クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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永遠の誓い(20)

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「何ですか? 私、何か変なこと言いました?」

 不思議に思って首を傾げる。すると、シロ先輩は、ハッとした様子で我に返ってから、どこかバツが悪そうな顔で言った。

「いや、何でもねぇ。ただ、お前の言葉が懐かしく聞こえただけだ」

 シロ先輩は、それだけ言うと、前を向いて歩き出す。私は、手を引かれながらシロ先輩の表情を窺う。その横顔には、微かに笑みが浮かんでいた。

 シロ先輩が何を思い出したのかは分からない。けれど、こうしてシロ先輩が笑っているのならば、きっと悪い思い出ではないはずだ。

 私は、繋いでいる手に力を込めた。シロ先輩も、応えるように握り返してくれる。シロ先輩と一緒にいると、心が温かくなって、自然と笑みが溢れる。

 仕事でのコンビは解消してしまうけれど、これからは人生のパートナーとして、私は、この人の隣でこんな風に些細なことで喜びを感じたり、不安になったりする日々が続くのだろう。それでも、私たちはお互いを支えにして歩いていく。そう思うと、この先の日々に心が躍った。

 私たちは、月明かりの下をゆっくりと進む。先の未来へと向かって。ふと振り返ると、砂浜には、私たち二人の影が寄り添って伸びていた。

~Fin.~
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