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永遠の誓い(8)
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三嶋さんは、そう言うと深々と頭を下げた。そして、まだくすくすと笑い続けている。
私たちは三者三様の表情をしていたと思う。シロ先輩はバツの悪そうな表情をして、私の方はどんな顔を作っていたら良いかわからなくて、とりあえずぎこちなく笑っておいた。白谷吟だけは、何故か満足そうな笑顔を浮かべている。
三嶋さんは、ようやく笑うのを止めると、パンッと手を叩いた。
「では、新郎新婦のお二人は、控室でお着替えを」
三嶋さんがそう言って、控室の方向へ歩き出したので、私もそれに倣う。すると、シロ先輩が私にだけ聞こえるくらいの小さな声でボソッと言った。
「……後で話がある」
シロ先輩の言葉に、私は小さくうなずく。
「はい」
私は、それだけ答えるのがやっとだった。
「それじゃあ、俺は撤収作業の確認をして来る」
そう言って、控室とは反対の方向へ行こうとしたシロ先輩の腕を、私は咄嵯に掴んで引き止めた。
「あのっ……」
私は何か言わなければと思って、必死に言葉を探す。しかし、上手な言葉が見つからない。そんな私をシロ先輩は不思議そうな顔で見下ろしている。
「なんだ?」
シロ先輩の声は、ぶっきらぼうだったが、そこに拒絶の色はない。私は、意を決して言った。
「今日、一緒に帰りますよね?」
私の必死さが伝わったのか、シロ先輩は、フッと笑みをこぼすと、私の頭をポンと叩いて言った。
「当たり前だろ」
それから、私の耳元に顔を寄せて囁く。
「大事な話がある」
シロ先輩は、もう一度念を押すように私の頭に手を置くと、そのまま踵を返して行ってしまった。シロ先輩の後ろ姿が見えなくなるまで、私はその場に立ち尽くしていた。
シロ先輩の触れたところが、やけに熱い気がする。私は、無意識に自分の手で髪を撫でる。シロ先輩の話って、一体なんだろう。シロ先輩の言葉の中に、いつもとは違う何かを感じて、私の心臓は不安と緊張でドキドキと音を立てていた。
控室へ戻ると萌乃が待っていた。
「お疲れさま」
私が声をかけると、萌乃はパッと顔を輝かせた。
「明日花さん、お疲れ様でした! もう、本当の結婚式みたいで、私も早く結婚したくなりました!」
「ありがとう。萌ちゃんがそう思うってことは、大成功だね」
そう言いながら笑顔を見せたつもりだったが、萌乃は私の顔を心配そうに覗き込んできた。
「大丈夫ですか? だいぶお疲れのようですね?」
萌乃が、気遣うように声をかけてくれる。
「ううん、大丈夫よ」
私は首を横に振った。
私たちは三者三様の表情をしていたと思う。シロ先輩はバツの悪そうな表情をして、私の方はどんな顔を作っていたら良いかわからなくて、とりあえずぎこちなく笑っておいた。白谷吟だけは、何故か満足そうな笑顔を浮かべている。
三嶋さんは、ようやく笑うのを止めると、パンッと手を叩いた。
「では、新郎新婦のお二人は、控室でお着替えを」
三嶋さんがそう言って、控室の方向へ歩き出したので、私もそれに倣う。すると、シロ先輩が私にだけ聞こえるくらいの小さな声でボソッと言った。
「……後で話がある」
シロ先輩の言葉に、私は小さくうなずく。
「はい」
私は、それだけ答えるのがやっとだった。
「それじゃあ、俺は撤収作業の確認をして来る」
そう言って、控室とは反対の方向へ行こうとしたシロ先輩の腕を、私は咄嵯に掴んで引き止めた。
「あのっ……」
私は何か言わなければと思って、必死に言葉を探す。しかし、上手な言葉が見つからない。そんな私をシロ先輩は不思議そうな顔で見下ろしている。
「なんだ?」
シロ先輩の声は、ぶっきらぼうだったが、そこに拒絶の色はない。私は、意を決して言った。
「今日、一緒に帰りますよね?」
私の必死さが伝わったのか、シロ先輩は、フッと笑みをこぼすと、私の頭をポンと叩いて言った。
「当たり前だろ」
それから、私の耳元に顔を寄せて囁く。
「大事な話がある」
シロ先輩は、もう一度念を押すように私の頭に手を置くと、そのまま踵を返して行ってしまった。シロ先輩の後ろ姿が見えなくなるまで、私はその場に立ち尽くしていた。
シロ先輩の触れたところが、やけに熱い気がする。私は、無意識に自分の手で髪を撫でる。シロ先輩の話って、一体なんだろう。シロ先輩の言葉の中に、いつもとは違う何かを感じて、私の心臓は不安と緊張でドキドキと音を立てていた。
控室へ戻ると萌乃が待っていた。
「お疲れさま」
私が声をかけると、萌乃はパッと顔を輝かせた。
「明日花さん、お疲れ様でした! もう、本当の結婚式みたいで、私も早く結婚したくなりました!」
「ありがとう。萌ちゃんがそう思うってことは、大成功だね」
そう言いながら笑顔を見せたつもりだったが、萌乃は私の顔を心配そうに覗き込んできた。
「大丈夫ですか? だいぶお疲れのようですね?」
萌乃が、気遣うように声をかけてくれる。
「ううん、大丈夫よ」
私は首を横に振った。
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