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第102話 しぶとさ
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しばらく横になって休んでいるうちに、少し離れた場所から何かが壊れる音がした。
新手のモンスターが現れたのか。
さすがに余力はないものの、動かなければ殺される。
それだけは絶対に嫌だ。
再び上体だけを起こして、戦う意識を持ちながら確認する。
崩落によって生じた瓦礫の山が爆発した。
そこから勢いよく飛び出してきたのはストレングスだ。
顔面の皮が剥げて片目が潰れているが、とても元気である。
ストレングスはヒュージセンチピードの死骸を発見すると、嬉々として駆け寄って喰らい付いた。
邪魔な外殻を剥がしながら、肉と骨を引き千切って豪快に咀嚼していった。
味は美味いのか。
そもそも安全性などは大丈夫なのか。
色々と気になるが、あれも回復行為の一種なのだろう。
遅れて天井の亀裂から粘液がはみ出てくる。
それが徐々に膨らんで人型になった。
回転しながら着地したのは半裸の道化王子だ。
彼はほとんど無傷だった。
潰された時、スライム状態を維持して回復を優先したのだろう。
そして時間経過で完治できたらしい。
やはり恐るべき特性である。
物理攻撃に特化したヒュージセンチピードにとっては天敵に等しい。
さらに、ストレングスに喰われる死骸の胴体部が破裂した。
そこから這い出てきたのは、背中から大量の蔦を生やした紙袋姫だ。
トレードマークの紙袋が破けて口元が露わになっている。
形の良い唇はうっすらと笑みを浮かべていた。
ただしその赤みは血によるものだが。
三人の殺人鬼は、生きていた。
てっきりヒュージセンチピードに殺されてしまったのかと思ったが、彼らはそこまで弱くなかったのだ。
むしろ狂った世界で最も強く、悪質な分類になる存在である。
たとえ相手が災厄クラスのモンスターでも、あっけなく負けるような人間ではないのだ。
最初にこちらに気付いたのは紙袋姫だ。
電光石火の速度で跳びかかってきた彼女に蔦で持ち上げられて、分泌される蜜で保護された。
身体の傷が一気に塞がっていくので、回復効果があるのだろう。
その間に腹を膨らませたストレングスと、彼女に愛を囁く道化王子が追従してくる。
程度の度合いこそあれ、三人とも心配はしてくれた。
ファミレスでの共同生活で、多少なりとも味方として認識されたのかもしれない。
とりあえず、疲れた。
彼らの視線を受けながら、全員生存の事実を噛み締めて眠った。
新手のモンスターが現れたのか。
さすがに余力はないものの、動かなければ殺される。
それだけは絶対に嫌だ。
再び上体だけを起こして、戦う意識を持ちながら確認する。
崩落によって生じた瓦礫の山が爆発した。
そこから勢いよく飛び出してきたのはストレングスだ。
顔面の皮が剥げて片目が潰れているが、とても元気である。
ストレングスはヒュージセンチピードの死骸を発見すると、嬉々として駆け寄って喰らい付いた。
邪魔な外殻を剥がしながら、肉と骨を引き千切って豪快に咀嚼していった。
味は美味いのか。
そもそも安全性などは大丈夫なのか。
色々と気になるが、あれも回復行為の一種なのだろう。
遅れて天井の亀裂から粘液がはみ出てくる。
それが徐々に膨らんで人型になった。
回転しながら着地したのは半裸の道化王子だ。
彼はほとんど無傷だった。
潰された時、スライム状態を維持して回復を優先したのだろう。
そして時間経過で完治できたらしい。
やはり恐るべき特性である。
物理攻撃に特化したヒュージセンチピードにとっては天敵に等しい。
さらに、ストレングスに喰われる死骸の胴体部が破裂した。
そこから這い出てきたのは、背中から大量の蔦を生やした紙袋姫だ。
トレードマークの紙袋が破けて口元が露わになっている。
形の良い唇はうっすらと笑みを浮かべていた。
ただしその赤みは血によるものだが。
三人の殺人鬼は、生きていた。
てっきりヒュージセンチピードに殺されてしまったのかと思ったが、彼らはそこまで弱くなかったのだ。
むしろ狂った世界で最も強く、悪質な分類になる存在である。
たとえ相手が災厄クラスのモンスターでも、あっけなく負けるような人間ではないのだ。
最初にこちらに気付いたのは紙袋姫だ。
電光石火の速度で跳びかかってきた彼女に蔦で持ち上げられて、分泌される蜜で保護された。
身体の傷が一気に塞がっていくので、回復効果があるのだろう。
その間に腹を膨らませたストレングスと、彼女に愛を囁く道化王子が追従してくる。
程度の度合いこそあれ、三人とも心配はしてくれた。
ファミレスでの共同生活で、多少なりとも味方として認識されたのかもしれない。
とりあえず、疲れた。
彼らの視線を受けながら、全員生存の事実を噛み締めて眠った。
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