音のしない部屋〜怪談･不思議系短編集

短編(1話完結)

海の怪山の怪

鳴り響く祭囃子。昔から変わらない盆踊りの曲。

「盆踊りの曲ってずっと同じじゃん？新作とか出ないのかな？」
「新作は知らないけどボン・ジョヴィの曲で踊るって話はあるね。」
「スゲェー、盆踊りグローバル化してんだ？」

そんな事を言う従弟。田舎で久しぶりにあった私達は、体はすっかり大人になったけど中身は小学生の夏休みのままだ。特にこうしてお盆に会うと気持ちが子供に戻ってしまう。

「あ、お化け屋敷。」
「移動式の初めて見た。」

祭りのお化け屋敷。綺麗な着物のお姉さんがにっこり笑う。代金を払うと何か渡された。

「怖かった方に入れてね？」

見ると投票箱が置かれ「海の怪」「山の怪」と書かれている。

「海の幸山の幸みたい。」
「豪勢だね。」
「ふふっ豪華よ？プライドがあるから海も山も、とっておきの恐怖を持ってきてるの。…期待してて？」

微笑むお姉さんの首が伸び、暗幕が音もなく私達を包んだ。