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書捨て小話
サンタクロースの真実
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冬が深々と近づいてくると、街はネオンに彩られていく。
そして強まる寒さに比例するように、聞き慣れた陽気な音楽が街に溢れ始める。
年末に近づき凍てつく空気とは真逆に、温かい光と明るい雰囲気が待ってましたとばかりに溢れ出して来る。
そう、クリスマスだ。
子どもたちの大好きな、いや、大人たちもなんだかんだ言って大好きなクリスマス。
贈るプレゼント、貰うプレゼントの事を考える幸せな時間。
普段とちょっと違う豪華な食事。
そしてケーキを食べる事を世界から容認される日だ。
そんなクリスマスの主役といえば、もちろんこの人。
サンタクロースだ。
赤い服を着た、白ひげの豊かなふっくらしたおじいさん。
一晩で全世界の子どもたちにプレゼントを配るという偉業を成し遂げるスーパースペシャリスト老人だが、裏をかけせばその一晩しか仕事がない。
ならばそれ以外の日は何をしているのだろう??
子どもたちの絵本では、残りの1年間はプレゼントを用意したり、世界中の子どもたちから届く手紙に返事を書いたり、またはバカンスに行ったりする事が書かれている。
しかし、それが本当に彼らの日常なのだろうか?
サンタクロース。
それは子どもたちの願いを叶える心優しき老紳士。
だが、どんなに心優しくとも、その肉体までもが優しいとは思わないで欲しい。
子どもたちの願い。
それはおもちゃやお菓子などばかりではない。
平和であり、健康であり、健やかな日常であったりもするのだ。
その願いを叶えるには、さすがのサンタといえども一晩で片をつける事は難しい。
「……また、この季節がやってきましたね。」
「おう、元気そう……でもないな?目の下にクマができてるぞ?」
「はは、思うような研究の成果が出なくてね……今年中に願いを叶えるつもりだったんだが……なかなかね。」
「久しぶり!……何だよ、辛気臭い顔をして……。奥さんに浮気でもバレたか?浮気専門の知り合い紹介しようか?」
「馬鹿か、オメェは……。俺は常に戦場にいんだ。浮気なんぞしようがねぇ。」
「俺だって毎日、子どもたちのために法定で闘ってるっての!!」
「……まどろっこしいな?悪い奴を一発ぶん殴ってやればいいだろう?」
「おいおい、相変わらず血の気が多いな?!腕力で全てが解決すると思うなよ?子どもの心は繊細だし、社会的に救うには暴力では解決しねぇのさ。」
「そう……力では命を救う事はできない。」
「……だが、力なき事も、子どもたちを救う事はできぬ。」
「ああ。」
「その通りだ……。」
言いしれぬ雰囲気が場を包む。
それぞれがそれぞれの葛藤を抱え、またこの季節を迎えた。
「……とはいえ、子どもたちが我らを待っている。」
「ああ、嘆いてる暇があったら一歩でも現状を前に進める。それが俺達がやらねばならない事だ。」
「立ち止まったらそこで終わりだ。たとえどんなに進みが遅くとも、進み続ければ必ず救える。」
「俺達に後ろを見ている暇はねぇ!!」
「子どもたちの願いを叶える為!!己の全てを捧げよ!!」
「揺るがぬ信念!!全ては子どもたちの為に!!」
そう叫んだ男たちが徐にベルトを取り出す。
それをカチリと腰に装着する。
その瞬間ベルトが輝き、真っ赤なコートが出現し、彼らを包む。
顔つきも変わり、豊かな白ひげに包まれる。
「力なき正義は正義に非ず!戦闘猛者、サンタレッド!!」
「法がこの世の秩序なら!守ってみせよう!!正義の審判者、サンタイエロー!!」
「子どもたちに笑顔と明るい未来を!病魔の滅却師、サンタブルー!!」
光が収まると、そこには見まごうことなきサンタクロースが三人、立っていた。
お互い顔を見合わせ、少し沈黙する。
「……イエローとかブルーとか言っても、全員サンタクロースだから赤いんだけどな。」
「むしろ変身すると動きづらいんだが……。」
「それは心身の鍛えがなっとらんのだ。見よ!我が筋肉を!!」
「うっわ!相変わらずえげつねぇ筋肉だな?!おい!!」
「というか、レッドさん。先日の健康診断、バックレましたよね?」
「そ、それは!戦場は待ってくれぬのだ!!わかるだろう?!ブルー?!」
「わかりますけどね?ご自身の身に問題がないから人々を救う事ができるんです。病だって初期に見つかれば多くが治す事ができます。と、言う訳で。今日の全体会議が終わったら、人間ドックを受けてもらいますよ。」
「いや?!だが!!」
「レッドちゃん~?ブルーが怒ると怖いの知ってるだろ~?おとなしく受けとけよ。俺も去年バックレて散々な目にあったからよ……。」
「……逃げるなら手段は選びませんので、そのおつもりで。」
「!!」
「はは!レッドが青くなってら~。」
そんな感じでわちゃわちゃする三人を、他のサンタクロースたちが遠巻きに見つめる。
「……相変わらず三賢者……仲いいなぁ~。」
「尊い……。」
「やはり我々にはまだまだたどり着けない境地。」
「サンタクロースのトップに君臨するだけあって、追随を許さぬあのオーラ……。私達も精進せねば……。」
そう言って話すサンタクロース達も、皆、変身ベルトによって赤い服に白ひげを蓄えている。
端から見ればどれが誰だかなどわからない。
冬が近づくと街にあふれるクリスマスの気配。
その裏では、日々、サンタクロース達がどこかで子どもたちの願いを叶えるために奮闘している。
そして強まる寒さに比例するように、聞き慣れた陽気な音楽が街に溢れ始める。
年末に近づき凍てつく空気とは真逆に、温かい光と明るい雰囲気が待ってましたとばかりに溢れ出して来る。
そう、クリスマスだ。
子どもたちの大好きな、いや、大人たちもなんだかんだ言って大好きなクリスマス。
贈るプレゼント、貰うプレゼントの事を考える幸せな時間。
普段とちょっと違う豪華な食事。
そしてケーキを食べる事を世界から容認される日だ。
そんなクリスマスの主役といえば、もちろんこの人。
サンタクロースだ。
赤い服を着た、白ひげの豊かなふっくらしたおじいさん。
一晩で全世界の子どもたちにプレゼントを配るという偉業を成し遂げるスーパースペシャリスト老人だが、裏をかけせばその一晩しか仕事がない。
ならばそれ以外の日は何をしているのだろう??
