単だ。
リアリティーだ。
現実味のある泥臭さを表す為に用いた。
なくても良かった。
でもその年代の持つ生々しい臭いをそこにつけたかった。
だから過ちとなるその一文を加えたのだ。
話の中のえぐ味として。
そしてもう一つの過ちは二人目の男だ。
あれは過ちになった一行よりも不要だった。
ない方が話に鋭さがあったと思う。
えぐ味が口の中に残って、より現実味があっただろう。
ならなぜ用いたか?
話に救いが欲しかった。
なくてもよかったのだ。
所詮は作り話。
救いなんてなくても誰も傷付きはしない。
でも、作り話だからこそ救いが欲しかった。
彼の存在は嘘臭い。
リアリティーに欠ける。
矛盾。
話にリアリティーを持たそうとして過ちの一行を書き、救いとして現実味のない二人目の男を描いた。
今となっては、どちらも致命的なミスだ。
構造は単純だ。
投げられたボールを投げ返す。
ただそれだけ。
もっと複雑な構造を描いた方が良かったのかもしれないが、時間制限がある中、初手でそこまで踏み込むのは危険だと思った。
慣れていればそれも可能だろうけれども、様子のわからない状況でそこまで踏み込む気にはならなかった。
くだらない。
実にくだらない。
単純な構造。
何の面白みもなければ重さもない。
そこに過ちが加わった。
私は気づかなかった。
その一行がそこまでの比重を持つ事に。
2500文字中、36文字。
確かに若干のパンチ力は持たせた。
話の中でスパイスとなるよう、傍若無人で異色感のある行。
でもそれが話を決定付ける一行になるとは思ってなかった。
たかだか一行。
話の中の構成要素の一つに過ぎない。
制限の中で使える文字数は限られている。
もっとソフトにその要素を説明する方法もあったが、あえてその一行に集約した。
私の中で、そのえぐ味をもっと強める考えはあっても、和らげる為にピースを増やして薄める考えはなかった。
だってまさか、構成成分の一つであるその一行で物語が決定されるなんて思ってもいなかったからだ。
それが向かない場なら使わなかっただろう。
だがそんな一行など気に求めないだろう、擦れた社会の味を嫌というほど知っている場所だと思っていた。
判断ミス。
今思えばそうなのだろう。
それは、一行の罪となった。
その一行で全ては決定された。
低俗で下品な、下世話な風俗物として。
私の罪は白日の元に晒された。
構造が単純すぎたのもそれに拍車をかけた。
救済として取り入れた二人目の存在も、それに拍車をかけてしまった。
全てが悪手だった。
言い訳のしようもない。
欲物を含んだ安っぽいラブストーリーの出来上がり。
私は何を描きたかったんだろう?
今となってはそれが何かすら思い出せない。
一行の罪。
たった一行の過ちが、私を決定してしまった。
たった一行の過ちだ。
だが、たった一行だとしても、それは過ちなのだ。
しかも致命的だった。
私は見落としたのだ。
それがそこまでの影響力を持つ一行になる事を。
何故、私はその一行を使った?
理由は簡単だ。
リアリティーだ。
現実味のある泥臭さを表す為に用いた。
なくても良かった。
でもその年代の持つ生々しい臭いをそこにつけたかった。
だから過ちとなるその一文を加えたのだ。
話の中のえぐ味として。
そしてもう一つの過ちは二人目の男だ。
あれは過ちになった一行よりも不要だった。
ない方が話に鋭さがあったと思う。
えぐ味が口の中に残って、より現実味があっただろう。
ならなぜ用いたか?
話に救いが欲しかった。
なくてもよかったのだ。
所詮は作り話。
救いなんてなくても誰も傷付きはしない。
でも、作り話だからこそ救いが欲しかった。
彼の存在は嘘臭い。
リアリティーに欠ける。
矛盾。
話にリアリティーを持たそうとして過ちの一行を書き、救いとして現実味のない二人目の男を描いた。
今となっては、どちらも致命的なミスだ。
構造は単純だ。
投げられたボールを投げ返す。
ただそれだけ。
もっと複雑な構造を描いた方が良かったのかもしれないが、時間制限がある中、初手でそこまで踏み込むのは危険だと思った。
慣れていればそれも可能だろうけれども、様子のわからない状況でそこまで踏み込む気にはならなかった。
くだらない。
実にくだらない。
単純な構造。
何の面白みもなければ重さもない。
そこに過ちが加わった。
私は気づかなかった。
その一行がそこまでの比重を持つ事に。
2500文字中、36文字。
確かに若干のパンチ力は持たせた。
話の中でスパイスとなるよう、傍若無人で異色感のある行。
でもそれが話を決定付ける一行になるとは思ってなかった。
たかだか一行。
話の中の構成要素の一つに過ぎない。
制限の中で使える文字数は限られている。
もっとソフトにその要素を説明する方法もあったが、あえてその一行に集約した。
私の中で、そのえぐ味をもっと強める考えはあっても、和らげる為にピースを増やして薄める考えはなかった。
だってまさか、構成成分の一つであるその一行で物語が決定されるなんて思ってもいなかったからだ。
それが向かない場なら使わなかっただろう。
だがそんな一行など気に求めないだろう、擦れた社会の味を嫌というほど知っている場所だと思っていた。
判断ミス。
今思えばそうなのだろう。
それは、一行の罪となった。
その一行で全ては決定された。
低俗で下品な、下世話な風俗物として。
私の罪は白日の元に晒された。
構造が単純すぎたのもそれに拍車をかけた。
救済として取り入れた二人目の存在も、それに拍車をかけてしまった。
全てが悪手だった。
言い訳のしようもない。
欲物を含んだ安っぽいラブストーリーの出来上がり。
私は何を描きたかったんだろう?
今となってはそれが何かすら思い出せない。
一行の罪。
たった一行の過ちが、私を決定してしまった。
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