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第38話 商店街

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 自転車でスムーズに移動する。
 今日は良い天気だ。
 信号機が動いているものの、車は通らない。
 だから特に気にすることなく走行できる。

 モンスターとの遭遇を警戒したが、あまり出会わない。
 たまにゴブリンやオークを見かけるものの、こちらに気付くと露骨に警戒される。
 そのまま動かなかったり、逃げ出す個体がほとんどだった。

 たまに襲いかかってくるモンスターも、身体能力でこちらが優っている以上は押し負けない。
 自転車から降りて待ち構えて、相手に組み付いて刃物で滅多刺しにするだけだ。
 多少の傷はすぐに再生するので無視できる。

 判断の迷いが消えたのか、モンスターを一方的に攻撃して殺せることが多くなってきた。
 戦闘のコツが分かってきたのも大きい。
 殺し合いは心理戦だ。
 相手に恐れを抱かせた時点で有利な流れとなる。

 その点、変容を重ねているのは正解だった。
 どうやら気配が変わり、自然と格下のモンスターを威圧するようになったらしい。
 怯えた相手を殺すのは簡単だ。
 鈍った判断力を利用して仕掛けるだけである。

 多少のミスはいくらでも挽回できるため、こちらにプレッシャーは一切ない。
 モンスターが複数いても問題なかった。
 見せしめの一体を凄惨に殺すと、残る者達が動揺する。
 やはり向こうのペースを崩すように攻撃すると、あっという間に全滅できてしまう。

 そうして連戦連勝を重ねるうちに、商店街に到着した。
 押していた自転車を端に停めて、包丁とサバイバルナイフを手に佇む。
 腰の拳銃もいつでも撃てるように意識しておく。

 アーチ型の屋根に覆われた商店街は普段から寂れ気味だったが、現在も静寂に包まれている。
 そこかしこから何らかの足音や息遣いが聞こえてくる。
 どこの店も血肉で汚れていた。
 激しく損壊した死体も転がっている。
 随分とグロテスクな状態だった。

 クリーニング店の前で崩れた無数の自転車は、バリケード代わりだったのかもしれない。
 人間の抵抗とモンスターの蹂躙が強烈な密度で漂っていた。
 むせ返るような腐臭が鼻腔を刺激するも、吐き気を催すことはない。
 その段階はもう越えていた。

 意識を張りながら商店街を進んでいく。
 感じるのはモンスターの気配だ。
 怯えているのは少数で、大部分がこちらを獲物と認識している。
 肌のひりつきと共に、言いようのない高揚感を覚えた。
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