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ほんのり恋愛風味

大型公園にて(僕らのチョコレート戦争おまけ)

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今日は卒業式だった。
その為、2年の俺達は手伝いやら何やらで駆り出される為、登校日だった。

「全く……単なる雑用としての労働力なら、1年にやらせろよな?!」

和泉が公園のタイヤをボコボコ蹴飛ばしながら言った。
この、タイヤが半分埋まってる遊具って、懐かしいけど何なんだろうな……。

「でも、私はちゃんと先輩を見送りたいから参加できて助かったかな。」

運動部の飯田は先輩との別れを惜しんで少し泣いていたので、ちょっと目元が腫れている。

午前中で卒業式の手伝いも終わるので、中川の「終わったらお花見したい」と言う提案から、俺達は学校から少し離れた大型公園までやってきた。

「お花見には少し早かったですね。」

桜の木を見て狭山が呟いた。
早咲きの河津桜は散り始め、ソメイヨシノはまださほど咲いてはいない。
だが手入れされた公園は花壇にたくさんの花が植えられ、もう春なんだなぁと思わせた。

「そうだな。ソメイヨシノの開花には今年は温度上昇が足りなかったみたいだな。桜が開花するには、夏の花芽形成→休眠→落葉→低温による休眠打破→気温上昇の条件が全て揃わないと……。」

「小笠原、ウンチクはいらん。もっと感じるままに自然を楽しめよ。見ろ、中川を!!」

はじまった小笠原のウンチクを止めて、中川を指差す。
中川は来て早々、公園内のアスレチックでキャッキャ言ってはしゃいでいる。
その辺の見知らぬ子供たちがつられて寄ってきて、何故か一緒に遊び始めてる。
歳の離れた兄弟がいるせいか、めちゃくちゃ自然体だ。

「……あれは自然を楽しんでんのか??」

「いや……普通にアスレチックを楽しんでるな……。」

「ふふっ。いつも元気で可愛いですよね、中川さん。」

「アイツって将来、あの感じで子供番組の体操のお姉さんとかやりそうだよな。」

「だな。歌のお姉さんは無理だろうけど。」

「ちょっとズレんのよね……歌は……。」

「え?中川さん、上手くないですか?!演歌とか?!」

「演歌はな……。」

「なら、第二候補は介護系とかだな。」

「看護系だとちょっと不安だもんな……。」

俺達に好き勝手に将来を語られているとは露知らず、中川は楽しそうに笑っている。

俺はちらっと他の4人を見た。

将来。
4月には3年になる俺達は、漠然とした形のないこれから先を真剣に考えなければならない。

何となくの進路は何となく皆、決めているみたいだが、その先、俺達はどこに行くのだろう?
10年後、どんな事をしてどんな顔をしているだろう?

誰も口には出さなかったが、卒業生を見送り、次が自分達の番だと俺達はどこかで意識していた。
学生という揺るぎない地位から、漠然と何も縋るもののない未曾有の未来に俺達は近づいている。
そこにまだ見ぬ希望より、底しれぬ不安の方を多く感じている。

「ねぇ~!!何やってんのぉ~?!競争しようぜぇ~!!男子ぃ~!!」

そんな俺達に、中川がゲラゲラ笑って声をかけてきた。
ニカッとした挑戦的な笑みに、バサッと和泉が上着を脱いだ。

「俺に挑戦するとはいい度胸だな?!中川!!」

「毎日小学生と遊んでるウチをナメんな!和泉!!」

「吠え面かくなよ!!」

「受けて立ぁ~つっ!!」

そんなやり取りをする二人を思わず笑う。
小笠原が珍しくフッと笑って立ち上がった。

「女子に負けたら流石にやべぇよな……。」

「……言うじゃない?運動部の女子に勝てる気でいる訳??小笠原??」

それに飯田が乗っかった。
「男子」と指名されてる以上、俺も行かない訳にはいかないと慌てて上着を抜いた。
それをオロオロと狭山が見守っている。

「狭山、ワリィ。荷物とこれ、見ててくんね?!」

「あ、はい!!」

そんな狭山に和泉が上着を渡しながら言った。
流石はモテる男は一味違う。
アスレチックに参加するキャラでも体力でもない狭山に、和泉はさり気なく参加しなくていい理由をつけたのだ。
皆が狭山の側に荷物と上着を置き、お願いしますと声をかける。

「……後、俺の応援、頼むな?」

さらっとそんな事を言って和泉は振り向きもせずアスレチックに向かっていく。
言われた狭山はポンッと赤くなり、思わず和泉の上着をぎゅっと握った。
イ、イケメン……真性イケメンめ!!
これが言えんのに、何で長々告白できないのだろうと本当に不思議だ。
まぁ、かなり天然の狭山も和泉の無自覚イケメン攻撃を至近距離で食らい続けてだいぶ毒されてきてるから、来年の今頃は桜の下で並んで写真を撮っていることだろう。

「奥田ぁ~!!早くしろぉ~!!」

「わかってるって!!」

急かされて俺は慌ててアスレチックに向かう。

春はもう、すぐそこだ。
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