音のしない部屋〜怪談･不思議系短編集

SS版奇異見聞録【うわさ】(ｼｮｰﾄｼｮｰﾄﾎﾗｰ集)

餅は餅屋

「は？何？もしかして生霊？死んだばっかで自覚のない奴？どっちにしろこんな事はもうやめろ。生霊なら今は良くても死んだ時にこの変質した念に縛られ、あの世に行けないぞ？死んでんなら死んだ自覚を持て。このままじゃいずれ自我を失って彷徨い苦しむだけの念になっちまうぞ？……は？売上？知るかよ？死んでんなら口座は凍結か解約されてるだろ？……あ！おい！」

何かを掴んだ知人がおかしな事を言っている。多分、私を脅す為のパフォーマンスだ。その演技に苦笑するしかない。

「野郎、金の話になったらいきなり正気に返りやがった。」

写ルンですを片手に彼は言った。
この一連の小芝居は何だったのか？私には理解できない。

「餅は餅屋に聞け、だよ。ちょいと突いたら面白い噂が聞けた。お前に覚悟があるなら教えてやる。……どうする？」

彼はニヤッと笑う。
だからコイツは苦手なんだと、私は引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。