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第15話 愛の自信を知ってみた
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娼館を出ると、すぐさま客引きの男が駆け寄ってきた。
まさかずっと待っていたのだろうか。
彼はすっかり気弱な様子で頭を下げてくる。
「すまん、兄貴。俺のせいで迷惑をかけちまった」
「気にするな。娼館通いは事実だったんだ」
「でも余計なことを言ったのは事実だろ。謝りたかったんだ」
客引きはまったく引こうとしない。
よほど反省しているのだろう。
根は真面目なので、自分の軽口が問題を起こしたことを気にしているようだ。
どう落ち着かせようか考えていると、客引きは懐から指輪を取り出す。
彼はそれを俺に押し付けてきた。
「こいつは防壁を張る魔道具だ。どっかの商人から賭博で巻き上げたんだが、俺には使い道がない。兄貴なら上手く活用できるんじゃないかな」
「さすがに貰えない。絶対に高いだろこれ」
「気にしないでくれ。日頃の感謝も込めてるってことで……」
断ろうとする俺に対し、客引きは一向に意見を譲らない。
そこにビビが加勢してきた。
彼女は俺を見上げて言う。
「貰えばいいよ」
「そうそう、ビビの姐さんも言ってることだし。申し訳ないと思うなら、また飲みに誘ってくれよ。それで奢ってくれればいいさ」
「……分かった。ありがとう、大切に使わせてもらう」
「へへ、兄貴の力になれて光栄だぜ」
客引きは誇らしそうに言って立ち去った。
俺は受け取った指輪を懐に仕舞う。
魔道具が冒険に役立つのは事実なので、しっかり使わせてもらおうと思う。
ここは素直に感謝するのがいいだろう。
俺とビビは歩き出す。
夜明けの街はまだ人が少ない。
涼しい空気が心地よかった。
空を仰いだビビは俺に笑いかける。
「また一緒に来ようね」
「娼館にか?」
「うん」
「また他の女に見せつける気か」
「悪くなかった」
ビビがおかしな性癖に目覚めた気がする。
そのことに触れず、俺は別のことを提案した。
「どうせなら三人で楽しんでもいいんじゃないか」
「だめ。ご主人を独り占めしたい……でも、こっそりなら浮気もいいよ」
「なぜだ」
「ご主人を束縛したくない。あと、他の人に取られない自信がある。きっと私のところに戻ってきてくれる」
ビビは自信満々に言う。
珍しく流暢に喋ったと思ったら、かなり強気な発言だった。
まあ、あながち間違っていない。
「気遣ってくれて助かる」
「わがまま言ってごめんね」
「これくらいはどうってことない。何かあれば遠慮なく言ってくれ」
「うん」
手を繋いだ俺達は、ゆっくりと宿屋への帰路を辿るのだった。
まさかずっと待っていたのだろうか。
彼はすっかり気弱な様子で頭を下げてくる。
「すまん、兄貴。俺のせいで迷惑をかけちまった」
「気にするな。娼館通いは事実だったんだ」
「でも余計なことを言ったのは事実だろ。謝りたかったんだ」
客引きはまったく引こうとしない。
よほど反省しているのだろう。
根は真面目なので、自分の軽口が問題を起こしたことを気にしているようだ。
どう落ち着かせようか考えていると、客引きは懐から指輪を取り出す。
彼はそれを俺に押し付けてきた。
「こいつは防壁を張る魔道具だ。どっかの商人から賭博で巻き上げたんだが、俺には使い道がない。兄貴なら上手く活用できるんじゃないかな」
「さすがに貰えない。絶対に高いだろこれ」
「気にしないでくれ。日頃の感謝も込めてるってことで……」
断ろうとする俺に対し、客引きは一向に意見を譲らない。
そこにビビが加勢してきた。
彼女は俺を見上げて言う。
「貰えばいいよ」
「そうそう、ビビの姐さんも言ってることだし。申し訳ないと思うなら、また飲みに誘ってくれよ。それで奢ってくれればいいさ」
「……分かった。ありがとう、大切に使わせてもらう」
「へへ、兄貴の力になれて光栄だぜ」
客引きは誇らしそうに言って立ち去った。
俺は受け取った指輪を懐に仕舞う。
魔道具が冒険に役立つのは事実なので、しっかり使わせてもらおうと思う。
ここは素直に感謝するのがいいだろう。
俺とビビは歩き出す。
夜明けの街はまだ人が少ない。
涼しい空気が心地よかった。
空を仰いだビビは俺に笑いかける。
「また一緒に来ようね」
「娼館にか?」
「うん」
「また他の女に見せつける気か」
「悪くなかった」
ビビがおかしな性癖に目覚めた気がする。
そのことに触れず、俺は別のことを提案した。
「どうせなら三人で楽しんでもいいんじゃないか」
「だめ。ご主人を独り占めしたい……でも、こっそりなら浮気もいいよ」
「なぜだ」
「ご主人を束縛したくない。あと、他の人に取られない自信がある。きっと私のところに戻ってきてくれる」
ビビは自信満々に言う。
珍しく流暢に喋ったと思ったら、かなり強気な発言だった。
まあ、あながち間違っていない。
「気遣ってくれて助かる」
「わがまま言ってごめんね」
「これくらいはどうってことない。何かあれば遠慮なく言ってくれ」
「うん」
手を繋いだ俺達は、ゆっくりと宿屋への帰路を辿るのだった。
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