子どもたちの絵本では、残りの1年間はプレゼントを用意したり、世界中の子どもたちから届く手紙に返事を書いたり、またはバカンスに行ったりする事が書かれている。
しかし、それが本当に彼らの日常なのだろうか?
サンタクロース。
それは子どもたちの願いを叶える心優しき老紳士。
だが、どんなに心優しくとも、その肉体までもが優しいとは思わないで欲しい。
子どもたちの願い。
それはおもちゃやお菓子などばかりではない。
平和であり、健康であり、健やかな日常であったりもするのだ。
その願いを叶えるには、さすがのサンタといえども一晩で片をつける事は難しい。
「……また、この季節がやってきましたね。」
「おう、元気そう……でもないな?目の下にクマができてるぞ?」
「はは、思うような研究の成果が出なくてね……今年中に願いを叶えるつもりだったんだが……なかなかね。」
「久しぶり!……何だよ、辛気臭い顔をして……。奥さんに浮気でもバレたか?浮気専門の知り合い紹介しようか?」
「馬鹿か、オメェは……。俺は常に戦場にいんだ。浮気なんぞしようがねぇ。」
「俺だって毎日、子どもたちのために法定で闘ってるっての!!」
「……まどろっこしいな?悪い奴を一発ぶん殴ってやればいいだろう?」
「おいおい、相変わらず血の気が多いな?!腕力で全てが解決すると思うなよ?子どもの心は繊細だし、社会的に救うには暴力では解決しねぇのさ。」
「そう……力では命を救う事はできない。」
「……だが、力なき事も、子どもたちを救う事はできぬ。」
「ああ。」
「その通りだ……。」
言いしれぬ雰囲気が場を包む。
それぞれがそれぞれの葛藤を抱え、またこの季節を迎えた。
「……とはいえ、子どもたちが我らを待っている。」
「ああ、嘆いてる暇があったら一歩でも現状を前に進める。それが俺達がやらねばならない事だ。」
「立ち止まったらそこで終わりだ。たとえどんなに進みが遅くとも、進み続ければ必ず救える。」
「俺達に後ろを見ている暇はねぇ!!」
「子どもたちの願いを叶える為!!己の全てを捧げよ!!」
「揺るがぬ信念!!全ては子どもたちの為に!!」
そう叫んだ男たちが徐にベルトを取り出す。
それをカチリと腰に装着する。
その瞬間ベルトが輝き、真っ赤なコートが出現し、彼らを包む。
顔つきも変わり、豊かな白ひげに包まれる。
「力なき正義は正義に非ず!戦闘猛者、サンタレッド!!」
「法がこの世の秩序なら!守ってみせよう!!正義の審判者、サンタイエロー!!」
「子どもたちに笑顔と明るい未来を!病魔の滅却師、サンタブルー!!」
光が収まると、そこには見まごうことなきサンタクロースが三人、立っていた。
お互い顔を見合わせ、少し沈黙する。
「……イエローとかブルーとか言っても、全員サンタクロースだから赤いんだけどな。」
「むしろ変身すると動きづらいんだが……。」
「それは心身の鍛えがなっとらんのだ。見よ!我が筋肉を!!」
「うっわ!相変わらずえげつねぇ筋肉だな?!おい!!」
「というか、レッドさん。先日の健康診断、バックレましたよね?」
「そ、それは!戦場は待ってくれぬのだ!!わかるだろう?!ブルー?!」
「わかりますけどね?ご自身の身に問題がないから人々を救う事ができるんです。病だって初期に見つかれば多くが治す事ができます。と、言う訳で。今日の全体会議が終わったら、人間ドックを受けてもらいますよ。」
「いや?!だが!!」
「レッドちゃん~?ブルーが怒ると怖いの知ってるだろ~?おとなしく受けとけよ。俺も去年バックレて散々な目にあったからよ……。」
「……逃げるなら手段は選びませんので、そのおつもりで。」
「!!」
「はは!レッドが青くなってら~。」
そんな感じでわちゃわちゃする三人を、他のサンタクロースたちが遠巻きに見つめる。
「……相変わらず三賢者……仲いいなぁ~。」
「尊い……。」
「やはり我々にはまだまだたどり着けない境地。」
「サンタクロースのトップに君臨するだけあって、追随を許さぬあのオーラ……。私達も精進せねば……。」
そう言って話すサンタクロース達も、皆、変身ベルトによって赤い服に白ひげを蓄えている。
端から見ればどれが誰だかなどわからない。
冬が近づくと街にあふれるクリスマスの気配。
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