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第二話 知り合いの暫定サイコキラー

そして追い出される

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 事件現場から徒歩数分のファミレス。
 そこそこ混み合う店内で、宮間と黒羽と七篠は一角のテーブル席にいた。
 宮間と七篠が隣に座り、その向かい側に黒羽がいる形である。

 大きく伸びをした宮間は、メニュー表をめくる七篠に告げる。

「まこっちゃん、好きなの頼んでいいよ。どうせ花木さんの奢りだし」

「おおー、ありがとうございます! これは迷ってしまいますねェ」

 七篠は目を輝かせて悩み始めた。
 上機嫌なのは言うまでもない。
 笑顔でどれを頼もうか迷っている。

 横から覗き見る宮間は既に決まったらしく、スマートフォンを弄りだした。

 そんな二人の傍ら、黒羽は小声で嘆く。

「どうしてこんなことに……」

 宮間は気楽な調子で笑った。

「いいじゃんいいじゃん。晴れて堂々と仕事をサボれるんだからさ」

「よくありません。私は宮間さんと違ってサボりたいわけではないので」

 黒羽は現場での顛末を思い出す。

 七篠の同行を知った花木は、ひとまず三人を現場から追い出した。
 曰く、事態を混乱させないためらしい。
 当然のことだろう。

 大量殺人者が事件現場にいたら、何をしでかすか分からない。
 そもそも七篠が此度の事件の犯人の可能性だってあるのだ。
 隙を突かれて証拠隠滅を図られたら目も当てられない。

 そういった事情もあり、何らかの策を打てるようになるまでは黒羽が七篠の監視を行うこととなった。
 リスクもあるが、現状においてはこれしか有効な手がなかったのである。

 ちなみに宮間は命令されていない。
 端からまともな働きを期待されていないのだ。
 この辺りは黒羽も心得ているので特に何も言及しなかった。

「…………」

 黒羽はさりげなく七篠を観察する。
 七篠は何を注文するか宮間に相談中だった。

「このメロンソーダパフェというのと、ハンバーグ&ステーキセットが食べたいです。でも、他にも気になる料理があって難しいです」

「じゃあ全部頼んじゃえば? 三人もいたら食べれるでしょ。俺も結構空腹だし」

「やったです!」

 現在進行形で平和的なやり取りが繰り広げられている。
 こうしていると、とても殺人鬼には見えない。
 しかし黒羽の眼には、しっかりと七篠の殺害人数が視えていた。
 紛れもなく異常者である。

 観察を終えた黒羽は宮間に尋ねる。

「今日はこれからどうしますか」

「うーん、せっかく休みを貰ったんだから帰って寝たいけど、たぶん許してくれないよね?」

「絶対に許しません」

「だよね」

 すると、七篠が立ち上がって挙手をした。

「はいはい! さっきの事件の捜査がしたいですー」

「えっ……マジ?」

 宮間は露骨に嫌そうな顔をする。

 黒羽は少し怪しんだ。
 どうしてこの殺人鬼は、此度の事件に積極的に関わろうとするのか。
 その動機を知っておきたい。

 とは言え、推測するための材料も少ないのでそれは後回しだ。
 流れとしては都合がいいので黒羽も話に乗る。

「私も賛成です。花木警部補からも、捜査するなとは言われていませんから。刑事である以上、事件解決に尽力すべきです。宮間さんは、七篠さんの意欲を見習った方がいいですね」

「君らはもっと休むことを覚えた方がいいと思うけどね……」

 説得された宮間は、億劫そうに手帳を開いた。
 ページは写真や文章で埋め尽くされている。
 彼は眠たげな顔で頬杖を突く。

「幸か不幸か追い出される前に情報も貰えたし、ここで事件概要のチェックでもしましょうかね」

 無言で頷く黒羽と七篠。
 どちらもやる気に満ち溢れている。

 見ているだけ気疲れした宮間は、自宅の布団が恋しくなった。
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