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学園・青春系

無機質に恋に落ちる

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蘇部ソルベは淡白な奴だ。
受け答えも行動も何もかも機械的で無感情。
でも生きる目的はあるらしい。

モノクロ調の持ち物が多いし、何か柄をつけるとしても幾何学模様ばかりだ。
そしてそういう物が好きなのかと思っていたら、そうではない。
ある時そう聞いたら、何て答えたと思う?

「面倒くさくない」

そう言ったのだ。
モノクロ調なら白黒のコントラストだけでうるさくない。
色があると濃淡以外の情報も入るので面倒くさいのだそうだ。

全く理解できない。

幾何学模様は全てに規則性があるので予測ができるが、花柄などはそれがないので落ち着かないと言う。

全く意味がわからない。



蘇部は変な奴だ。
人と関わりたがらないのに、人の集まる所にいる。
声を掛けても殆ど答えないのに、人を見ているのが好きだ。

「蘇部は面倒事が嫌いなんだよな?」

ある時、そう聞いた。
そうしたら意外な事を言われた。

「面倒事が嫌いな訳じゃない。ただ、たくさんはいらないってだけだ。」

「たくさんはいらない??」

「そ、自分の中で処理しきれる以上の事は、生きるのに困るだけた。だからたくさんはいらない。」

なるほど、そんな考え方もあるんだなぁと妙に腑に落ちた。
生きてると面倒な事ばかりだけど、それはその面倒事を自分で処理しきれないだけ抱え込んでいるからなのかもなと思った。

だから抱えられるだけの面倒事を選んで持っている蘇部は、ある意味俺なんかより、生きるのが上手いのかもしれない。



蘇部はとても綺麗だ。
あれやこれやと持っていないから、存在に無駄がない。
必要なものを必要なだけしか持っていないのだ。

それは俺やたくさんの人達が忘れてしまった、自然な生き方なのかもしれない。

「蘇部みたいに生きれたら良いのにな。」

ある時、俺はそう言った。
そうしたら奴は目を丸くしてこう答えた。

「それではつまらない。」

面倒だとか色々言っていた奴の口から、つまらないと言う言葉が飛び出した。
物凄く意外だった。

「え?お前、楽しいとか思って生きてたの?」

「失礼な奴だな?」

「え?だって何事も合理的に、必要最低限で生きてるのかと思ってた。」

「合理的にしているのは、抱えられる面倒事を増やすためだろう?必要のない所はできる限り最小限にする事が何かおかしいか?」

「………いや??おかしくない……のかもしれない。」

「変な奴だな、お前??」

変な奴代表みたいな蘇部に変な奴と言われた。
俺は蘇部より変な奴なのだろうか?

それは嫌だなぁと思ってしまった。



蘇部は気づいたら側にいた。
いつも俺が見かけて声をかけて、素っ気ない返事を貰うだけだった。
それに声をかけていたのは別に俺だけじゃない。

でも、気づいたら蘇部は俺の側にいた。

「……何で??」

そう聞いた。
そうしたら蘇部は、いつも通り素っ気なく答えた。

「言っただろう?面倒事が嫌いな訳じゃない。」

「俺、面倒??」

「うん。」

「えええぇぇぇ~?!地味にショック!!」

「面倒事は嫌いじゃないが、たくさんはいらない。だから選んでるんだ。」

その言葉に少しドキッとした。

蘇部は面倒事が嫌いな訳じゃない。
でもたくさんはいらない。
自分の中で処理できる量しかいらない。
抱えられる面倒事を増やせるように、他は合理化して素っ気なくしている。

「………俺って面倒??」

「ああ、面倒だ。でもそこが面白い。」



蘇部は淡白だ。
でもそれは面倒事が嫌いだからじゃない。

蘇部は機械的で合理的だ。
でもそれは抱えられる面倒事を増やすためだ。

蘇部は今は俺の側にいる。
でもそれは、俺という面倒を楽しむためだ。




「俺といて楽しい?蘇部?」

「いや、面倒だ。でもそれが面白い。」




俺は今日も、蘇部の隣にいる。
でももう、蘇部は人の集まる所には行かなくなった。

面倒は俺一人で十分なのだそうだ。
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